時をこえて愛される、ジュブナイルSF小説『時をかける少女』
中学3年生の芳山和子は、ある日の放課後、理科実験室で試験管から漂うラベンダーの香りをかいで突然意識を失ってしまいます。やがて目を覚ました彼女は、その出来事以来、時間を遡ったり、瞬間移動ができるようになるという不思議な体験を繰り返すことになり……。
1965年の発表以来、時代をこえて読み継がれ、何度も映像化されてきた、日本を代表するジュブナイルSFです。
- 著者
- 筒井 康隆
- 出版日
- 2006-05-25
いわゆる時間跳躍もののSFですが、主人公が世紀をまたいで未来と過去を行き来するような派手な展開はありません。
主人公の和子は、突然我が身に備わった不思議な能力にとまどい、クラスメイトの深町一夫、浅倉吾朗らと、謎の解明に向けて奔走します。
そして明らかにされる驚きの真相とともに、いつしかストーリーは淡い恋の物語へ……。
冒頭、ラベンダーの香りをかいだ和子は思います。
「このにおいをわたしは知っている。甘く、なつかしいかおり……。いつか、どこかで、わたしはこのにおいを……。」(『時をかける少女』より引用)
この小説がこれほど愛され続けている理由は、作品自体が、思春期の「甘くなつかしい」感情を思い出す、まるでラベンダーの香りのような魅力を湛えているからなのかもしれません。
少年2人の友情と成長を描いたディストピアSF『NO.6』
未来都市No.6に住む主人公・紫苑は、2歳のときに最高ランクの知能と認定され、将来を約束されたエリートとして何不自由なく暮らしていました。しかし12歳の誕生日を迎えた台風の夜、全身に傷を負った少年ネズミとの偶然の出会いにより、彼の運命は一転してしまいます。
- 著者
- あさの あつこ
- 出版日
- 2006-10-14
「No.6に、絶望は存在しない。市民は、誰でも安全で快適な生活をおくっている。飢えることも嘆くことも闘いもない。死にいたる前の苦痛さえないのだ。」(『No.6 #1』より引用)
このように自らを理想都市と呼ぶNo.6ですが、実情は、住民たちをIDカードや遠隔システムで徹底的に「管理」し、権力に反感を持つ者、刃向かう者は外部に暴力的に「排除」することで成り立っていました。
そしてエリートとして恩恵を受けながらも、心のどこかで違和感を感じていた紫苑は、スラム地区・西ブロックで育ち、No.6のことを「穴だらけのニセモノの街」と嘲る少年ネズミに惹かれていきます。
もちろん、そんな2人をNo.6の手先たちが放っておくはずはありません。
感情的ですぐに我を忘れてしまう紫苑と、いつでも冷静沈着でクールなネズミ。育ちも性格も対称的な少年2人は、運命の出会いから再会、共闘を経て、どのように影響をあたえ合い、変化していくでしょうか。
次第に明らかになるNo.6の正体とともに、彼らの成長にも注目してください。
超ダイナミックな想像世界が堪能できる海底冒険SF『海底二万里』
1868年、航海中の船が謎の怪物によって巨大な穴を穿たれる事件が頻発し、アメリカとヨーロッパ中を騒がせました。その怪物の正体をつきとめるため、パリ博物館のアロナックス教授はアメリカの軍艦エーブラハム・リンカーン号に乗りこみ調査に向かいます。しかし彼を待ち受けていたのは、まったく予想外の出来事でした。
乗っていた軍艦が得体の知れぬ巨大なものに襲われ、アロナックス教授は海へと投げ出されてしまいます。その時彼は、ネモ船長という男性に助けられました。実は、世間で騒がれていたものの正体は怪物ではなく、ネモ船長が指揮をする巨大潜水艦ノーティラス号だったのです。それは、陸の文明とは縁を切っているにもかかわらず、当時の先端科学の粋を集めて作られた潜水艦でした。
- 著者
- ジュール・ベルヌ
- 出版日
- 2005-08-20
SF小説の祖、ジュール・ヴェルヌの代表作というだけあって、何もかもが読者の想像を越えるスケールの大きな作品です。
作中では、未知の深海生物、船員を埋葬するサンゴの十字架が立てられた共同墓地、伝説の古代文明アトランティス大陸の遺跡など、神秘的な海底世界が描かれています。
それらが作者の精緻な筆致で描かれていて、まるで自分も登場人物の一人になって海を探検しているような驚きとスリルが味わえます。
しかし何といっても一番ダイナミックで神秘的な存在は、ラテン語で「だれでもない」を意味し、様々な謎を残したまま読者の前から去っていくネモ船長かもしれません。