「敵は海賊」シリーズの記念すべき1作目
伝説の海賊・匋冥(ようめい)との戦から生きて還った唯一の男であり、海賊課刑事のラテル。何でも食べ、一番の好物は海賊という猫型異星人のアプロ。そして唯一冷静な判断ができるコンピューターフリゲート艦のラジェンドラ。彼らは行方不明の王女を探しに行くことになり、そこから彼らの奮闘劇が繰り広げられていきます。
- 著者
- 神林 長平
- 出版日
女王に最も信頼されている女官長シャルファインが託されたのは、行方不明となってしまった王女探しです。はじめに頼ったのは伝説の海賊・匋冥。はじめは依頼を断った彼でしたが、シャルファインが海賊となって同じ艦に乗ることで、依頼を引き受けることにします。
匋冥を捕まえに来ているのにケーキにかぶりついているアプロと、それを見つけたラテルは相変わらず漫才のような喧嘩をするのです。そうこうしている間に、匋冥をとり逃してしまう彼ら。すると、天使から突然女の子を預けられてしまいます。
ラテルとアプロが預けられた子供が王女なのか、はたまた海賊になってしまったシャルファインはどうなるのか。一見シリアスな場面ではありますが、きっちりラテルとアプロが笑いを提供してくれます。SFドタバタコメディ、ぜひご堪能ください。
人工知能に支配される世界
文章の執筆を支援する人工知能が搭載された「ワーカム」。いわゆる辞書に書かれているような意味でしか言葉を認識してくれないため、人間の持つ感覚的なニュアンスはなかなか伝わりません。そのため、書きたい文章が書けず、表現したいことを書こうとすると拒否されます。
人工知能との知恵比べと思いながら読んでいくと、だんだん物語が恐怖に感じられる、そんな作品です。
- 著者
- 神林長平
- 出版日
- 2011-06-10
「私を生んだのは姉だった。姉は私をかわいがってくれた。姉にとって私は大切な息子であり、ただ一人の弟だった」
そんな一文を受け付けてくれないワーカム。なぜなら、「姉」は「弟」を生まないからです。生むのは「母」であり、「姉」が「弟」を生むというのは意味が通らないからです。ワーカムは、正しい言葉の使い方でない文は認識してくれないのでした。
しかし、小説としてどうしてもそう表現したいという思いから、主人公は様々な視点から試していきます。「姉」「弟」を固有名詞として認識させようとするものの、間際らしい表現だから書体等の体裁を変えるように要求される始末。それを拒否すると、消されてしまいます。
言葉は人間が生み出してきた表現の1つ。その言葉の概念はその時その時に沸き起こる人間の感情、感覚、思いを込めて作られ、進化していきます。本作では、それを固定化することでしか対応できない機械と、感情で生きる人間との闘いが描かれています。
人間の進化の結果生み出されたはずの機械に、いつのまにか支配され、自由な表現ができなくなってしまうことが不幸なのでしょうか。それとも、それに気づいてしまったことが不幸なのでしょうか。そんなことを考えてしまう作品です。
機械にすべてを管理される社会
人間社会のすべてを管理している「浮遊都市制御体」、この制御体が認識しなければ、たとえ人間の目に見えており、形もある人間であったとしても存在しないものと見なされてしまいます。そのため、認識されていなければ、自動販売機からソフトクリームを買うこともできません。さらには、「幽霊」と呼ばれ、警察機構から追われてしまうことになるのです。
- 著者
- 神林 長平
- 出版日
- 1986-08-01
ある少年は制御体から、「おまえなど必要ない」「生きている価値がない」「おまえは存在しない」というように無視され続けます。孤独な生き方を強いられてきた少年が出会ったのは、自称「悪魔」の堕天使。
少年以外の人には見えない悪魔は、少年に赤い表紙の本「ルーブリック・コード」を託します。そこには、異世界の神の言葉が綴られており……。
機械である制御体は、思想の書かれた書籍は燃やそうとします。本作では、それに人間が従うような世界です。感情もなく、ただ機械的に行われる人間排除とそれに従う人間たち。そんな状況を異様だと思わない状況に置かれていたら、恐怖でしかありませんよね。その世界を壊そうとする少年は「悪魔」でしょうか?それとも「神」でしょうか。
この「ペンタグラム」のほか6編、計7編で構成されていますが、制御体を軸に話がつながる連作となっています。