経済小説の第一人者・城山三郎
城山三郎は、1927年に愛知県にて生まれました。本名は杉浦英一です。
専門学校を卒業後、大日本帝国海軍に志願し入隊します。特攻隊に配属されたのち、訓練中に終戦を迎えました。その後大学を卒業し、帰郷します。就職先は地元の大学でした。
月1回の読書会である「クレトス」をはじめ、「近代批評」の同人に加わったのが作家活動のきっかけとなりました。神奈川県に転居した後に作家業に専念します。
主に経済小説、伝記、歴史小説を手掛けました。日本の社会問題や、政治問題へ切り込んでいく作品が多く、普段知ることが出来ない国の内情を描くことでも有名です。
女を書くのが苦手だろう、と評されたこともある通り、男たちが多く描かれます。しかしどの男性もとても勇ましく、カッコいいことが印象的です。
その他にも、妻との思い出を描いた「そうか、もう君はいないのか」はドラマ化も果たした作品です。
城山三郎の直木賞受賞作!戦後の男たちを描く短編集
終戦後、日本社会では、男たちが幅広い業界で自分の能力を生かして働いていました。商社マン、社長になりたいという野望を抱く男、輸出業に命を注ぐ男など、彼らは仕事に人生を捧げながらも、社会の厳しさに直面していました。
『総会屋錦城』はそんな社会問題を描いた7作品短編集です。
- 著者
- 城山 三郎
- 出版日
- 1963-11-05
総会屋、という言葉は知っているでしょうか。総会屋とは、企業の株主総会において、株主の権利を濫用して、自分が株を持つ企業から不当な利益を得ようとする人物のことを指します。
この短編は、株主総会で自分の利益になるよう振る舞う者たちの姿を世に知らしめた物語です。普段、私たちの知らないところで会社を操作し、世の中まで操作しているような総会屋の存在に驚くことでしょう。
周りの悪行を正し、合法的に総会を進めていく様子は胸のすく思いがします。
他におすすめの作品が、「事故専務」。主人公は、あるタクシー会社に勤める男です。彼はタイトル通り、社員の交通事故をはじめとする「事故」へ謝りに行く担当の専務として活躍しています。それはただ、見た目が真摯な人物に見えるからという理由からでした。
設定としてはとても面白く、こんな人がいてもいいかもしれないと思いますが、それに反して彼はあまりいい気持ちを持っていないようです。体よく使われているような仕事に、嫌気がさすのでしょう。
紹介した2つの短編の他に、あと5つの作品が収められています。社長になりたい男を描く「社長室」や、昔の日本製品の粗悪さを描く「メイド・イン・ジャパン」もなかなかの面白さです。
まさに昭和のサラリーマンの姿を描いているこの1冊だといえます。その当時の経済状況や会社の在り方についても知ることが出来るでしょう。
戦時中の元総理、広田の一生とは
第二次世界大戦後、戦争の責任を問う東京裁判が行われました。その中で、7人の人物がA級戦犯として罰せられます。元総理である、広田弘毅は、その中の1人でした。
広田は、戦争防止に努めたのち、軍人とともに罰せられたのです。
- 著者
- 城山 三郎
- 出版日
- 1986-11-27
広田元総理は、戦争の拡大を防止しようと心がけ、多くの犠牲を出さないよう策を考えた人物です。しかし、一方で軍はそれに反発し、なんとしてでも日本を勝利に導こうとしていました。
A級戦犯とされたのは、そんな軍人たちです。そして、広田はなぜか同じ立ち位置にさらされてしまいました。
もちろん反発しても良かったはずなのに、広田は一切文句を言わず判決を受け入れたそうです。
この本を読むまでは、広田のことを知る人は少ないかもしれません。それくらい、東京裁判についての知識というのは当時の人と比べて薄れているのでしょう。
広田は戦争に加担したわけではありませんが、立場上、そうと捉えることもできてしまったのです。総理、という立場の責任の重さを感じることでしょう。守らなければいけないものの多さに、自分を犠牲にしなければならなかったのです。
もし彼が東京裁判で生き延びていたら、この国は今は変わっていたかもしれない、と感じるような作品です。