助け合う庶民の様子を描く『かかし長屋』
浅草・三好町にある長屋、そこは近所にある証源寺が貧乏人のために作ったものです。証源寺の住職である忍専は、お上の許可を得てこの長屋をたて、彼らが困ったときには助けてあげていました。時に忍専の助けを得ながらも、長屋に住む住人たちは助け合って暮らしています。
彼らの多くがワケを抱えてこの長屋に流れ着きました。対人恐怖症のために出奔した旗本の子供、元盗賊という過去を隠している扇職人、元剣豪の寺子屋の先生など様々であり、彼らはみなその心の傷を隠すようにして明るく振舞いながら生きています。
一度は人生に悲観した者たちが集まり、再び人生に対して希望をもって生きようとする彼らの心温まるエピソードは、読み手を感動させること間違いなしです。
- 著者
- 半村 良
- 出版日
1993年に柴田錬三郎賞を受賞した人情ものの小説です。半村良の作品はスケールの大きいものが多く、陰謀や策略が複雑に絡み合っている印象が強いですが、この作品は彼の作風としては珍しく、むしろ庶民たちの日常を描いた作品になっています。
江戸時代の庶民たちの様子を描いており、出てくる登場人物全員が事情を抱えて長屋にやってきました。彼らの多くは心に傷を抱え、日々の暮らしを生きています。過去には辛いことのあった彼らですが、健気に生きようとする姿が心を打つこと間違いなしです。
ぜひ、そんな彼らが見せる心温まるエピソードを一度読んでみてください。
様々な伝説が絡み合う、半村良が描く謎解きミステリー『石の血脈』
世界中に散らばる伝説の数々……、この作品の中ではこれらが数多く登場します。主人公である隅田賢也は、若き建築家です。そんな彼には妻がいますが、ある日突然その妻が失踪してしまいました。
妻の失踪に動揺する彼でしたが、ある時その妻・比沙子がクラブに出入りしているのを見てしまいます。彼女が失踪した理由を探る隅田でしたが、そんな彼に大きな闇が近づいてきます。
その闇に取り込まれ、堕ちていく隅田は、初恋の人・香織と再会することになりました。その香織と危険な関係に陥っていくうちに、隅田はさらに闇の底に落ちていき、やがて大きな陰謀に巻き込まれていきます。
- 著者
- 半村 良
- 出版日
1972年に星雲賞を受賞した半村良の作品です。60年代にハヤカワSFコンテストを受賞したのち、しばらくの沈黙を続けていた半村が久々に書いたSF小説であり、彼の代表作の一つとなりました。
吸血鬼、狼男、アトランティス伝説……、この本の中には数多くの伝説が出てきます。それら全ての伝説は単独で出てくるわけではなく、物語の終盤で全て絡みあうのです。読者はその展開に驚かされること間違いなしです。
登場するキャラクターたちも魅力的な人物ばかりで引き込まれてしまいます。特に、隅田の初恋の人である香織はその妖艶な雰囲気から、隅田だけではなく読者をも虜にしてしまう魅力に溢れており、一度読めば彼女に夢中になること間違いなしです。
異能の一族の運命を描く、半村良の作品『産霊山秘録』
日本が騒乱の中にあるとき、必ず出現する集団がいました。彼らはその特殊な能力と、三種の神器を用いて平和をもたらしてきた一族です。彼らはヒの一族と呼ばれていました。
物語は、戦国時代に正親町天皇の勅令で、ヒの一族が騒乱を鎮めるために暗躍を始めるところから始まります。彼らはもともと天皇より神聖な立場にありましたが、異能の能力を使い、忍びとして活躍するようになっていきました。
舞台は戦国時代から始まり、その後戦後すぐの頃までの約400年ほどにまで及びます。その間に、歴史を動かしてきた人物たちはみなヒの一族であるという設定です。
- 著者
- 半村 良
- 出版日
1973年に出版され、同年泉鏡花賞を受賞した半村良の代表作の一つです。今ではオーソドックスですが、時代小説とSF小説を合わせた作品になっており、当時としては斬新でした。
ヒの一族という異能集団を登場させ、歴史を動かした人物たちはみなこの一族であったという設定であり、読んでいて信じてしまいそうになります。
この作品のすごいところは、舞台となっている時代の広さです。たいていの時代小説では1つの時代で物語は完結しますが、この小説はいくつもの時代にまたがって物語が進んでいきます。
そのスケールの大きさに圧倒されると同時に、ヒの一族が本当に存在しているかのように錯覚してしまうほど精緻なタッチで物語が描かれており、読めばハマること間違いなしです。