『遠い町から来た話』ショーン・タンの物静かな雰囲気が詰まった絵本
この本には、ショーン・タンの15の作品が収録されています。人気作品の「エリック」や「水牛」に、日本人の登場する「壊れたおもちゃ」など。日本にいながらにして、別の世界・別の時代に起きた出来事や生きていた人たちに直に触れられるような素晴らしい体験ができる物語ばかりです。
「水牛」は、終始穏やかな雰囲気で描かれている作品です。主人公が子どもの頃住んでいた町のはずれにいた水牛は、無口でありながら人間の言葉がわかるという不思議な存在でした。何か問題が発生すると人間は水牛に助けを求め、どの方向に進むべきか助言を求めます。水牛は尖ったヒヅメで人間たちの行く先を指示してくれるのです。
水牛の背中はとても大きくて、どこかもの悲しい雰囲気を漂わせています。絵本の中に描かれた水牛は筆者が思い描いた実在の誰かなのか、読み終わった後に想像を巡らせてみたくなる作品です。
- 著者
- ショーン タン
- 出版日
- 2011-10-14
収録されている作品ごとにイラストのタッチや世界観、雰囲気までもガラリと変わるので、読み手を飽きさせないのがこの作品の魅力でもあります。
目を引くような鮮やかな色合いというよりは、落ち着いた風合いのイラストが奇妙な世界に現実味を醸し出しています。作中に登場する奇妙な生き物たちも読み手をひきつける独特な何かを持っているのではないでしょうか。本物にとても近い夢を見ているような感覚に陥ることができる作品の数々は、ショーン・タンの世界に浸りたいファンにおすすめです。
『夏のルール』ページを開くとあの頃へタイムスリップ
ルールというと子どもたちを押さえつける窮屈なものというイメージがありますが、この作品におけるルールは、なんと子どもたちが作ったものなのです。
大人からしてみれば一見意味不明にも感じるルールの数々。
「裏のドアを開けっぱなしたまま寝ないこと」
「夏の最後の一日を見逃さないこと」
(『夏のルール』からの引用)
幼い兄弟が作ったこれらのルールは、失敗ばかりで兄を困らせる弟のおかげでできたものばかりです。
やんちゃな弟が兄と喧嘩して一人はぐれてしまうと、世界は途端に色を失い、弟の不安がその絵からにじみ出てくるように感じられます。大人にとっては子どもの頃に過ごした夏の日を思い出すような作品です。
- 著者
- ショーン タン
- 出版日
- 2014-07-23
文章の量は少なくて、ひとつひとつのページに描かれた絵がまるで芸術作品のように美しいのがこの作品の魅力です。
夏休みはいつだって開放的で楽しい事ばかりが起きます。子どもにとって夏休みとはそんなイメージなのかもしれませんが、この作品を読むとそれまで夏休みに対して抱いていたイメージが覆されるかもしれません。
赤い靴下を片方だけぶら下げておくと現れる巨大な赤いウサギや、裏口の戸を開けっ放しにしたまま寝てしまうと入ってくる恐ろしい何か。夏の暑い夜をひんやりとさせてくれるような恐怖も、この絵本では味わうことができるでしょう。
『ロスト・シング 』ショーン・タンに気づかされる。大人になって、見えなくなったもの。
少年が砂浜で出会った不思議な生き物は、タコが金属のカバーをかぶったような不思議な風貌をしていますが、ボール遊びが大好きな生き物でした。
少年はその生き物が迷子だと思い、帰る場所を探してあげますが、町の人々はその生き物に気づかないのです。気づかないふりをしているのか、本当に見えていないのか、不思議なその生き物のために彼の居場所を探す少年が行きついた先は……。
- 著者
- ショーン タン
- 出版日
- 2012-06-23
不思議な生き物と少年の友情を描いたストーリー。機械のようにも見えて、タコのような軟体動物のようにも見えて、でもその正体はわかりません。それでもその生き物には不思議と愛着が湧き、大きいのに守ってあげたいと思える人が多いのではないでしょうか。
挿絵の背景に物理や数学の教科書の一部のようなイラストが紛れ込んでいるので、それを探すのも一つの楽しみです。シュールで摩訶不思議な世界観に引きずり込まれる楽しい時間をぜひ過ごしてみてください。