代表作の一つ『蜜のあわれ』が映画化された室生犀星。近代文学を牽引し、多大な影響を残した犀星の代表作を5つピックアップして、その生涯と作品を見ていきたいと思います。

大正期の詩壇を牽引し、小説、随筆、童話、俳句など多岐に渡って名作を残した室生犀星。
その出生は決して恵まれたものではなく、私生児として生まれ、実の親の顔も見ることなく養子に出されています。しかしながら犀星は、この幼少期の心を揺さぶる経験を、優れた作品として昇華していきました。
21歳で上京した犀星は、生活苦にあえぎながら、帰郷と上京を繰り返します。そして、北原白秋に認められたのを機に、文学界での活動の場を広げていき、詩と小説を中心に数多くの作品を生み出していくのです。
自分のことを「あたい」と呼ぶ赤い金魚は、普段は庭の池で泳いでいるのですが、時に20歳くらいの女性に変身して外出したり、金魚のまま庭の木々の間をふわふわと浮遊して消えてしまったりと、なんともシュールな光景が淡々と描き出されていきます。
- 著者
- 室生 犀星
- 出版日
- 1993-04-28
この『杏っ子』という作品は室生犀星の自伝的小説で、自身の人生を客観的に見ながらも、対象に迫るような近い視点で描かれていきます。小説家として上手い文章を書いてやろうとする気負いのようなものはなく、詩的な感性を絶妙に織り交ぜていく、独特な味のある文章でつづられており、それだけでも読む価値がある作品です。
- 著者
- 室生 犀星
- 出版日
- 1962-06-10
読者は、『或る少女の死まで』というタイトルを見たとき、少女の死が描かれ、物語はそこに向かって進んでいくのだろうなと予感して本を開くことでしょう。最終的にその通りなのですが、しかしそこには、いわゆる泣ける結末とは一味違う感覚が漂うのです。これは、犀星の持つ独特な詩的描写、同時代の作家が羨望した感性の成せる技ともいえます。
- 著者
- 室生 犀星
- 出版日
- 2003-11-14
「ふるさとは遠きにありて思ふもの
- 著者
- 室生 犀星
- 出版日
- 1968-05-14
「ここにはあらゆる人間の愛がある。寂しい愛、孤独の愛、真実の愛……(中略)さうして一切の愛、これらが皆この中にある。」
- 著者
- 室生 犀星
- 出版日
犀星の言語表現は、かの川端康成が「言語表現の妖魔」と讃え、芥川龍之介もその感性に羨望したと言われています。それは、不遇を乗り越え、苦労に屈せず生きてきた人間が持つ、強さと優しさに裏付けられた特別な感性と言えるのではないでしょうか。同じ日本人として、犀星の感性と言語表現は世界に誇るべきものの一つです。それは、ずっと読み継いでいきたい、詩人の魂の記録でもあります。