最後の舟を守る海の男
主人公、紬木静一郎は、40年近く船に乗る職についていました。その最後を飾る船として、不定期貨物船の「パシフィック・ローズ」を選びます。
パシフィック・ローズはスマトラ島を出発し、横浜を目指しました。しかし、火事にあったことを皮切りにシージャック事件へと巻き込まれていきます。
- 著者
- 笹本 稜平
- 出版日
- 2014-02-06
紬木は、テロ組織からパシフィックローズを奪還すべく、陸で国際海事機関に勤務する自身の娘と協力していきます。なんとも壮大な物語に、ハラハラドキドキしながらも思わず引き込まれてしまうことでしょう。
この作品1番の魅力は、次々と船を襲う事故や事件の臨場感です。火事が起き、嵐が襲い、シージャックに船を奪われます。これらの単語を聞くだけでもワクワクする方もいるのではないでしょうか。
色々な人物の野望が交錯し、事件が大きくなっていくことも印象的です。物語が持つ壮大なスケールに魅了されることでしょう。
そして、紬木の持つ海への熱い思いが伝わってきます。最後の舟を守ろうと必死になる紬木からは、まさにヒーローの風格が醸し出されていることを感じられるのです。
最初は絶望的な戦況でしたが、それすら男のプライドで覆していく姿にしびれるばかり。敵うはずもない大国を相手に諦めない紬木の姿を見れば、感動すること間違いなしです。
時をさかのぼり推理する探偵
私立探偵である茜沢は、とある老人から昔生き別れになった息子を探してほしいと依頼されます。老人の息子を探す中で、彼はとある事件を思い出します。
その事件とは、自分の家族を失ったひき逃げ事件でした。相違点があるのではないかと考え始めた茜沢は、事件の真相に迫っていきます。
- 著者
- 笹本 稜平
- 出版日
- 2004-04-07
この作品は、笹本稜平のデビュー作であり、サントリーミステリー大賞・読者賞を受賞した作品でもあります。
老人の息子捜索と、自身の家族を殺した犯人追跡、という一見関係ない2つの事件ですが、推理を重ねていく毎にリンクしていくのです。証拠が揃いだして、段々と結末に迫っていく様子を臨場感たっぷりに描いていきます。
2つの事件に関係する人物として挙げられたのは、「駒井」という人物でした。駒井は、茜沢の家族が亡くなったひき逃げ事件の容疑者です。駒井を深く掘り下げるうちに、わからなかった部分が明確になっていきました。
また、事件を解決するにあたって様々な人物に出会います。人と人とのつながりは、謎の解決を導きました。相関図を頭に思い浮かべながらでないと分からなくなってしまうほど、人の関係が複雑なことも特徴です。はたしてどの人物とのつながりが、謎解きに必要なのでしょうか。
この作品の魅力の1つとして、家族への愛の描写があげられます。茜沢の、死んだ家族への思いをはじめとして、老人から息子への愛、そして駒井も、関係していくのです。
駒井はどんな人物なのでしょうか、どういう人生を歩んできたのでしょうか。
個性的なキャラクター達を楽しみながら、ぜひ読んでみて下さい。
エベレストで起きたとある事件
主人公は、登山家の真木郷司です。エベレスト登頂中に、なんとアメリカの人工衛星が墜落します。その影響で起きた雪崩に巻き込まれた真木は、何とか生き延びました。しかし、一緒に行動していた友人のフランス人が行方不明になってしまったのです。
真木は友人を探すため、衛星を回収しようと試みます。
- 著者
- 笹本 稜平
- 出版日
- 2004-07-14
人工衛星は、アメリカが隠していた秘密の衛星でした。その中には多くのデータが収録されており、そのデータを狙う犯罪集団が我先にと人工衛星に向かいます。
しかし、そんなことを知らない真木はただひたすら親友を探すために衛星へと向かうのです。この後、自分が大きな事件に巻き込まれるとは彼はまだ知りません。
まず目につくのは、エベレストという山で作業をすることの過酷さでしょう。標高8000メートルという、想像もできないような高さの山では無情にもつらい生活が待っています。読んでいるだけでも息苦しくなるような描写です。
そして、あまりにリアルに目に浮かべられる風景は、笹本の細かい下調べによるものなのでしょう。読んでいくと、ここまでかというほどの細かい描写が目につきます。リアリティを求めた笹本の熱い思いが伝わってくるでしょうか。
エベレストにたまたま登頂していて事件に巻き込まれたため、思いがけないところで事件は進退を見せます。真木は一般人ですが、なんと事件はアメリカ対テロ組織の戦いへもつれ込み、真木自身も巻き込まれてしまうのです。
真木は分からないなりに、自分で問題を解決しようと奮闘していきました。
果たして、親友は助かるのでしょうか。そして、テロリストから衛星を守れるのでしょうか。必見です。