何気にちゃんと焼くのが難しいハンバーグ
予測のつかない奇想天外な展開が魅力の一つである「こまったさん」シリーズ。
その中でも、今回の「ハンバーグ」は、かなりナンセンスな展開のお話です。
こまったさんとヤマさんが営む花屋さんを訪れた、真っ白なスーツの男性。彼女に、渡した地図の場所へ「バラとカーネーションの花束を届けて欲しい」と突然言ってくるのです。
地図を元に進んでいくと、またもや不思議な動物たちの世界へと迷い込んだこまったさん。届けた花束は、動物たちに途端にバリバリとちぎられ、なんとそのバラとカーネーションを使ってハンバーグを作ることになるのです。
いくら不思議世界とはいえ、お花で肉料理を作ってしまうなんて、いったい誰が予想できるでしょう?
- 著者
- 寺村 輝夫
- 出版日
- 1983-06-01
そんなハチャメチャな展開のお話でも、できあがったお料理が美味しそうに感じられてしまうのは、調理のシーンを丁寧に描いている寺村輝夫の描写と素朴な岡本颯子の絵の力といえるでしょう。
今回も詳細なレシピが作中で描かれているわけですが、お花をお肉に置き換えるだけで、そのまま美味しいハンバーグができてしまうレベルです。
特に、意外と失敗しやすい焼き方についても、「始めは強火でジュン」、「焼き目がついたらトロ火でじんわりジクジク」と、基本を感覚的にわかりやすく書いてあります。
ハンバーグの焼き方って、分かっていても失敗しやすいですので、実際に経験してコツをつかまなくてはならない感覚的な部分をわかりやすく説明してくれているのは心強いです。
ヤマさんの亭主関白ぶりが際立っているので、どうもそちらにばかり気がいってしまいますが、できあがったハンバーグはやっぱり美味しそうで、お腹がグーッと鳴り出すこと間違いなし。
今夜は久し振りに、親子で手ごねハンバーグなんていかがでしょう?
地味に手間がかかるけど、作ると楽しいのがコロッケ
今回のこまったさんは、カメラのフラッシュをきっかけに、不思議な世界へと迷い込んでしまいます。
フライパンやお鍋と一緒にサッカーの試合をしたかと思えば山小屋の台所へ、今回の場面転換の突拍子の無さは、なかなかの暴走ぶりです。
コロッケの作り方を教わって現実へと戻ったこまったさんは、いつもと違うコロッケにしようと、ひとひねり入れたコロッケを作り始めます。
- 著者
- 寺村 輝夫
- 出版日
さて、コロッケというと、皆さんどんなコロッケを思い出しますか?
定番のポテトコロッケに、かぼちゃのコロッケ、ひき肉入りや枝豆、グリンピース入り。ホワイトソースのクリームコロッケや、かにクリームも定番ですね。子どもが大好きコーンクリーム、大人の贅沢ビーフシチュー入り……意外と種類がありますね。
読者によっては、コロッケといえば商店街のお惣菜屋さんの味だったり、夏休みのプールの帰りに食べたコンビニの味だったり、中には、「お肉屋さんのコロッケは美味い」説など、思い出されるシチュエーションと味も様々でしょう。
でも、自宅でコロッケを作って食べる機会は、だいぶ減ったのではないでしょうか?
下ごしらえから揚げるまで、工程は難しくないけれど、結構手間と時間がかかる料理です。
しかし、自分で作ると、一つずつ丸める時は、ハンバーグと同じ粘土遊びのような楽しさがあるし、下ごしらえで一工夫入れて、お店でなかなか見かけない具のコロッケにしてしまったり、最後に油で揚げるのだけは少し恐いけれど、親子で作るとより楽しいお料理になるでしょう。
コロッケが爆発しないコツもしっかり書かれているので、このお話を読んで、親子でコロッケ作りにチャレンジしてみてはいかがでしょう。
こまったさんが作るシチューに込められた最高の隠し味
いつもナンセンスで、奇想天外な展開を見せる「こまったさん」。今回の表紙を見てください。もう、シチューというより魔女の鍋です。表紙の時点で、いつもの自由奔放な展開を覚悟させられます。
しかし、今回はそうした定番のプロットとは、ちょっと違うのです。
毎回、常識が尻尾巻いて逃げるような不思議な世界で驚かせ、果てはこまったさん自身の雰囲気がいつもと違うなど、あの手この手で読者の予想を裏切るシリーズですが、今回は定番化したプロットすら変えて、いい意味で予想を裏切るお話になっています。
今日はこまったさんの誕生日。例によって不思議な体験を通して、ケニアのシチューやカレー粉を使ったシチューの作り方を知ることになります。
最後に待っていたのは、ヤマさんが心を込めて作ってくれたシチューでした。
最後は珍しく、作ってもらう側になったこまったさん。ヤマさんも、今までの亭主関白ぶりはどこへやらの優しい旦那さんとして描かれています。
- 著者
- 寺村 輝夫
- 出版日
日本では、カレーと同じようにルーが販売され、クリームシチューやビーフシチューなど、手早く簡単にできる煮込み料理としてカレーに並ぶ定番家庭料理と化しているシチュー。
しかし、今回登場するのは日本では馴染みのないシチューばかりで、いつものようにストレートに「食べたい!」と感じられないかもしれません。
でも、最後の「ヤマさんのシチュー」で、不思議と料理を作りたくなるのです。
「美味しそうだから食べたくて」作りたくなったのが今までのこまったさんなら、今回の作品は、「食べた人が喜ぶ顔が見たいから」という、いつもとまったく逆の理由で作りたくなるのです。
愛する奥さんの誕生日に、一生懸命シチューを作ったヤマさん。こまったさんからしたら、どんな料理が出てきたって美味しいに決まっています。
最終巻にあたる本作で、いつも作る側だったこまったさんを食べる側にしたことで、作ってもらえる喜び、料理に込められる心までも描かれているのです。
ただ作り、食べるのではなく、そこに心が込められて初めて「料理」なんだということを教わった気がします。
今夜はちょっと、特別なシチューなんてどうですか?
いつものルーで作るクリームシチューでも、にんじんを型抜きしたり、ウインナーを飾り切りして入れたり、そういうちょっとした心尽くしが、お料理をご馳走にしてくれるのですから。