いつの時代も根強い人気を誇るミステリー小説。犯人や犯行動機、トリックが解明されたり、犯人との心理戦があったりと読んでいてドキドキさせられますよね。今回は分量は短いですが、中身が濃厚で癖になることうけあいの短編ミステリーをご紹介しましょう。

苑田の心を知りながら死んでいった女たち。才能を世に知らしめることができずもがいていた苑田。登場人物はみな尋常でない、恐ろしいほどの情の深さです。それぞれが葛藤と哀しみを抱えています。
- 著者
- 連城 三紀彦
- 出版日
はからずも轢死に関わってしまう機関士たちのやりきれなさ。そこから思いついた「弔い」の儀式が、さらなる悲劇を生んでしまい、人々は哀しみにくれるのです。
- 著者
- 大阪 圭吉
- 出版日
「メルカトルって地図の技法?そして美しい袋?」……タイトルを見ても何のことか想像もつかないという読者が多いと思います。探偵はメルカトル鮎。とはいってもこれが本名なのか、素性も不明です。そして美袋は「みなぎ」と読み、美袋三条というこれも変わった名の助手役なのです。
- 著者
- 麻耶 雄嵩
- 出版日
- 2011-08-19
怪奇的、幻想的な作品で知られる江戸川乱歩ですが、この作品にそういった色はありません。日本の推理小説の礎を築いたのは乱歩といわれており、そんな彼の初期の本格的な謎解きミステリーとなっています。今でこそ犯罪心理学という名称も一般的になっていますが、この作品が書かれた1924年には、犯人を推定するにおいて心理学を用いるのは先駆的な試みであったことでしょう。海外作品に造詣の深く知識も多かった乱歩ならではの作品なのです。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
- 2015-11-20
リヤトニコフはなぜ打ち明け話をしてきたのか、それが物語後半で明かされます。しかしリヤトニコフの話は真実なのでしょうか?そして、コルニコフ自身が語っている話は本当にあったことなのでしょうか?証拠の品は本物?それとも贋物?判断は読者に委ねられます。
- 著者
- 夢野 久作
- 出版日
- 2016-10-28
痴呆症になりかけている老人が嫁に預かった現金書留をなくしてしまい……「陽だまりの偽り」
不仲の母親とグレた中学生の息子が、不幸な事故を隠蔽する中で関係を回復していく……「淡い青のなかに」
市役所での事件と身近な悪意……「プレイヤー」
「身代金払うから息子を返さないでください」などという母親とドジな誘拐犯……「写心」
事件に巻き込まれた父と息子がお互いの傷に気づき……「重い扉が」
- 著者
- 長岡 弘樹
- 出版日
- 2008-08-07
長岡弘樹が日常に起こり得る事件を描いています。緊迫した非常事態ではあるのですが、読後にとても温かい気持ちになれます。長岡弘樹のハートフルミステリーと呼ぶべきかもしれません。
人が死んだり、残酷な描写が続いたりするショッキングなものはありませんが、人間の悪意は少しだけ垣間見えます。
ラストがとても魅力的な作品ばかりなので、読んでみていただきたい長岡弘樹の一冊です。
相続のために初めて会った亡夫の甥に心を乱される「夢の中」、働き続けることを選択した女性と、義理の両親との間に生まれた溝を描く「元凶」、離婚後に歩み寄ることのできた夫との関係性を描く「ベターハーフ」などを含め、全部で6作品が収録された短編集です。
家族との間に横たわる葛藤、愛情をなどを描いています。
- 著者
- 新津 きよみ
- 出版日
- 2016-04-06
幸せで、完結しているはずの家族の外に可能性を見つけてしまった女性たち。家族を持つ女性なら誰もが、感情移入する主人公がひとりはいるはずです。
また、夫婦別姓やセカンドパートナー、臓器移植など、議論のわかれるテーマも扱っています。家族の在り方について考えさせられることでしょう。
日常のなかに起きた小さな非日常をめぐる、彼女達の心の動きを丁寧に描いた冊です。
1998年に小説推理新人賞を獲得した「ツール&ストール」が文庫化にあたり改題されました。大倉崇裕の日常系ミステリーの代表作です。2012年には、千葉雄大主演でテレビドラマ化もされています。
就職活動中の大学生・白戸修。お人好しでいつも様々な事件に巻き込まれるところから物語が始まります。彼にとって中野駅前は鬼門中の鬼門でした。なぜなら、修がそこを訪れると決まって何かが起こってしまうのです。
- 著者
- 大倉 崇裕
- 出版日
殺人容疑で追われているという同窓生のため、真犯人を捜す「ツール&ストール」。銀行強盗事件に遭遇し、しかも犯人と戦うことになる「セイフティゾーン」など、全5編からなる連作短編集となっています。「巻き込まれ探偵」や「お人好し探偵」と呼ばれる白戸修が巻き起こす、癒し系ミステリーです。
よくあるミステリーの形式といえば、名探偵が訪れた場所で殺人が起こることが多いのですが、この作品の場合は少し違っています。巻き込まれタイプの白戸修がそのうち何となく事件を解決してしまうという独特のユルさが漂い、またそれぞれの物語も後味が良く終わるため、非常にほのぼのとした読後感を楽しめるのです。
困っている人を放っておけない白戸修は、愛される名探偵です。彼が毎回どのような酷い目に会うのかも面白さのひとつでしょう。ほのぼのとした事件を読み進めていると、突然意外なオチが現れて驚かされることも。不幸なのになぜか淡々としている修のキャラクターもアクセントになっています。
いかがでしたか?短編だからこそ、作者たちの色が濃く出ていて、凝縮された豊かな味わいをご堪能いただけることでしょう。通勤・通学や家事の合間でもさっとお楽しみいただける分量ですので、お気軽に実際の作品を手にとってみてくださいね。