代表者に意見しない組織を皮肉ったような、でも温かい名作
ファッションが大好きな王さま。100枚のパンツ、1,000枚のシャツ、10,000枚のズボン、100,000個の帽子、靴下や手袋などもあわせると、全部で1,000,000枚の服を持っていて、朝から晩まで“おめしかえ”をしています。
そんな王さまがある日、持っている服は飽きた、この世で誰も持っていない珍しい服が欲しいと言い出したから、お城の家来たちは大変です。
すでにたくさんの服がある王さまが欲しいという、誰も持っていない珍しい服とは、いったいどんな服なのでしょうか……。
原作はハンス・クリスチャン・アンデルセンです。再話は、読み聞かせボランティアグループの代表を務める、女優・エッセイストの中井貴恵。絵は、子どものマルチメディアを製作するレーベル”colobockle”(絵本作家の立花倫子)による作品です。
- 著者
- ["アンデルセン", "中井 貴恵"]
- 出版日
どのページもカラフルで、ページをめくるのがとても楽しいです。特に、王さまのたくさんの服や、靴などが並んだ衣装部屋のシーンは、まるでブティックに入ったかのよう。
お店のディスプレイを見ているような気持ちになり、どんな服があるのだろうと思わずチェックしてしまいます。
そして王さまが表情豊かで、服の柄や小物なども細かく描かれており、作者の繊細な仕事ぶりと読者への愛情が伝わってくるでしょう。
この作品は他の『はだかの王さま』とは少し異なり、はだかの王さまだと子どもたちに言われた王さまが、一緒に笑い出してしまうという、楽しい結末で描かれています。
ファッションが大好きでおしゃれな王さま。わがままなところは他の作品と同じですが、最後は騙されていたことを恥じたり怒ったりするのではなく、笑って終わるのです。説教がましくないので、温かい気持ちで読み終えることができます。
アンデルセンの国・デンマークの画家が描いた有名な世界の童話
あひるの巣の中に、あひるが生んだ卵とは別の卵がどこからか紛れ込んでしまいました。雛鳥たちが次々に生まれるのですが、1羽だけ体が大きくて色が違う子が生まれます。
母鳥のあひるは「かまわないでちょうだい。この子は何もしてやしないじゃないの」とかばってくれますが、それでも他のあひるや鶏たちから、不格好だ、できそこないだと言われて相手にされません。
やがて家を離れて苦しい孤独な日々を過ごす、みにくいあひるの子。猟犬と遭遇しても、何もされずに済んだというのに、自分がみっともない姿だから犬も噛みつこうとしないのだと思い……。
絵は、アンデルセンが生まれた国デンマークの、画家であり絵本作家の、スベン・オットー・S。翻訳は、童話だけでなく推理小説の翻訳も手掛ける、木村由利子による作品です。
- 著者
- ハンス・クリスチャン・アンデルセン
- 出版日
こちらは絵がとても美しい作品です。空の青さ、鳥の躍動感、建物の立体感、身を潜める沼など、どの絵をとっても本格的で素晴らしく描かれています。
”絵本は絵が主役の本”だと考えるなら、この作品は正統派の絵本。北欧の農園の日常を、動物目線で絵画にしたような作品。原作に忠実なようで、みにくいあひるの子の苦難の数々が細かく描かれているため、お話自体は長く、読み聞かせに用いるのは難しいかもしれません。
その長さと引き換えというわけではありませんが、みにくいあひるの子が小さな雛鳥から徐々に立派な親鳥へと成長していく過程を、生き物観察かのように絵で追って見ることができます。
漢字にはルビがふってありますが、ボリュームがあるので、小さな子どもよりも小学生以上の本が好きな子におすすめです。
地道にコツコツVS刹那主義で知られる世界の童話。しかけが楽しい作品
食べ物がなくなる冬を乗り切るために、熱い夏の間にせっせと働くあり。一方、きりぎりすは働くことはせず、バイオリンを弾いて気楽に過ごします。
やがて秋が過ぎ冬が来て、きりぎりすは食べ物を探しても見つけることができず、ありに食べ物を分けてもらおうとするのです。しかしありは、夏に何もしなかったのだから冬の間も気楽に過ごせばと、食べ物を分けることを拒否します。
ちゃんと準備していないと後で痛い目にあうという、小さい子どもでも教訓として学ぶであろう名作の、世界の童話。
原作はイソップの物語、絵は藤枝リュウジで、開くと楽しい“しかけ絵本”になっています。
- 著者
- La Zoo
- 出版日
世界の童話でも、イソップの童話は教訓めいたものが多く、たいていは残酷な結末になっています。ありときりぎりすも、最後はきりぎりすが飢えと凍えで死んでしまう結末のものが多いようです。
しかし、この作品は小さい子ども向けに生死を避けたアレンジで、ありに食べ物をもらえないというだけで話が終わります。
親御さんは、子どもにはありのようになってほしい、きりぎりすのようにならないで、というつもりでこのお話を読み聞かせすることがあると思います。この作品のきりぎりすは、ありに食べ物をもらえないだけで死にはしないのですが、それでも十分に伝わるものがあるだろう結末。
作者の子どもへの愛情と、誰かが死ぬような作品は避けたいという保護者への配慮も感じます。
絵がユーモラスかつカラフルで楽しく、“はじめてのめいさくしかけえほん”というだけあって分かりやすい構成なので、赤ちゃん~未就園くらいの小さな子どもにおすすめです。