20歳で松本清張賞!阿部智里が描く壮大な世界とは?
阿部智里は、1991年生まれ群馬県出身の作家です。早稲田大学在学中に『烏に単は似合わない』で、松本清張賞を受賞。20歳での受賞は、この賞の最年少記録になっています。
その後、早稲田大学大学院に進学しつつ、「八咫烏」シリーズを中心に新進作家としての歩みを続けています。
「八咫烏」シリーズは、人として暮らしながら時に烏の姿になる存在「八咫烏」が住む異世界「山内」が舞台。「宗家」と呼ばれるロイヤルファミリーを中心に、東西南北の四家が権力争いを繰り広げる血生臭い世界ですが、そこに登場する人物たちは、お茶目だったり、一途だったり、魅力的な人たちばかりです。
全体としては、日本の古い話のようでもあり、また、未来の話のようでもある。そんな不思議な世界の設定が、壮大で細かく、また色彩鮮やかに描かれていきます。
登場する人物のまとう衣装、住む家の造りの描写が細かく、まるで絵画を見ているかのように鮮やかに読者の心の中に広がってくるのです。
ファンタジー小説が好きな人や、時代小説が好きな人にもおすすめのシリーズです。
阿部智里の「八咫烏」シリーズ1作目!華麗なる姫たちの権力闘争
普段は人間の姿をしていながら、時によっては烏に姿を変えられる。そんな「八咫烏」と呼ばれる者たちの住む世界「山内」を舞台にした物語です。
物語は、この「山内」を統治する「宗家」の若宮の妃を、中央貴族である東家、西家、南家、北家のそれぞれから差し出された候補の中から選ぶ、というところから始まります。
四家のパワーバランスが拮抗する中、各家からのプレッシャーを背負って集まる姫君たち。そして、彼女たちを取り巻く女房や家臣たちにもさまざまな思惑があり……。
自分磨きにしのぎを削る姫たちを横目に、一向に姿を現さない若宮。なぜ若宮は来ないのか、という焦りと極度の緊張状態の中に置かれた姫たちの間で、やがて起こる殺人事件。その犯人と黒幕の人物とは……?
- 著者
- 阿部 智里
- 出版日
- 2014-06-10
本作の魅力の一つは、思わず壮大な「山内」の世界に引き込まれてしまうことです。微細な表現で描かれる姫君たちの着物や、宮殿のしつらえなどにはうっとりすること間違いなし。
一方で、主人公の姫と仲の良かった女官は命を絶たれ、ライバルの姫は実家からの入内のプレッシャーで心を病むなど、女性たちとそのバックボーンにいる貴族たちの権力争いは、これでもかというほど血生臭く描かれていきます。
ファンタジーの世界のようでいて、美しさと醜さとの対比がこれでもかと描かれていく様は圧巻です。
阿部智里が描く「八咫烏」シリーズ人気の主従コンビが登場!
前作の『烏に単は似合わない』が女性を中心にしたサスペンスだったのに対し、本作はその女性たちのあこがれの君だった若宮が中心のお話です。
主人公は、地方豪族のダメな次男坊、雪哉。彼の実家は、「山内」の貴族である北家の領地に住む地方豪族ですが、次男坊である彼は親からも見捨てられたような存在でした。
ひょんなことから、「宗家」の若宮の側近になるのですが、若宮の周りでは、次の皇太子の座を巡ってさまざまな権力闘争が巻き起こり、雪哉も命を狙われることに……。
前作で描かれたきらびやかな姫たちは姿を隠し、今回は若宮とその兄である、前の皇太子を担ぐ者たちとの戦いを中心に物語が展開していきます。
はたして、どちらが本物の為政者としてふさわしいのか。若宮と雪哉を取り巻く人々の、誰が味方で誰が敵なのか。最後にはアッと驚く結末が待っています。
- 著者
- 阿部 智里
- 出版日
- 2015-06-10
雪哉と若宮の軽妙なやりとりがとにかく面白いです。
「何度も言いますけどね、あんた、いずれその軽率な行動のせいで死にますよ」
「大丈夫だよ。私は金烏だから。」
「答えになっていません。」
「そう?」(『烏は主を選ばない』より引用)
花街に誘われた雪哉と若宮とのやり取りは、いつもことほど左様にフランクなので、ついこの2人は主従関係だったよね?と思ってしまうのです。
でも、こうしたやり取りの間に出てくる、若宮と雪哉それぞれの家の歴史や領地への愛など、複雑に絡み合った感情には、読んでいる方も心を動かされます。
ラストの展開に「あれ?!」と裏切られる読者の方もたくさんいるはず。でも、ご安心ください。次の『黄金の烏』に乞うご期待ですよ。