岡田淳が教師だったからこそ描けた物語『びりっかすの神さま』
父親が急に亡くなり、母親の仕事の関係で転校してきた始は、転校初日に、クラスで不思議な神様「びりっかすさん」を見ます。
どうやら、その神さまは、テストでびりを取った人のところに出没する様子。面白くなった始は、算数の計算テストから、漢字のテスト、本当は速いかけっこまで、びりを目指すことに。
本物のびりだった女の子とその神様を共有するうち、クラス内にはだんだん、「びりっかすの神さま」が見たいがためにびりを目指す子が増えてきてしまいます。
ネガティブなイメージの「びり」を楽しく、そして友情を育むカギとして使ってしまう岡田淳の面白さに脱帽です。
- 著者
- 岡田 淳
- 出版日
主人公の始が転校してきたクラスの担任は、テストの成績順に机を並べるちょっと嫌な先生。今だったら大問題になりそうですが、そのことでギスギスしがちなクラスを「びりっかすの神様」が救っていきます。
大上段に「びりだって悪くない!」と言ってしまわず、びりを目指すためにみんなが少しずつレベルアップしてしまう、という逆説的なお話が、シニカル好きな大人の心をくすぐるでしょう。
関西弁の騎士が登場『竜退治の騎士になる方法』
康男が保育園の時は仲良くしていた女の子の優樹。しかし、優樹の家が母子家庭になったり、学校のクラスが変わったりと環境の変化が起きたことで、2人は疎遠になってしまいます。
しかし、ある夕方、偶然出会った2人は、康男が忘れた宿題のプリントを取りに学校へ。教室にいたのは先生ではなく、「ジェラルドゆうねん。」と、関西弁をしゃべる竜退治の騎士。
怪しいやつ、と思いながらも、竜退治に興味津々の2人に、ジェラルドは騎士になる方法を伝授します。その驚きの方法とは?
- 著者
- 岡田 淳
- 出版日
他の作品とは違って、登場人物の会話が全編関西弁で書かれています。
「この学校に、竜が、いてるんですか?」
ジェリーはあいまいに首をふった。
「さあ、たいがいの学校にはいてるけど、どの学校にもいつもかならずいてる、とはよういわん。」(『竜退治の騎士になる方法』より引用)
といった調子で、物語のテンポが小気味よくスラスラと読めてしまいます。
1日の夕方の、ちょっとした時間の物語なのですが、疎遠になってしまう男の子と女の子の少し、寂しくお互いの存在を思う心情などにもうなずけるポイントがたくさん。切なく、甘酸っぱく、でも面白いお得な1冊です。
子どもがハマるゲームの光と影『選ばなかった冒険―光の石の伝説』
お父さんが友達から借りてきたロールプレイングゲームにはまってしまった学。夜中じゅう、ゲームに没頭してしまいました。
翌日、寝不足のために先生に促されるまま保健室へ行く途中、保健係としてついてきてくれたクラスメイトのあかりに、ゲームの面白さを話しているうち、ふたりはいつのまにか、その中へ。いつの間にか、学校全体がゲームとなり、闇の王が支配する世界となっていたのでした。
普通にゲームをしているときには、敵として無残にキャラクターを殺していきますが、彼らたちと関わり合ううちに、学とあかりの心の中には、様々な気持ちが生まれてくるのです。また、ゲーム中のキャラクターには2人の仲間となる、クラスメイトである勇太もいつの間にか登場します。
ゲームに心惹かれる子どもたちの心理を巧みに描きながら、その生臭さや問題点を浮き彫りにしている名作です。
- 著者
- 岡田 淳
- 出版日
- 2010-11-05
作者は、ゲームで無造作にキャラクターを殺すことなどに、さまざまな疑問を感じたのでしょう。その疑問は、ゲームを作り出した、大人への痛烈な批判とも受け取れる形で、作中に提示されています。
「だってそうよ。平和な美しい世界をとりもどしたいのなら、自分で光の意思をとりかえしに行けばいいのよ。ほかの人をつぎつぎにおくりこんでは、やっつけられるのを見ているんじゃない。」
(中略)
「あの、これ、ゲームだよ。」
勇太が言った。
「ゲームでも殺しあいはいやよ。殺されるのはいや。」
「ううん。」勇太は腕を組んだ。「殺しあいがいやで、殺されるのもいや、か。きみは?」
と、学を見た。(『選ばなかった冒険―光の石の伝説ー』より引用)
こうしたお話でも、決して、偉そうにならないのが、岡田淳作品の特徴でもあります。緊張を強いられるゲームの世界での体験は、やがて子どもたちの現実の行動も少しずつ変えていくようになります。
ぜひ、子どもが読み終わったら親に、親が読み終わったら子どもに、と大人と子どもで一緒に読みたいお話のひとつです。