武者小路実篤が描く、恋人の死から見つめる愛
主人公である小説家の村岡は、お転婆で活発な野々村夏子という女の子に恋をします。その思いが通じ合い、二人は村岡の旅の後に結婚することを決め、幸せな毎日を過ごしました。
しかし村岡は帰国する途中、夏子の訃報を受け取ることに……。想いが通じ合っていたからこそ、届かない夏子への想いがより一層切なさを感じさせます。
- 著者
- 武者小路 実篤
- 出版日
- 1952-10-02
互いを思いやり、愛をはぐくんでいく二人の様子は、旅の中でも毎日やり取りする手紙の文章からも感じることが出来ます。甘い恋の様子に思わずにやついてしまうものばかりなのです。
例えば、次のようなセリフ。「あなたのおまえより」(『愛と死』より引用)
なんとキュンと来るセリフでしょうか。これから未来をお互いと歩んでいくことが確定されているかのような口ぶりに、この部分だけでも思わず赤面してしまいます。これ以上のノロケは、ぜひ本文でご覧ください。
そして、そんな二人の愛らしさがあったからこそ、夏子の死、といういきなりの出来事は起きて欲しくない結末だったのです。
「死んだものは生きている者にも大いなる力を持ち得るものだが、生きているものは死んだ者に対してあまりに無力なのを残念に思う。」(『愛と死』より引用)
まさにこの文章の通りです。亡くなった人は、生きている人の心の中に生きているとはよく言ったもので、裏を返せばいつまでも心にいてしまう存在です。
この二人の場合は、これから結婚という幸せが訪れる予定だったのにも関わらず、何もできないまま終わってしまいました。村岡の落ち込む様子から、読者も思わず胸を締め付けられるでしょう。
今の時代であれば、テレビ電話で毎日通話ができて、交通も発達しています。今これを読むからこその、切なさも感じられることでしょう。
武者小路実篤の作品をお得に読む
人生を真っすぐ生きることの大切さ
主人公の山谷五兵衛は、真理先生(しんりせんせい)という人物のことを噂では聞いていました。しかし、真理を説く先生、ということでうさん臭く感じ、実際に会ったことはありません。
しかし、真理先生に会い、その他の人物と触れ合う中で、真理のもとに生きることに関心を持ち始めます。
- 著者
- 武者小路 実篤
- 出版日
- 1952-07-02
この作品の面白い部分は、個性的なキャラクターたちです。
画家の馬鹿一、白雲子、書家の泰山など、性格や職は異なるものの、みんながみんな真っすぐ自分の好きなことをしながら生きています。そのため、勝手な行動をすることもしばしばありますが、それもまた無自覚で純粋に生きているさまを表していているといえるでしょう。
真理先生は、実に真っすぐな言葉を残します。
「辛抱できないときは泣く。泣けるだけ泣く。 人生に辛抱できないことがあるので、人は再生できる。」(『真理先生』より引用)
この言葉からは、泣いてもいいんだ、という気持ちがふとこみ上げてきます。
大人になるにつれ、社会的に、人間的に、自分のおもむくがままに行動することが難しくなってきます。しかし、大人になっても素直に生きている真理先生の言葉は、現代人にとって胸に刺さるのではないでしょうか。
力、金は必要ない、という真理先生の言葉は儚い理想のように思えるけれども、そうなったらもっと正直に生きることが出来るのに、という言葉ばかりです。この理想は、武者小路自身の考えでもあるのだと考えられます。
また、この作品の他の見どころとして、登場人物同士が恋をしたり、友情を深めたりと、真っすぐに生きることで人生が好転していきます。
社会に疲れた大人に、おすすめしたい一冊です。
温かい言葉が溢れる、武者小路実篤の詩をまとめた一冊
ここまで作品を紹介してきて、一番顕著に出ている実篤の特徴と言えば、まさしく「前向きである」ことです。今回の作品では、実篤のポジティブな気持ちが存分に伝わる詩が120篇も収録された一冊となっています。
この詩集を読めば、実篤のぶれない理想を感じていただけるでしょう。
- 著者
- 武者小路 実篤
- 出版日
- 1953-01-13
一見、わかりやすく単純な、誰でも書けそうな詩が多く並びます。現代語で、まるで日記のように書き綴られた詩はとても読みやすく、解釈がいらないほどです。
実篤の詩の特徴を挙げると、一番に「気が抜けるほどおだやか」という言葉が思い浮かびます。そのくらい、肩の力を抜いて読むことができる詩集です。
「俺はこの幸福を誰に感謝しようかな。」(『武者小路実篤詩集』より引用)
この文からもわかるように、とっても穏やかな詩を書くのです。
詩と聞くと、それは芸術というような認識をされ、自分には理解できないと除けられがちかもしれません。しかし、実篤の言葉は心にしみやすく、わかりやすいものばかりといえます。
また、実篤は理想が高いとされています。平和に対する思いが強く、こんな世の中を作りたい、という想いが実篤の考えの根本にあるためです。この詩集からは、そんな理想を掲げる実篤の純粋な、真っすぐな人間性が窺えるでしょう。
皆さんも、この中からお気に入りの詩を探してみませんか?