貴志祐介とは
貴志祐介は1959年に、大阪で生まれた小説家です。京都大学を卒業後、生命保険会社に勤めていた貴志ですが、やはり小説家を目指したいと30歳のときに退職、執筆活動に専念していくことになります。
1986年には岸祐介名義で執筆した『凍った嘴』がハヤカワ・SFコンテストの佳作に選ばれているのですが、その後しばらくは鳴かず飛ばずの生活が続きます。しかし1996年、阪神淡路大震災の体験などを元に執筆した『十三番目の人格(ペルソナ) ISOLA』が第3回日本ホラー大賞長編賞の佳作となりデビュー。また翌年の第4回日本ホラー大賞を『黒い家』で受賞し、たちまちベストセラー作家へと変貌を遂げました。
その後も『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞を受賞、『新世界より』で日本SF大賞受賞、『悪の教典』で山田風太郎賞受賞、こちらは直木賞候補作でもあります。また『ダークゾーン』で将棋ペンクラブ大賞特別賞受賞など、遅咲きながら華々しい経歴を残している作家です。
更に、デビュー作『十三番目の人格 ISOLA』をはじめ、多くの著作が映像化している作家でもあり、特に『黒い家』は日本での映画化の後、韓国でも映画化されたほどのベストセラーとなりました。余談ですが、『黒い家』(韓国版)と『青の炎』以外のメディアミックス作品には、貴志祐介本人が出演しています。
貴志祐介の作品における最大の特徴は、人間の恐ろしさの描写が非常に巧いことでしょう。生命保険会社勤務時は「在職時代は恐ろしい目にもたくさん遭った」と本人も述べているほどで、そこで培われた経験からなのか、貴志祐介の作品の登場人物は非常に恐怖を駆り立ててくる場合が多いです。
しかし恐怖一辺倒ではなく、きちんと人情味を見せる登場人物も配置して感情移入させるのが巧い作家でもあります。人情味を見せた登場人物は大概最後は悲惨な結末を迎えるのですが。
また、「フィクションにも”論理が必要”」と述べているところからも解るように、プロットや執筆の上で大元になるネタといった要素に、非常に力を注いでいる作家でもあります。
人間の怖さを、サイコホラー小説を書かせたら日本有数の作家であろう貴志祐介のおすすめ作品をご紹介していきます。
蓮実聖司という魅力的なサイコキラー!『悪の教典』
東京都町田市にある、様々な問題を抱える高校で英語を教えている蓮実聖司は有能で、生徒や親、同僚からの信頼も厚い人気者。しかし彼は他者への共感能力が決定的に欠如したサイコパスで、自身の邪魔になるものは何の躊躇いもなく殺害してしまう人物でもありました。
理想の王国を作ろうとしていた彼は、自身に疑惑を抱いている人物を次々と殺害していきます。しかし、文化祭準備で生徒が学校に泊まり込んでいた夜、蓮実は手籠めにしていた女子生徒を自殺に見せかけて殺害するのですが、殺害現場を学校にいた生徒に見られてしまい殺人の嫌疑をかけられてしまいました。それを隠ぺいするために、散弾銃で学校にいた生徒や教員を皆殺しにする決意を固める蓮実。
こうして、血に濡れた大惨劇の1夜が幕を開けてしまいました。
- 著者
- 貴志 祐介
- 出版日
- 2012-08-03
三池崇史監督作品として映画化もした『悪の教典』。蓮実聖司というサイコパスが魅せる大虐殺が話題になった作品ですが、蓮実のキャラクター造形は他者への共感能力が欠落しているという点を除けば爽やかで優しい、授業も上手で人望も抜群という理想の教師そのもの。
そんな理想的な人物がもしも共感能力がなかったらどうなるのか、という発想から作られた作品。理想の教師だけれど社会的には不適合者、しかしそれを隠し通す蓮実の底の見えない悪意からは言いようのない恐怖を感じます。
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貴志祐介の作品をお得に読む
防犯探偵榎本の初登場作『硝子のハンマー』
介護サービス会社の社長が、社長室で殺された。12階建てのビルの最上階にある、事件現場の社長室は、「エレベーターは暗証番号がないと利用できない」「最上階は廊下に監視カメラが設置されている」「フロアには秘書たちがいた」という、気づかれずに出入りするのは不可能な密室状態。しかし、社長室と扉続きになっている専務室で仮眠をとっていた専務だけは、その監視網を逃れて社長を殺害することが可能だったという理由で逮捕されてしまいます。
そんな専務の弁護を任された弁護士の青砥純子は、専務の無実を勝ち取るため、防犯コンサルタントの榎本に協力を依頼します。2人の、密室暴きの捜査が始まりました。
- 著者
- 貴志 祐介
- 出版日
2012年には『鍵のかかった部屋』のタイトルでテレビドラマ化された「防犯探偵榎本」シリーズとも呼ばれるシリーズの記念すべき1作目です。
弁護士である青砥純子と、どうにも本職は泥棒らしい防犯コンサルタント榎本が、密室の謎を解き明かし事件を解決に導いていくこのシリーズですが、本来は『硝子のハンマー』しか出す予定はなかったそうです。しかし『硝子のハンマー』では使われなかったトリックを活かすため、2作目である『狐火の家』が書かれました。
ワトスン役である純子が密室打破のための仮説を立て、探偵役である榎本がそれに反証することで解の選択肢をつぶしながら推理するパターンが主となっていて、ミステリ好きの方なら確実に楽しめる1作となっています。