ウェルズの人気を確立した作品の一つ。今読んでも新鮮な生物系SF小説短篇集
本作は『宇宙戦争』『タイムマシン』と同じく1890年代に描かれたSF・怪奇小説短篇集。ウェルズの人気を確立した作品の一つになりました。
表題作の「モロー博士の島」では主人公のエドワード・プレンディックが、乗っていた船の難破をきっかけにモロー博士と出会い、数奇の運命を辿って行く様子が描かれます。SF小説のエンターテインメイト性に不気味な怪奇要素が織り込まれた、今読んでも新鮮味を覚える作品です。
- 著者
- H.G. ウェルズ
- 出版日
主人公プレンディックは、難破後たどり着いた無人島でモロー博士と出会います。博士は10年ほど前から島に滞在し、助手と共に動物を改造した「動物人間」を作っていたのです。動物人間の多くは従順でしたが、時間が経つと野獣に戻る欠点を持っていました。
主人公はモロー博士たちとともに1年ほど島に止まりますが、その間に動物人間との間で様々な事態が起こり、人間の奥に潜んだ凶暴性、獣性とでも言うべきものが否応無しに表面化し始めます。
本書が描かれた時代は19世紀末なので、博士が動物人間を製造する過程は今考えられる方法よりもかなり原始的ですが、その不気味さと危うさは今の時代に読んでも新鮮味を覚えるほど。
他の作品にも顕著に現れていますが、ウェルズは自身の作品を通して、人間社会の行く末に警報を鳴らしていました。
その歴史の中で何度も過ちを繰り返し進んできた人類。人類に潜む果てしない欲望と獣性、そしてそれらの極限状態を本作で示すことで、現実世界での過ちを少しでも減らそうと必死だったウェルズ。本作を読んでいるうちにふとそんな彼の意図が感じられ、作品の奥深さが心に染み渡るでしょう。
人間の願望を具現化した世界を描いた、あまりにも有名なSF小説の古典
本書はイギリス・ロンドンに住む主人公の科学者が、人間の常なる願望「透明人間になる」薬品を開発したところからスタートします。主人公はそれを使い実際に透明人間に姿を変え、数々の事件を巻き起こしていきます。
「透明人間」になりたいという願望はあれど、もし実際になった場合、一体人間はどうなってしまうのか。あまり注目されない所に焦点を当てて描き上げた傑作です。また当時(19世紀末)におけるイギリスの生活の様子が鮮やかに描かれており、イギリス文化や歴史に興味のある人であれば一層楽しめる内容になっています。
- 著者
- H.G. ウェルズ
- 出版日
- 2003-06-19
本書の「薬品によって人間が姿を変える」というアイデアは、スティーヴンソン著『ジキル博士とハイド氏』にヒントを得たと言われています。
世間の人をあっと驚かせたくて透明人間になる薬品を作り、元の姿に戻れなくなった主人公の悲しい運命が、時々ユーモアを交えた文体で描かれていきます。空想の世界に止まらず、実際に透明人間になるとそれまで行なっていた人間の活動はどうなるのか。当時の常識・見解からすると、この物語がかなりリアルな視線で考えられていることが分かるでしょう。
何より読者をひやりとさせるのは、ストーリー自体よりも、名声を求めて猛進し、執念で周りが見えなくなってしまう人間の恐ろしさ。人間の思考が極端に振れる危険性がまざまざと感じられます。読者は自然と主人公の状況を自分自身に照らし合わせつつ、ハラハラしながら読み進めるに違いありません。
妙に現実味溢れる世界観にひやりとしながらも、先が気になり最後まで一気に読みたくなる、色褪せない名作です。
歴史がもっと身近に、面白く感じられる!一度は読んでおきたい名著
本書はSF作家のウェルズらしく物語性溢れる一冊で、他の歴史書とは一線を画すもの。歴史上の出来事や人々の関係性が、科学技術の発展を交えながら分かりやすくまとめられています。
出版当時は軍国主義が高まる世の中だったため、まず『世界史文化概観』の名で発表され、1965年に現在の題に変更されました。平和を常に願っていたウェルズが魂を込めてまとめた本書を読めば、私たちの生きる世界の歴史がもっと身近に、そして面白く感じられるでしょう。
- 著者
- H.G.ウェルズ
- 出版日
- 1966-06-20
第一次世界大戦の惨状を目の当たりにしたウェルズ。常に平和を願っていた彼は大戦後間も無く、本書の執筆に取り掛かります。しかし世界各国はナショナリズムに傾倒していくばかり……。
再び世界の雲行きが怪しくなってくる中、人類全体が共有すべき歴史の概念を求めて執筆された本書。ウェルズは人類が共通の歴史(過去)を持つ事で、共通の未来を作っていけるのではないかと考えました。下巻と合わせ読者に歴史に対する新しい視点を与える良書として、今も読み継がれています。
読者が本書を読み始めてまず感じるのは、その読みやすさ。歴史書というと事実が淡々と述べられ、学生にとっては特に退屈なイメージがあります。しかし本書は、さすが作家とでも言うべきリズミカルな文体と展開で、読者を惹きつけ飽きさせません。