物語の意外な展開に驚かされ、平和について考えられる絵本
『きつね森の山男』は、気は優しくて力持ちという言葉そのもののような山男がみんなの気持ちも身体も温かくしてくれる、意外な展開が面白い1冊です。
物語は、山男がねぐらを探すうちにきつね森に迷い込む場面から始まります。初めは警戒していたキツネたちですが、山男の人柄を知り仲間に迎えます。そしてなんと山のお城の殿さまを倒すというのです。しかし、山男は戦争など好きではありません。彼が好きなことは大根づくりにぶどう酒作り、そしてその大根でふろふき大根を作り、ぶどう酒を飲みながら食べることなのですから。
そしてついに戦いの時がきました。なんと殿様が攻めてきたのです。山男はきつねが逃げ込んだ大根畑を守るために殿さま軍を追い払います。それ以来、殿様は攻めてこなくなったのですが、ある日ひょんな事から山男は捕まってしまいます。一体山男はどうなってしまうのでしょうか……。
- 著者
- 馬場 のぼる
- 出版日
優しくて平和を望み、そして食べることが大好きな山男。その飄々とした姿と、殿さまに捕まってもなお大根の心配をし続ける優しい行動や表情がいつの間にか可愛らしく見えてきます。
初めは、殿さまから自分をそして仲間の命を守るために戦う準備をするきつね達ですが、「せんそうはないほうがよいのです」という一文に全てが表されているのでしょう。命を犠牲にする戦争よりも、皆でおいしい物を囲み平和に暮らす方が良いに決まっています。この山男は意図せずにそれをやってのけたのです。
みんながこんな風に思えたら、いつまでも平和に暮らすことができるというメッセージなのかもしれませんね。
世界中の人に知られる物語を、馬場のぼるならではの絵のタッチと軽快な語り口で書き下ろした作品
『アリババと40人の盗賊』は世界中に広く知られるイスラム世界に伝わる物語の一つです。「開けゴマ」の呪文でご存知の方も多いのではないでしょうか。
この物語は、貧乏ですが正直な「アリババ」という主人公が盗賊の宝のありかを知ることから始まります。金貨を持って帰ったアリババは、実の兄から金貨のありかを聞かれ場所も呪文も正直に答えてしまいます。そして欲深い兄はたくさんの宝を持ち帰ろうとして、盗賊に殺されてしまうのです。
ここで登場するのが賢い奴隷の娘。盗賊に命を狙われるアリババを幾度に渡って機転を利かせて助けます。この物語のもう1人の主役と言っても良いですね。
アリババは、無事に盗賊から逃げて幸せになることはできるのでしょうか。
- 著者
- 馬場 のぼる
- 出版日
世界中に広く知られている物語を馬場のぼるならではの語り口で描いた名作です。絵本にしては長いお話ですが、軽快に進む話の展開にハラハラドキドキしながらどんどん読み進めることができます。
実の兄が無残な様子で殺されたり、盗賊の隠れている瓶に油を注いで焼け死んだりと、子どもにとっては衝撃的な場面も出てきます。しかし、馬場のぼるならではのほのぼのとした絵がうまく原作のストーリーと調和しているので、子どもたちも怖がることなく読める作品に仕上がっています。
アオさんの優しさに心が温かくなる絵本
『ぶどう畑のアオさん』は、優しくて強い馬の「アオさん」が主役のほのぼのと読める絵本です。
物語は、アオさんがぶどう畑の夢を見る場面から始まります。夢で見たぶどう畑を探しに丘に来たアオさん。するとそこには夢でみた光景と同じぶどう畑が広がっていたのです。そして途中に出会ったねこと「誰にも内緒」と約束をして、明日改めてぶどう畑に来ることにしました。しかし、優しくて正直なアオさんは会う動物たちについぶどう畑のことを話してしまいます。そしてみんなでぶどう畑に向かうとオオカミがいて……。
- 著者
- 馬場 のぼる
- 出版日
気持ちの優しいアオさんですが、強さも兼ね備えています。ぶどうを独り占めしようとするオオカミをやっつける訳ではなく、アオさん流のやり方で打ち負かします。そしてみんなでお腹いっぱいぶどうを食べるのですが、そこで終わらないのがアオさんの良いところ。独り占めをしていたオオカミのことも気遣ってあげる気持ちを持っているのです。
こんな風に人を思いやりながら生きていけたら素敵ですよね。ほのぼのとしたストーリーと絵は優しさに溢れていて、気持ちが温かくなる1冊です。