芥川賞を受賞したことで話題を集める本谷有希子。彼女が描くのはどこか自意識過剰で癖のある、生々しい「女」の姿。イタい!それなのに、目を離すことができません。高い中毒性を持つ本谷有希子ワールドの魅力を堪能できる作品をご紹介します。

表題作を含む3作構成の1冊。3作品とも人間らしさと、心の闇を生々しく描いた作品となっています。
1作目は「江利子と絶対」。引きこもりである「江利子」と、江利子を「絶対」に裏切らないように育てたから、という理由から「絶対」と名付けられた犬。そんなコンビを姉の視点から見た物語です。江利子は積極的に社会との関りを断とうとする毎日を過ごしていました。しかし、ある日電車の転倒事故のニュースを見て、江利子はある決心をして……。
2作目の「生垣の女」はとある男女を描いた物語。頭皮に問題を抱える主人公・多田はある日、生垣に潜んでいる女性・アキ子を発見します。事情を訊いてみると、アキ子は多田の隣人である本間を探してやってきたと言います。そして、どういうわけか多田が本間をかくまっていると思い込み、多田の家に居座るようになって……。
3作目「暗狩」はホラー。小学生の主人公・小田原は友人の吉見、そして上級生のいじめっ子である波多野と野球をして放課後を過ごしていました。ある日、野球のボールが波多野の「お隣さん」の家の敷地内に入ってしまいます。ボールを追いかけて「お隣さん」の敷地内へと入りますが、「お隣さん」は恐ろしい殺人鬼で……。
- 著者
- 本谷 有希子
- 出版日
- 2007-08-11
3作品ともにストーリーも雰囲気もまったく違うものとなっていますが、人間の持つ狂気を見事に描いています。しかも、現実離れしているようで、ひょっとしたら近所にそういう人がいるかも、と思わせるような手の届く狂気。特に3作目の「暗狩」については殺人鬼に目をつけられた主人公達が、仲の良い友人同士ではなく、むしろ仲は悪いくらいだという関係が緊迫感を相乗させます。
1作目、2作目、3作目と狂気の度合いが強くなっていく、という構成となっており、グロテスクな表現もところどころに出てきます。おそらく、好き嫌いが分かれるでしょう。
しかし、狂気だけを描いている作品ではなく、最終的には登場人物達の本音をさらけ出す作品となっています。狂気に触れた時、登場人物達の心から沸き上がった本音とは……。
退屈を感じている方、刺激がほしい方におすすめの1冊です。
収録されているすべての作品で、現実ではありえないようなドラマがさらりと起こります。突拍子のない事件があまりにも自然に起こるそのシュールさも、本谷有希子作品の魅力のひとつ。
- 著者
- 本谷 有希子
- 出版日
- 2015-05-15
巡谷と日田は高校時代のクラスメイトで、卒業後それぞれ「地元にいたくなかったから」「手記家になるために」という理由で上京。しかしいつのまにやら無職の日田が巡谷のヒモになる形でアパートの一室に同居し、物音を立てると壁を殴る隣人のゲシュタポに怯えながらもそれなりに楽しく暮らしています。
- 著者
- 本谷 有希子
- 出版日
- 2013-06-14
この兄妹には「事情」があり、奈々瀬は25歳にして無職、いつもグレーのスウェットの上下を着て一昔前ふうの眼鏡を掛けています。
- 著者
- 本谷有希子
- 出版日
- 2010-08-25
演技の才能がないのにも関わらず「自分は特別」と清々しいほどの勘違いをし、あらゆることを自分に都合よく解釈して横暴に振舞う澄伽。そんな姉に興味を持ち、日記を盗み見るなどした挙句、姉を自己表現の道具にすることに罪悪感を覚えながらも欲望に抗えない妹の清深。
- 著者
- 本谷 有希子
- 出版日
- 2007-05-15
「いいなあ津奈木。あたしと別れられて、いいなあ」(『生きてるだけで、愛。』より引用)
- 著者
- 本谷 有希子
- 出版日
- 2009-03-02
いかがでしたでしょうか。誰にも真似できない作風とセンスで文学界に嵐を巻き起こす作家、本谷有希子。どれを読んでも戯曲を思わせる臨場感に溢れた、未知の読書体験ができるでしょう。一読の価値ありです!