あいつが死ねば俺が助かるが、それは仕方のないこと……か?
次は赤月カケヤ「俺が生きる意味」シリーズ。
ある日突然外界と遮断され、高校の中に閉じ込められた主人公たち。それまでの平穏な生活から一転し、命懸けで逃げ惑うこととなります。なぜならそこには人喰いの化物がいるから!
化物と戦いながら、様々な真相を掴んでいく主人公たち。この異様な世界を終わらせるためにはある犠牲を払うことが必要だと分かったとき、彼らは一体どうするのでしょうか?
密閉された空間で人間の極限が描かれる、パニック・ホラーラノベです。
- 著者
- 赤月 カケヤ
- 出版日
- 2013-03-19
今回もしらびの描く魅力的な生意気風女子が数多く登場しますが、この作品では化物に注目です。巻末にも化物図鑑のように整理されて紹介されているのですが、ものすごくデザインがスタイリッシュ! 蜘蛛の脚など、とても格好いいのです。
表紙の女子たちもなんだか若干目が死んでいて、世界観のダークさを如実に表しているようです。
全6巻刊行されているだけあって物語は壮大で、校内での単なるゾンビものには留まりません。精神性や宗教性をも絡めていて、かなり読みがいがある作品です。校内見取り図がついているのも主人公たちの動きをいろいろ想像できて楽しいですよ。
人間の心に潜む、残酷性と善良さを浮き彫りにする作品。
次は安里アサト『86 ―エイティシックス― 』。
有色人種は、人ではなく人型のブタ同然である。そんな社会通念が浸透したサンマグノリア共和国では、他国の脅威から逃れるため、被差別民たちを都市外へと追いやり、彼らを隣国が開発した無人機と戦わせていたのでした。
都市外で指揮をとる寡黙な少年は、上官となる少女と出会います。彼女は、ブタ扱いされる彼らの命と心を当たり前に感じる、共和国内では風変わりな人物でした。
- 著者
- ["安里 アサト", "I-IV"]
- 出版日
- 2017-02-10
人間って本当に恐ろしい……!
序盤はそんな震えが止まりません。表向きは平等とされる国で、”無人”戦闘機に乗せられて命をかけることを強いられる子供たち。え?無人じゃないって? いいのです。だって彼らはブタ同然で、人ではないのですから。…そんな間違った認識が、国中に広がっているのです。
帝国では当たり前となった生活が描かれますが、それは人類の歴史上の過ちをも想起させるもので、何とも後味わるく悲しい気分になってきます。また描写が淡々としながらも巧みなので、そんな気分になりながらも物語に入り込まされてしまうのです。
前線に出る彼らの、戦闘ではない日常のシーンの挿絵では、しらびお得意の無邪気で可愛らしい子供たちの姿も描かれます。けれど、それと対比して、なんとも言えない暗さと諦念をにじませた主人公の表情を描くシーンもあり、余計に、理不尽な暴力に対する怒りがこみ上げます。
少年の仲間は次々と死に、エリートである少女も現実を知り、たくさんの涙と後悔を覚えます。読者の私たちも、人間の業と救いを見て、涙を流さずにはいられないでしょう。
だからライトノベルは面白い!最強の業界小説
最後に、望公太『ラノベのプロ! 年収2500万円のアニメ化ラノベ作家』を紹介します。
ライトノベル作家、陽太の年収は2500万円。さらに上を目指す彼は市場調査を忘れず、世に求められるライトノベルの出版を目指して奮闘中です。綿密な計算のもとに執筆する陽太のまわりは、天才肌の弟子入り志願者や新人大賞受賞の女子中学生、書くもの書くもの大ヒットの売れっ子イケメン作家などが取り巻いていて、賑やかな日々。
そんな、明るく楽しいだけのようでいて、実はアツい彼らの日常が描かれています。
- 著者
- 望 公太
- 出版日
- 2016-12-20
主人公は売れる作品を目指して執筆するため「売り豚!」などと罵られることもある少年。けれど彼は、ただお金を稼ぎたいのではなく、ライトノベルをたくさん売ってお金を稼ぎたいのです。
とにかく彼は、ライトノベルが好きすぎる! それは面倒なこだわりで熱苦しく、一方でクールを気取っている男なのですが、同じくラノベがお好きな方は共感できるところもあることでしょう。
ところで、1巻表紙の女の子は主人公の幼馴染なのですが、この子がすごく明るくて優しくて可愛い! ビジュアルも作品にぴったりで、さすが名イラストレーターのしらびです。
そして主人公を密かに焦らせる後輩作家もキュンときます。彼女は女子中学生なのですが、彼女と幼馴染、弟子入り志願の女子高生らが主人公の家に集まるシーンのイラストはなんだか彼女がお母さんのようで……しらびには珍しく、癒し系の可愛らしさも堪能できる作品です。