辻仁成を知っていますか?バンドマンとして彼を知っている人もいるかもしれませんが、彼の小説を読んでみてください。そこには、甘ったるい嘘と、繊細な言葉と、苛烈な性意識が広がっています。純文学的作品から大衆文学的作品まで、幅広くご紹介。

アルはごく幸せな夫婦のもとに生まれた男の子です。父親は、鍵盤引きとして日々仕事に精を出し、素敵な奥さんにも恵まれます。アルを授かった二人は、幸せの絶頂でした。しかし、メロドラマよろしく、幸せは長く続きません。出産と同時に母親はなくなってしまうから。
- 著者
- 辻 仁成
- 出版日
- 1997-07-30
- 著者
- 辻 仁成
- 出版日
- 2009-06-11
「たとえだけど、こういうのはどうでしょう。一つの完璧なルールを作ってみるのです。絶対にお互い、会わないというルール。馬鹿げたルールかもしれないけど、僕は面白いと思うな。」(『愛をください』より引用)
李理香と基次郎は文通を始めます。李理香は施設出身で幼いころに両親に捨てられます。リストカットをする彼女のもとに届いた基次郎の唐突な手紙。こうして彼らの物語は始まります。
彼らは絶対に顔を合わせてはいけません。近況を報告し、悩みを相談します。長い文通もあれば、絵葉書程度のやりとりもあります。顔も知らない、会ったこともない人との文通は奇妙です。つかみどころがない――。
よく考えてみれば、現代では、迷惑メールしかり、インターネットには嘘八百の文字列が私たちをあざ笑っているのではなかったでしょうか。そう、基次郎から送られてくる手紙に真実の保証などないのでは?
しかし、です。一生懸命書いている私も、本当のことを書けるものなのでしょう。李理香はリストカットをし、勤務先の保育所の男性と不倫をしてストーカー行為をされたあげく、再会した実の父親にコーヒーやソースを頭からぶっかけます。そんな日々の本当のことを書こうと思えば思うほど、文章は紙面から滑り落ち、するすると逃れ去っていくかのようです。なぜなら彼女の本質的な悩みは、「女性が存在しない」ことだからではないでしょうか。
嘘に気付き始めた彼女は、禁忌を犯します。基次郎は誰か。その先に見える、本当の自分、本当の基次郎は?手紙をめぐるやさしい嘘と、裏切り続ける文字を愛する作家、辻仁成の世界が凝縮した作品です。
主人公の稔は、いつまでも忘れられない人がいます。その人は、かつてこのようなことを言いました。
- 著者
- 辻 仁成
- 出版日
- 2015-08-20
主人公斉藤は、函館の旅客船で働いていましたが、押し迫る不況の中、安定をとって刑務官の道を選びます。彼は、屈強な男で、ラグビーで体を鍛えたラガーマンです。人一倍男らしさを追求した男は、自分の刑務官の仕事を誇りに思い、精神よりも肉体をたくましくした自分を認めていますがいじめられていた過去があります。
- 著者
- 辻 仁成
- 出版日
- 2000-02-29
「それにしても私のところにやって来る人たちはみんな疲れきっていたし、悩んでいたし、今にも死にそうな顔をしている人がほとんどであった。まるで人生相談員のよう。」(『代筆屋』より引用)
- 著者
- 辻 仁成
- 出版日
辻仁成の繊細な物語を体験してもらえましたでしょうか。言葉が嘘であること、人間の性愛が簡単に翻弄されていくさまは、言葉だけがなしえるうさんくさいゲームです。みなさんもぜひ、ご一読してみてはいかが?