ラノベ史上最も頼れる猫が登場。
竹林七草『猫にはなれないご職業』では、藤ちょこの現代もの女子イラストともふもふの猫が拝めます。
主人公・桜子の家には猫がおり、ただその猫は猫又という妖怪かつ陰陽師で、言葉も話せて煙草を好むという変わった設定です。
由緒正しき陰陽師である桜子の祖母の葬儀後の場面から始まる物語。祖母の方針から猫又であることを明かせず声をかけることはできませんが、心から桜子を想う猫・タマが描かれていきます。
祖母の死によって、桜子の周囲で動き出す妖怪たち。桜子の親友・命(みこと)とタッグを組んだタマの、命懸けの妖し封じは果たしてうまくいくのでしょうか?
- 著者
- 竹林 七草
- 出版日
- 2012-05-18
爺さん口調の猫が可愛く、命の天然な発言にくすっと笑えながらも、物語は急展開をとげていくのです。そんなシリアスとコメディが入り乱れる、飽きることのない作品です。
腐女子であることから脅しをかけられ、妖怪封じに巻き込まれた命とタマは当初はバタバタと罵りあう凸凹ぶりで楽しめますが、次第に命懸けで桜子を守るハードボイルドバディものの様相になります。読者は、命ってまじめな顔もできるんだ……と驚かされることに。カラーイラストのドヤ顔に思わず惚れますよ。
クライマックスでは、守られ続けてきた桜子が成長の瞬間を迎えます。それはある大切な存在との決別を乗り越えたためなのですが、タマや命との絆を強め、目覚める姿を是非ご覧下さい。
魔王が倒された世の中、金が全て……か?
お次は女騎士の太ももがすばらしくキュートな、むらさきゆきや『放浪勇者は金貨と踊る』。魔王が倒された後の、剣と魔法のファンタジー世界にて繰り広げられるストーリーです。
亜人(人に似ているが、人とは一線を画した能力をもつ存在)の少女が酒場で女剣士に相談していますが、どうやら彼女は詐欺にあってしまったようです。それを聞いていた得体の知れない青年が、騙し返してお金を取り戻してくれるといいます。
彼の正体は、実は魔王を倒した勇者本人!新たな人類の敵となった詐欺師たちを相手取り、詐欺返しによって人々を助けんとする勇者の世直しストーリーです。
- 著者
- むらさき ゆきや
- 出版日
- 2015-02-20
ドラゴンや魔王をばっさばっさとなぎ倒し、助けた国の王女様に勝利のキスをもらってハッピーエンド!といったお約束最強系ファンタジーには飽きちゃった、という貴方におすすめのラノベです。
魔王の脅威がなくなった世界で人々が縛られるのは金の力。新たなモンスターとなった金の亡者たち(=詐欺師たち)を知略で騙し返す、というところが新鮮で楽しめます。
とはいえ、藤ちょこが描く女騎士は可愛いし、魔王討伐隊の元パーティーは出てくるし、安定のファンタジー感もありますので安心してドキドキできるでしょう。
詐欺の手口は意外と分かりやすかったり、結局は勇者としての力がモノを言ったりもしますが、根底にあるのは、正義を執行するものこそ勇者ということ。出だしはいきなり情けない感じですが、刀から頭脳へ武器を変えても弱きを助ける、アツい勇者の心に脱帽です。
惹かれあう、運命のふたり……いや、ひとりと一体。
最後は、やっぱり藤ちょことの黄金タッグ、物草純平『終奏のリフレイン』です。
21世紀半ばの現代、空には「スフィア」があてどなく飛行しています。それは"オルゴール技術"によって未知の動力を得るオーパーツ(時代にそぐわない高度な加工品)であり、世界はこの19世紀に発見された新技術によって急速な発展を遂げました。
人と見紛う精巧なロボット、宇宙への探索。主人公・タスクは、そんな世界で一人前の技術者となるべく、ヨーロッパへ留学中の身の上です。
人間よりも人形に焦がれるタスクが一体の人形に出会うところから、物語は動き出します。全ての自動人形の母である彼女、リフレインとタスクの堕ちていく恋物語へと。
- 著者
- 物草 純平
- 出版日
- 2017-03-10
ライトノベル=会話主体の行間たっぷりな文章、そんなイメージがある貴方には、ちょっと驚きかもしれない冒頭数十ページ。だって漢字と固有名詞が詰め込まれすぎていて目眩がしそうです……!
練りに練った世界観なので、歌唱人形(オルドール)の動力部分の稼働音やらMD波と呼ばれる動力起動の説明やら、ギリシャでの技術発見の経緯やら、まるで歴史の教科書のよう……。
お好きな方には堪らないマニアックな記述ですが、苦手な方も少し!頑張ってみてください。主要キャラたちが登場してからはもう止まりません!登場人物たちのキャラが立っているので、難解かと思われた文章もすっと入るようになります。藤ちょこのイラストが、作品に磨きをかけているのです。
ヒーローといいヒロインといい、ふと漏らす変態思考がなんだかクセになってくる作品です。