庶民に愛される大衆文学を数多く執筆した吉川英治がその生涯を閉じてから50年以上が経ち、その作品の多くは青空文庫で無料公開されています。小説、随筆を含め公開作品は数多くありますが、今回は代表作ともいえる壮大な歴史物語を4作、ご紹介します。

吉川英治は、自身の作品の中でただ純粋に面白いかどうかでいったら、『鳴門秘帖』が一番だと感じていました。年を重ねてから読み直すと稚拙な部分が目につくものの、ただただ一途に少年時代から培ってきた空想力をつぎ込んだ小説であったため、愛着があったのでしょう。
- 著者
- 吉川 英治
- 出版日
- 1989-09-04
猪突猛進でやんちゃな豪傑、張飛。大人な常識人、関羽。思慮深い劉備。そして中盤から登場する天才策士、諸葛孔明。『三国志演義』では悪役として描かれていた曹操にも個性を持たせ、その背景や心情を描きだしています。
- 著者
- 吉川 英治
- 出版日
- 1989-04-11
吉川英治は、歴史の中には時代を経てもなお残るその国の文化が埋もれている、と感じていました。そして歴史小説を読んでいるとき、違う時代に生きた英雄や庶民たちの生活や心情を想像して第三者的に眺めるのと同時に、自分自身を鏡のように見つめているのだとも考えていたようです。
- 著者
- 吉川 英治
- 出版日
- 1990-04-23
吉川英治はそこに独自の解釈を加え、『私本太平記』という文学作品を完成させました。この小説はフィクションでありながら、極限まで史実を忠実に再現しようと試みられています。そのため、執筆以外の取材や調査にこれまでの作品以上に時間を割いたようです。
- 著者
- 吉川 英治
- 出版日
- 1990-02-05
吉川英治は「大衆は大知識」だと思っていたようで、それ故にフィクションである歴史小説でも決して空想だけで描くことはしませんでした。小説のどの部分をとっても、その道の専門家がいるので、新聞連載小説という、より多くのより様々な職業の人々に読んでもらう読み物を書く立場として、適当にごまかすということは徹底的に避けてきたのでしょう。
それだけに吉川英治の作品はリアリティに溢れているのですが、その一方で大衆を常に意識した構成や展開で、読者をどんどん引き込んでいく上手さがあり、歴史ファンならずともページをめくることがもどかしいとすら感じてしまうのです。青空文庫で気軽に読みはじめられるので、是非挑戦してみてください。