カラーの違う作品を見事に描くマルチプレイヤー、桑原水菜
千葉県出身、2017年現在は東京在住の作家・桑原水菜。小さい頃はバレーボールや少林寺拳法に打ち込むなど意外と肉体派だった一方で、自作の漫画などを描いて過ごしていたそうです。中学時代に寺社や仏像に興味を持ったことをきっかけに、中央大学文学部史学科に進学しました。
大学時代に作家を志し、雑誌「Cobalt」に投稿。そして1990年『風駆ける日』で連載が開始し漫画家デビュー、同作はコバルト読者大賞も受賞しました。その後は集英社コバルト文庫を中心に活躍を続け、2015年にはデビュー25周年を迎えています。
代表作は『炎の蜃気楼(ミラージュ)』『風雲縛魔伝』『シュバルツ・ヘルツ』など。また、2017年4月現在最新シリーズの『遺跡発掘師は笑わない』が刊行中です。特に完結した今も絶大な人気を誇る「炎の蜃気楼」シリーズは、「BL三種の神器」のひとつと称されるほど。
ファンタジーやコメディなどのライトな作品があったかと思えばハードボイルドな作品もあり、その振り幅の広さはまさにマルチプレイヤー。また「黒薔薇ミズナ」という別名で『黒薔薇ミズナのBL講座』というBL初心者に向けたエッセイも発表しています。
プライベート面では非常に幅広い趣味を持っており、それは遺跡・仏像・新幹線とまさに多種多様。神社仏閣巡りなども好きで、よく奈良の寺社などを訪れているようです。多方面に渡る膨大な知識を持つ桑原水菜だからこそ、名作と謳われる作品を数多く生み出すことができるのかも知れません。
「鬼の手」を持つ天才『遺跡発掘師は笑わない ほうらいの海翡翠 』
永倉萌絵が転職した「亀石発掘派遣事務所」。そこには西原無量という一人の天才発掘師がいました。21歳と若いながらも確かな腕を持つ彼は、国宝級の遺物を次々と発掘し、絶対的エースの名を欲しいままにしていますが、無愛想なのが玉に傷。また、無量のもつ一番の特徴は、まるで鬼の笑った顔のように見える火傷痕がある「鬼の手」と呼ばれる右手でした。
ある日無量と萌絵は、とある大学の発掘チームの依頼を受け、奈良に赴くことに。そこで「蓬莱の海翡翠」と呼ばれる緑色琥珀を発見。調査中に、文化庁のエリート職員となった幼馴染の相良忍とも再会しますが、その夜、無量を指名した現場責任者の大学教授が何者かに突然殺害され、現場から立ち去る忍らしき人物が目撃されます。
- 著者
- 桑原 水菜
- 出版日
- 2014-12-25
桑原水菜が自身の持つ知識を存分に発揮した、考古学ミステリー。元々『西原無量のレリック・ファイル』として刊行されていたものが、文庫化にあたり改題されました。
スピーディーに物語が展開するのが魅力の本作ですが、それぞれのキャラクターが立っており、読者を息つく暇なく引き込んでいきます。果たして目撃された人物は忍本人なのでしょうか。また、水面下で動き出す国家レベルの陰謀とは……。
無量の祖父が過去に起こした事件や、尖閣諸島付近に埋蔵されているといわれる鉱石など、事実と絡めたエピソードも注目のひとつ。歴史好きや遺跡発掘に興味がある人にもおすすめです。また本作は、文庫版のイラストを手掛ける睦月ムンクによってコミック化もされていますので、文庫版で興味を持った方は併せて読んでみてはいかがでしょうか。
少年に移植されたのは、悪魔の心臓『シュバルツ・ヘルツ-黒い心臓』
心臓病を抱える中学生の少年・嘉手納奏(かでな・かなで)は、移植手術を受けるためにドイツを訪れますが、突如行方不明に。
湖で見つかった奏は、その後病院に運び込まれましたが、そこへアイザックと名乗る男が登場。日本に戻った後、奏は護衛を申し出るアイザックと同居することになりますが、今度は神楽崎という謎の男子生徒が奏の学校に転校してきます。時を同じくして奏の周囲で不可解な事件が起こり始め……。
ドイツで奏に移植されたのは、実は悪魔の黒い心臓。そのせいで彼は次々と事件に巻き込まれていくのです。兄のものである心臓を奏から取り返そうと暗躍するアイザックらアース派と、黒い心臓を止めようと狙う神楽崎ことケヴァンらのヴァン派。2つの思惑が交錯し、黒い心臓を巡る戦いは巻を追うごとに激化していきます。
- 著者
- 桑原 水菜
- 出版日
- 2006-03-31
シリーズに渡って様々な伏線が張り巡らされ、謎が謎をよんでいきます。どの伏線が今後のストーリーにどう繋がっていくのかも見所のひとつ。また巻を追うごとに新しいキャラクターが次々と現れますが、そのどれもが美形キャラ。女性ならばどのキャラをお気に入りにするか迷ってしまうかも知れません。
アクションも満載で、圧巻の戦闘シーンが随所で繰り広げられます。謎の転校生が敵になったり、主人公に想いを寄せる女性が登場したりするなどの王道展開も見逃せません。先の読めないストーリー展開に、夢中になって読み進めてしまうはずです。また、桑原水菜の本作は北欧神話をベースに据え、ナチスドイツ・エジプト・ギリシャ・アステカ・バビロニアなど、様々な古代文明のエッセンスを取り入れたサスペンスファンタジーになっています。