様々な種類のSF作品を紡ぐ小川一水。SFファンのみならず、SF初心者にとっても読みやすい作品も多くあります。軽めのSF作品から本格SF作品、時には壮大な物語を紡ぐSF作品など、数ある作品の中から満遍なくご紹介します。

『導きの星』は、シンプルにいえば、地球外生命体を進化させるSF小説です。そして、地球そのものの未来を語る、未来小説でもあります。時間感覚も空間感覚も真に宇宙的なスケールであり、どこを切っても魅力に溢れています。
司は地球・外文明支援省からオセアノ星に派遣されたCO(シビリゼーション・オブザーバー・外文明監察官)です。「地球」人類が地球外の知的生命体を求めて宇宙中に派遣されたうちのひとりになります。彼のミッションは知的生命体の萌芽を探し求め、その進化を「適切」に支援していくものです。アシスタントとして、極めて人間の感情に近い知性を持つ人工知性「パーパソイド(目的人格)」を従えています。
進化を支援するわけですので、時間感覚は通常の人類の一生を大きく超え、時を超える睡眠を活用し数百年におよぶのです。この時間スケールはよくあるSF小説を大きく超えています。見守る対象の知的生命体は世代を重ねていきますが、COは寿命を延ばしながら一生をかけて担当の星を見守ります。
- 著者
- 小川 一水
- 出版日
- 2002-01-01
『導きの星』のもう一つの特徴は地球人類史の振り返りです。司たちは育成対象生物を進化させるため、宇宙船から俯瞰してオセアノを見守ります。ところどころで気になるトラブルが発生し、司たちはおりをみて地上に降り立つのです。オセアノの進化は地球人類史そのものであり、ステップアップしながら現在のステージに到達したプロセスがよくわかります。司たちはそのプロセスを意図的に進めていき、物語は進んでいくのです。
本書では、細部にも丁寧なこだわりをみせています。進化に伴う代々のオセアノ人の風俗や暮らしぶりの変遷、オセアノ人の風貌、体格に応じたスラングや格言は小川一水の本書に対するこだわりを感じます。また物語の展開は単に地球外生命の育成物語にとどまらず、地球や人類の未来についての鋭い考察を示しています。人類は本当にこのまま拡大再生産を続けていくのでしょうか?宇宙を目指して広がり続けるのでしょうか?
本書『導きの星』を読んで、たまには遠い宇宙や未来の地球のことに思いを巡らすのもよいかもしれません。
SF作品に触れたことがない読者や苦手意識のある読者にとっては、それぞれ独立した短編が収められていることでハードルは、ぐっと低くなります。そのため、入門書として手に取るには最適な作品といえます。もちろん、コアなファンにとっても様々なタイプの作品を楽しむことができる上、本格SF作品も収録されている短編集なので、楽しめるはずです。
- 著者
- 小川 一水
- 出版日
- 2011-03-10
国が主体のプロジェクトではなく、民間企業が取り組む計画ということもあり、数々の問題が浮上します。ひとつひとつの問題を乗り越えていく様は泥臭く、ドキュメンタリーを見ているような感覚になるのではないでしょうか。浮上する問題以外にも、月面基地建設の工程が丁寧に描かれています。近未来SFでありながら、リアルに感じ、現実でも起こり得るのではないかと錯覚するほど丁寧な描写です。
- 著者
- 小川 一水
- 出版日
どれも生きることについて考えさせられる作品が収録されています。特異な背景でありながら、読んでいるうちに自然と理解できる世界観。そして、そんな世界の中で他者と交流をしようともがくそれぞれの主人公。全く異なる物語でありながら、どこか共通したテーマを有しているように感じます。
- 著者
- 小川 一水
- 出版日
- 2005-08-09
歴史改変がテーマの今作品。敵を倒すごとに未来が変わっていくわけではなく、未来の選択肢が増えていくことがポイントです。メッセンジャーたちの戦いの目的は人類の存続でありながら、人類が滅ぶ未来を黙認することとなります。そして、過去に送られる前の元いた未来に戻ることが叶わないメッセンジャーたちの一方通行の旅は、未来で親交のあった人物たちとの離縁でもあります。そのために生まれるオーヴィルの苦しみが物語の根底に流れています。
- 著者
- 小川 一水
- 出版日
全10巻の予定で刊行中の超長編SF小説です。分冊された巻もあるため、巻数と刊行された冊数は一致しないため、ご注意ください。2017年4月現在、第9巻まで合計14冊刊行されています。
- 著者
- 小川 一水
- 出版日
- 2009-09-30
小川一水の著作には、魅力的な作品が多くありますが、今回はおすすめベスト5を紹介しました。初心者にとってもSF作品のファンにとっても楽しめる作品ではないでしょうか。ぜひ、手に取ってみてください。