子供に作ったお手製の絵本がきっかけで絵本作家になったせなけいこ
1932年、東京。せなけいこは5人兄弟の長女として生まれます。絵を描くこと、本を読むことが大好きだったせなは、幼少期に本棚にあった父親の本に絵を描いてしまい、母親にひどく叱られるという、なんとも憎めない苦い経験の持ち主でもありました。
そんなせなの1番の宝物は、父にせがんで何度も何度も読んでもらった武井武雄の『おもちゃ箱』という絵本でした。のちに、武井と運命的な出会いを果たしたせなは、社会人として働く傍ら、武井の門下生となります。せなけいこ、19歳の時でした。
厳しい武井の指導のもと、せなは貼り絵の魅力と出会います。貼り絵によって自分の世界観がこれまで以上に出せることを知ったせなは、自分の息子の為に‟お手製”の絵本を作ります。それはにんじん嫌いの息子に向けて作られた『にんじん』というタイトルの絵本でした。
この絵本が編集者でもある知人の目にとまり、ある日「何冊か描いてみませんか?」と声がかかります。絵本作家せなけいこの誕生の瞬間でした。絵本作家になりたいと、ひたすら絵と向き合って18年目の出来事でした。
せなけいこの作品と言えば、このおばけが人気!
インパクトある真っ黒い表紙に、ギョロリと光った大きな目、こちらをあざ笑うかのような赤い口、血の気のない真っ白い体。せな作品の中でも読者を最も釘付けにしてしまうキャラクターが、この‟おばけ”ではないでしょうか。
一見、可愛らしくも見えるこのおばけですが、実は子供が読む絵本のわりにはラストが不明瞭で
‟えっ……?”と思った次の瞬間、背筋がゾワゾワッと寒くなってしまう内容なんです。
それにしても子供っておばけを怖がるのに、どうして興味をもつのでしょう……?せな自身もおばけに‟会いたい!”と言うほどおばけが大好きで、もともとは怖がりの息子に‟怖い、でも可愛い”と、そんな友達になれるようなおばけを描いたら喜ぶだろうかと思いついて出来たのがこのおばけなんです。
- 著者
- せな けいこ
- 出版日
- 1969-11-20
とけいが なります ボン ボン ボン……
こんな じかんに おきてるのは だれだ?
ふくろうに みみずく
くろねこ どらねこ (『ねないこ だれだ』より引用)
『ねないこだれだ』の文章はかなり簡潔で、これから一体なにが起きるのか、読者をグイグイと引き込んでいきます。色使いも、せな作品の中では暗く落ち着いたトーンのページが多く、それは‟夜”を表しているからなんでしょうが、大人が読んでも心理的に何か迫ってくるものを感じます。
怖いのに興味をもってしまう、そんなおばけに対する子供の心理に目をつけたせなけいこの傑作です。
大人もつい夢中になってしまう、せなけいこの絵本
‟てんぷら”は身近な食べ物で、小さな子供からお年寄りまで好まれるお料理ではないでしょうか。
さつまいもやかぼちゃ、お魚のてんぷらも最高ですよね。‟ん?なんだろ、これ……?”絵本のタイトルを読まれて戸惑われた方も多いのではないでしょうか。
『おばけのてんぷら』は、せなワールドの中でもユーモア感たっぷりの作品です。‟おばけって、あのおばけ?”、‟おばけをてんぷらにしちゃうの?”、考えれば考えるほど想像力がふくらみます。うさぎのうさこがてんぷらを作ろうとしたいきさつや、てんぷらを作っていく工程が細かく描かれていて、クスッと笑えます。
てんぷらを揚げる音、そしててんぷらのいい匂い。読んでいる私達もてんぷらを作りたくなる気持ちにさせられます。
- 著者
- せな けいこ
- 出版日
また、このうさこのキャラクターが‟超”がつくほどマイペースで、クスッと笑ってしまうポイントのひとつだと思います。てんぷらを作るのに材料を買うのですが、お小遣いをすべて使ってしまいます。それでも「まあ いいや。」とまったく気にしない様子。うさこの頭の中はもうてんぷらを作ることだけなのです。
てんぷらのいい匂いに誘われて、山から下りてきたおばけがうさこの家に忍び込みます(この忍び込み方も必見です!)。おばけはうさこに見つからないようにちょろちょろ飛び回っててんぷらをつまみ食いするのですが、うさこはまったく気がつきません。気がつかないどころか「てんぷらって ずいぶん なくなるのが はやいなぁ!」なんて呑気なことまで言っています。
さて、この結末はどうなるのでしょうか?おばけはうさこにてんぷらにされてしまうのでしょうか?うさこはおばけの存在に気づくことが出来るのでしょうか?奇想天外、でもほんわかした気持ちになれる絵本です。