芥川賞受賞作品『僕って何』や『いちご同盟』で知られる三田誠広の作品からおすすめ作品を5冊選んでご紹介します。若者の心の動きを追いながら、自分の内面に目を向けてみる時間なんていかがでしょうか。

この作品を読むとまず、三田誠広自身も身を置いた学生運動の激しさに驚かれると思います。文の調子は淡々として穏やかなのですが、学生たちの行動が過激で、向こう見ずなエネルギーが充満しています。例えば次のような調子です。
- 著者
- 三田 誠広
- 出版日
- 2008-09-04
軽快な会話が多く、ユーモア溢れる作品。読み始めたら一気に最後まで読みたくなるほど、テンポの良さが光ります。就職活動において未来を模索する女子の苦悩には、共感する部分が多いと思います。一例を挙げると、次のような亜紀の問いかけです。
- 著者
- 三田 誠広
- 出版日
みなさんは、「十牛図」をご存知でしょうか?中国の宋朝時代に作られた「禅」の教科書で、10枚の牛の絵と短い解説文から成り立っています。
- 著者
- 三田 誠広
- 出版日
中学生の北沢良一がある日いつものように学校の音楽室でピアノを弾いていると、突然現れた野球部のエース羽根木徹也から自分の野球の試合をビデオに撮ってくれと頼まれます。今まで口もきいたことがなかった徹也の申し出を、北沢は音楽のレッスンを口実に最初は断るのですが、「人の命がかかっている」という徹也の言葉が気にかかり引き受けることにしました。徹也は高校からスカウトされるほどの選手で学校では知らない者のいない有名人だったので、きっとプライドの高い嫌な奴だろうと勝手に想像していた北沢でしたが、初めて言葉を交わした徹也に好感を持ちます。
約束通り野球の試合を録画した北沢は、徹也からそのテープをもって病院に来るように言われ、そこで入院している直美という徹也の幼馴染の少女を紹介されます。徹也は直美に自分が野球をしている姿を見せたかったのでした。
直美は病魔に蝕まれすでに片足を切除されていましたが、弱々しさを感じさせず傲慢ですらあり、初対面から北沢を挑発するような言葉を投げつけてきます。北沢はそんな直美に戸惑いつつも惹かれていき、直美も北沢に特別な感情を示すようになるのです。しかし北沢は徹也の直美への気持ちを知っているため病院から遠ざかるようにするのですが、徹也は北沢にもっと直美に会いに行くよう頼むのでした。
- 著者
- 三田 誠広
- 出版日
- 1991-10-18
北沢の母は自宅でピアノ教師をしているのですが息子には教えようとせず、知人の教室に通わせています。北沢はそんな母に音楽高校に進学したいことを言い出せずにいました。母は最低限の家事をこなした後は生徒の指導にかかりきり、有名中学に進学した弟は勉強のため部屋にこもりきり、父は一家の稼ぎ手の地位を母に奪われたことから存在感をなくし、北沢の家族はいつの間にか会話することがほとんどなくなっていたのです。
それまでの北沢は、男子中学生が飛び降り自殺をしたという団地に行ってみたり、若くして自殺した作家の著書を選んで読んだりするような少年で、漠然と死というものに引き寄せられていました。ピアノを学びながらも本気で音楽学校に進みたいのか普通の高校に行くための受験勉強が嫌なのか、自分でも曖昧な状態で母への反発心を募らせていましたが、死に直面しながら毎日を生きている直美と接した事により北沢の中の何かが変わりはじめます。
直美の状態は悪化の一途をたどりますが、それでも直美の眼光は輝きを失わず真っ直ぐに力強く北沢を見つめるのでした。
15歳の北沢と徹也は、同じ歳で死んでしまう直美のために1つの約束を交わします。それはやがて別れてゆく少年たちの人生の共通の指針となり、支えとなるものでした。
少年たちの純粋な心の葛藤と決意が、切なくも清々しく心に残ります。
『春のソナタ』という優しい響きのイメージとは異なり、なかなかドラマチックで濃厚な展開が待ち受けています。そんな筋書きにも劣らない魅力が、随所に散りばめられた様々な音楽の描写です。音楽というのは、表現の仕方が特に難しいものだと思いますが、三田誠広は見事に描いています。例えば、直樹がバイオリンを弾く場面。
- 著者
- 三田 誠広
- 出版日