水上勉は福井県出身の直木賞作家です。社会派と呼ばれ人間を描き続けた作家で、その文章は真に迫ります。魅力は苦労人でもある彼の生み出す独特の雰囲気。常に対象と向き合い、じっくりと本質を描きだす筆致は多くの人を魅了しています。

「越前竹人形」も映画やドラマで好評を博した小説です。
- 著者
- 水上 勉
- 出版日
- 1969-03-24
水上勉の書く社会派推理小説の最高傑作であるこの作品は、社会の問題に鋭く切り込んでいます。貧困の為、娼婦になるしかなかった女性や食べる物に困る民、服役後社会復帰できない受刑者たち。そんな社会的弱者たちに寄り添い、励ます水上勉の声が聞こえてくるような筆致が魅力的です。
- 著者
- 水上 勉
- 出版日
- 1990-04-08
実は一休の生きた時代は武家が力を持ち始め、あちこちで農民一揆が起きるという動乱の時代なんです。この世の地獄で一休の選んだ生き様は確固たる信念に覆われ、読み手を圧倒するでしょう。
- 著者
- 水上 勉
- 出版日
なぜ一人の坊主が寺に火を放つようなことをしたのか。水上勉は犯人の人生を丁寧に描くことで温かく思いやりながら紐解いていくのですが、その中で犯人の養賢とその母の墓を探し、最後には見つけます。そして犯人の人生に寄り添うかのように以下の一文を記しているのです。
- 著者
- 水上 勉
- 出版日
- 1986-02-27
淡々と綴られているようで実は水上勉の人間への大きな愛情が込められた人間賛歌のように思います。
- 著者
- 水上 勉
- 出版日
- 1976-05-04
少年時代、京都の禅寺にて養育されていたという著者。その時教え込まれた精進料理の数々は、読み手の側も思わず涎を垂らしそうになる一品ばかりです。
小かぶらの山椒味噌かけ、うどのあえもの、しめじ飯。土を喰う、というタイトルにもある通り、作中で紹介される料理はどれも大地の作物を調理したものばかりで、肉や魚の類、いわゆる生臭いものは一切使用されていません。丁寧に作りこまれているからこそ、素材に一切妥協を許さないというわけです。
それでいてタンパク質等の栄養源もしっかり確保できているところは、まさに昔からの積み重ねの賜物であり、工夫の勝利であると言えるでしょう。
また、個々の料理にまつわるエピソードも本作における見どころの一つです。例えば高野豆腐のエピソードでは、水上宅を訪れたイギリス人客に振舞ってみたところ、当のイギリス人がスープと勘違いして最後まで譲らなかった、というくだりがあります。
普段何気なく食べている料理でも、外国人の目から見ると思わぬものに見えている。なぜ高野豆腐をスープと勘違いしたのかはさておき、こうしたやり取りも本作を読み進めて行く上で見逃せないところです。
- 著者
- 水上 勉
- 出版日
- 1982-08-27
現代社会において、精進料理は独特の立場にある料理です。ファストフード、コンビニ弁当のような手軽さはなく、一流レストランや高級料亭の三ツ星料理のような高級感とも縁遠い。一般家庭で実演するにはあまりに手間がかかり、現代の飽食に慣れ切った人ほど異質に思える。そんな料理です。
ですが、そうした今だからこそ口にしてみる価値があるのではないでしょうか。「土を喰らう」ことで日々生きる糧を成し、数百年の時を重ねてなお絶えることなく積み重ねられてきた精進料理。
是非、この『土を喰う日々』を読んでその片鱗に触れてみて下さい。
水上勉の文章は人々を慈しむ心がたくさん詰まっています。苦難に満ちた人生を送った彼だからこそ持つことができた優しさがそうさせるのだと思います。美しく綴られた言葉から彼の見た人の生き方をのぞいてみませんか。