酒井駒子が描く短編が収録された絵本『金曜日の砂糖ちゃん』
こちらは酒井駒子の短編3つの物語が収録された絵本です。どのお話も、大人が知らない子供だけの時間を題材にしたストーリーになっています。
表題作の「金曜日の砂糖ちゃん」は、草原で眠る女の子と周りに集まる鳥や昆虫を題材にした物語。「あたたかい 気持ちのよい 午後です。」という冒頭の語りかけは、大人でもとろけるように眠くなる昼下がりに、誰にも邪魔されずに野原で寝ている砂糖ちゃんの姿が描かれています。
- 著者
- 酒井 駒子
- 出版日
2つ目の「草のオルガン」は、大人が入らないような草むらに入っていく男の子と昆虫、カラスの静かなひと時の物語です。
子供の頃、立ち入り禁止の場所に入って大人から注意されたことはありませんか?その場所は子供にとっては特別で、大人にはガラクタにしか見えないものが輝いて見えることもありますよね。
1つ目の「金曜日の砂糖ちゃん」、2つ目の「草のオルガン」は、子供だけの世界から大人によって現実の世界へと戻されるお話ですが、3つ目の「夜と夜のあいだに」の結末だけは異なります。
「夜と夜のあいだに」は、大人が寝静まってからお母さんのキャミソールを引っ張り出し、触ってはいけない鏡台で髪をとかす女の子が主人公。もしかしたら、小さい頃に同じようなことをしていた記憶はあるのではないでしょうか?
そんな小さい子らしい、ある意味かわいい行動で始まる物語ですが、最後は少女が鳥かごを開ける絵と家の扉を開ける絵があり、「それきりもどってこないのでした。」と読者を不安にさせるような文章が書かれています。出て行ったのは果たして鳥なのか女の子なのか、彼らはどうなってしまったのでしょうか。
ぜひ、酒井駒子の独特の挿絵とともにラストを想像していただきたい物語です。
子ども時代を思い出される、酒井駒子の絵本『BとIとRとD』
酒井駒子の『BとIとRとD』は、小さい頃の自分の姿を思い出させてくれるような8章からなる物語で、ストーリーは、□ちゃんという女の子を中心に展開していきます。
図書館で「シィ―」とする□ちゃんの姿や、母親に指しゃぶりを止めるよう言葉で脅されてしまう□ちゃん。もしかしたら子供の頃の自分と重なる□ちゃんの姿もあるかもしれません。
- 著者
- 酒井 駒子
- 出版日
酒井駒子が描く『BとIとRとD』は、小さな女の子を主人公にしていますが、文章にはルビが使用されておらず、大人向けの絵本と感じることでしょう。
子供の世界と大人の世界にリンクする小さな自分。時には背伸びをしてみたかったり、なんとなく不安な気持ちになったり……。酒井駒子の絵は、そういう子供の微妙な表情も上手く表現しています。
この本は装丁にもこだわっており、著者のイラストが好きな方にはコレクション本としてもおすすめですよ。
子供には大人のさりげない言葉が響く『マルの背中』
「一緒に死のう。」
夏のある日、お母さんからそう言われた亜澄は、逃げた先の公園の木の陰から自分の住むアパートをじっと見ていますが、お母さんが追いかけてくる気配がないと感じると、駄菓子屋で飼われている猫のマルに会いに行きます。マルの背中には、丸い模様があり撫でると願いがかなうと言われていました。
マルに会い行っただけだったのに、駄菓子屋のおじさんから突然マルを預かることになる亜澄ですが……。
- 著者
- ["岩瀬 成子", "酒井 駒子"]
- 出版日
- 2016-09-15
酒井駒子が描く女の子と猫のマルの挿絵は、どこか寂しそうではかなげな雰囲気を感じます。ほとんど鳴かないマルと亜澄の物語は、静かに息をするように進んでいくのです。
日中、1人で過ごす亜澄の耳には、母親が一緒に父親の元から連れ出さなかった弟の声が時々聞こえてきます。彼女のお母さんが言った「一緒に死のう。」という言葉と相まって、弟も生きているのかどうか、読んでいると心配になり、どんどん読み進めたくなる物語です。
彼女が「変なおじさん」と呼び、マルを預けた駄菓子屋のおじさんは帰って来るのか?小学3年生の亜澄を取り巻く大人たちの人間模様も伏線として織り込まれています。
また物語の中には大人がたくさん出てきますが、マルを預かることを条件に駄菓子をたくさんもらった亜澄が子供らしい行動を取る可愛い一面もあり、展開が気になる物語の中で時々ほっとさせてくれるでしょう。
ジュニア向けの小説として岩瀬成子がストーリーを書き、酒井が挿絵を担当した絵本ですが、大人でも読んでいるうちにどっぷりとはまってしまう物語となっているのでおすすめですよ。