千早茜は、2008年に小説すばる新人賞を受賞してデビューした先進気鋭の女流作家。2009年に泉鏡花文学賞、2013年に島清恋愛文学賞を受賞するなど、その実力は高く評価されています。そんな彼女の感性が光る6作をご紹介します!

管狐を持っているという初老の男性と美術館に勤める女性との不思議な交流を描いた「春の狐憑き」、過去の女を忘れられない男が裸足の女と桜の下での出会う「白い破片」、成長を恐れる少女が花屋の女性に背中を押してもらう「初花」、死別した前妻を持つ夫が自分を前妻のように変えさせようとしていることに気づく「エクリシール」、4人の男性に貢がせていた女性を調べる捜査官と初老の男性の甘党話「花荒れ」、大学の資料館で働く青年が青い桜吹雪の刺青を探す女性と出会う「背中」、亡くなった祖母の家の庭に幽霊を見るようになったイラストレーターとカメラマンの話「樺の秘色」、『桜の首飾り』はそんな7編がまとめられています。
- 著者
- 千早 茜
- 出版日
- 2015-01-31
幼い頃からケーキ職人に憧れ続けてきた亜樹が作る西洋菓子は、お酒がきつかったり、馴染みのないフルーツを使ったりと独創的。そんなクセの強さは、自分を曲げない亜樹本人を表しているかのようです。このように登場人物それぞれのキャラクターが立っているのも、この作品の魅力。そのまま映像化できてしまいそうです。
- 著者
- 千早 茜
- 出版日
- 2016-02-12
「たとえ明日、世界が終わるとしても魚も人もきっと恋をするもの。惹かれた相手と一秒でも長く一緒にいたいと願うはずだよ。それは何かを遺したいからなんかじゃなくて、生き物として当たり前の想いだから。」(「ねいろ」から引用)
- 著者
- 千早 茜
- 出版日
- 2016-01-28
2人が年頃になると、スケキヨはその美貌に目をつけられ悪評高い裏華街へ、伝説の遊女と同じ名前を持つ白亜も遊郭へ売られていきます。それぞれの世界でしたたかに生き抜く2人。お互いの気配を感じても目をそらし、それでも相手を求める気持ちを手放せない2人が近づいてしまった時、物語は急展開を迎えていきます。
- 著者
- 千早 茜
- 出版日
- 2012-01-20
各話で主役が変わりそれぞれの日常が語られるのですが、その主役は前の話では脇役として登場する人物。今どきの軽い子、という印象だった女性が内心では悩みを抱えていたり、何を考えているかわからないと言われる少年が起こした事件の真実が後の話でわかったりと、短編としても、全話通しても楽しめる一作になっています。
- 著者
- 千早 茜
- 出版日
- 2014-01-25
神名はもうすぐ30歳になるフリーの女性イラストレーターです。自費出版した絵本で外国の賞を取るなど着々とキャリアを積んでいますが未だ知名度は低く、雑誌の星占いのイラストを描くなど不本意な仕事をして収入を得ています。
同棲している恋人の彰人は普通のサラリーマンのため徹夜で仕事をして朝に寝ている神名とは生活のリズムが合わず、同じ家に暮らしているのに顔すら見ない日もあるのですが、彰人は神名を批判したり束縛したりすることはありません。そんな彰人に感謝しつつも神名には真司という愛人がいます。妻子ある医者の真司はプライドが高く気分屋なところがありますが、優しい彰人よりも我儘な自分に似ている真司の方が神名にとって刺激的で、仕事の合間に真司からの誘いに応じて肉体関係を持っていました。
ある朝突然、ハセオという大学時代の友人から連絡が来ます。ハセオは神名にとって甘えられる存在であり気の合う相手でしたが恋愛関係になったことはなく、複数の男性と気軽に肉体関係を持ってきた神名にとって稀な存在でした。学生時代は毎日のように一緒にいたのになぜか大学卒業を機に音信不通だったハセオは、医療関係の会社に勤めていて多忙だと言う割には頻繁に神名を誘い出します。学生時代と全く変わらないハセオの接し方に神名は彼を「男ともだち」と位置付けるのですが、ハセオの存在はそれまでの神名の生活や精神に次第に影響を及ぼし始めるのでした。
- 著者
- 千早 茜
- 出版日
- 2017-03-10
ハセオに魅かれていく神名は、男女の関係になった途端それまでの居心地の良い関係が失われてしまうのではないかと怖れます。そんな中、些細な言い合いが発端で神名を殴ってしまった彰人は神名から去り、心のバランスが崩れ始めた神名は今まで以上に真司との関係を求めるようになり、真司に誘われて行った医療関係のイベントで、2人はハセオと鉢合わせるのでした。
本作は神名の目線のみで描かれ、他の登場人物の心情を知ることはできません。そして神名の目はもっぱら自分に向かっているので、優しく見守ってくれていると思っていた彰人が実はずっと前から神名を見ないようにしていたことに気付かず、心通じ合うと思っていたハセオの過去を何も知らされていない事にも気付かずにいたのです。
物語の最後に神名は仕事にもハセオとの関係についても決断を下します。自分は何を求めているのか、人は何を求めて自分と関わってくるのか、勇気を持って自分自身を見つめ直し相手の事も見つめなければ、本当に大切なものを見落とし失っていくのです。
いかがでしたか?千早茜は、幻想的な架空の世界の物語から、登場人物が身近に感じるものまで幅広いジャンルを手掛けています。豊富な知識量と巧みな描写は、彼女の経歴に基づくものが多く説得力があります。一作でも読んでしまえば、もう一作読んでみたい!と思ってしまう中毒性も持っているので、ぜひ気になる一冊を手に取ってみてください。