書店員が選ぶ文芸賞・本屋大賞は多くの人に親しまれる賞です。そんな賞にノミネートされた本なら読んでみたいけど、ハードカバーは場所を取ると思ったことはありませんか?今回は、本屋大賞に選ばれた作品の中でも文庫化されているものをご紹介します。

2004年に読売文学賞、そして第1回本屋大賞を受賞した作品です。新しい記憶が80分しか持たない博士と、家政婦である私、そして10歳の息子を中心に、人と人との触れ合いを静かに丁寧に描いた温かい物語です。
- 著者
- 小川 洋子
- 出版日
- 2005-11-26
2003年に週刊文春ミステリーベストテン第1位、2004年に第1回本屋大賞第2位にランクインしました。1985年、御巣鷹山に墜落、乗員乗客合わせて520名もの死者を出した日本航空123便墜落事故を題材にしており、作者自身の12年間の記者としての勤務が十二分に活かされた物語になっています。
- 著者
- 横山 秀夫
- 出版日
第2回本屋大賞を受賞した作品で、他にも第26回吉川英治文学新人賞なども受賞しています。作中のメイン舞台となる「歩行祭」は、作者の母校の70kmの道のりを歩く「歩く会」という行事がモデルになっているということで、作者の体験から生まれる描写はリアルです。
- 著者
- 恩田 陸
- 出版日
- 2006-09-07
第3回本屋大賞で第8位にランクインした作品です。この作品の特徴はもちろん、犬が主人公であること。犬の運命や一生を追いかけながらそれぞれの時代を丹念に描いていく展開は、新鮮であまり読んだことがないような感覚に捉われるでしょう。
- 著者
- 古川 日出男
- 出版日
- 2008-05-09
2007年に第4回本屋大賞、同時に吉川英治文学新人賞も受賞した作品で、コミカライズやドラマ化もされた人気作です。全部で3巻あり、それぞれ第一部は「イチニツイテ」、第二部は「ヨウイ」、第三部は「ドン」と副題が付けられています。
- 著者
- 佐藤 多佳子
- 出版日
- 2009-07-15
2006年に出版されて以来、第20回山本周五郎賞受賞、第137回直木賞ノミネート、そして2007年に第4回本屋大賞で第2位にランクインしたベストセラー小説です。黒髪の乙女に片想いしている先輩は、乙女を追いかけていくうちに不思議な出来事に巻き込まれていきます。ファンタジー要素もたくさん詰め込まれた、幻想的な恋愛ファンタジー小説になっています。
- 著者
- 森見 登美彦
- 出版日
- 2008-12-25
2007年にコミカライズやラジオドラマ化され、同年に第4回本屋大賞で第3位にランクインしました。他にも2009年には舞台化、映画化もされており、幅広い世代に人気のある作品です。
- 著者
- 三浦 しをん
- 出版日
- 2009-06-27
2007年に発表された後、2008年に第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞を受賞、2009年には「このミステリーがすごい!」で第1位を獲得しました。映画化や舞台化もされており、非常に人気の高い作品です。
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2010-11-26
第10回大藪春彦賞、第61回日本推理作家協会賞長編及び連作短編編集部門ノミネート、そして第5回本屋大賞では第2位に選ばれました。
- 著者
- 近藤 史恵
- 出版日
- 2010-01-28
「私はこの子を知っている。そしてこの子も私を知っている」
生活感を感じさせるあたたかな室内、どこか神々しく光を浴びたベビーベッドに赤ん坊が泣いています。希和子が赤ん坊を抱き上げると、その子は涙でまつ毛を濡らしながら彼女に笑いかけます。すでにこの0章だけで全てを物語っているくらい、このシーンはあたたかく、生きる力と母性が溢れています。
- 著者
- 角田 光代
- 出版日
第5回本屋大賞で6位にランクインした作品。1章は不倫相手の子供を誘拐した希和子の目線で描かれます。不倫、誘拐、逃亡と重いテーマなのに全体に愛する喜びが漂っていて、どこか優しい。親としての愛が尽きることなく溢れているように感じられます。とはいえ常識や人の目は当たり前につきまとい、その愛にだけ浸っていられない。
そして2章はその事件ゆえに変わってしまった家族、周囲の目、どこか固く不器用な、希和子に誘拐された子供の薫を描きます。人生を勝手に変えられてしまったことへの怒りと得体の知れない行動をとった女への嫌悪感。しかし、薫自身も不倫相手の子をみごもり…。
強く、優しく生きようとする母としての性、許されないことをした女の性、揺れ動く心情を描ききっています。すべての様子が生々しい「女らしさ」を感じさせる名作です。
2006年、書き下ろし作品として発表されて以来、第60回日本推理作家協会賞、第28回吉川英治文学新人賞、2007年には直木賞にノミネート、そして2008年の第5回本屋大賞で7位を受賞するなど、数々の賞を総なめにしてきた小説です。
- 著者
- 桜庭 一樹
- 出版日
- 2010-09-18
2007年に第137回直木賞、2008年に第5回本屋大賞にノミネートされ、後にドラマ化もされた人気作です。
- 著者
- 万城目 学
- 出版日
2008年に第29回日本SF大賞、2009年に第6回本屋大賞で第6位を受賞しました。アニメ化や漫画化もされており、特に若い世代からの人気が高い作品です。SF大賞も受賞しているSF小説ですが、ダークファンタジーやミステリーの要素も多く、文庫版で上・中・下とある長編ですが、最後まで飽きることがありません。
- 著者
- 貴志 祐介
- 出版日
- 2011-01-14
第35回大佛次郎賞を受賞、2009年に第6回本屋大賞で第7位を獲得した作品です。日本史の中でも最大規模と言われる島原の乱が、どのようにして起き終結していったのか、そして一揆の支えとなったキリスト教がどんなものであったか、重厚な歴史小説として描かれています。
- 著者
- 飯嶋 和一
- 出版日
- 2013-02-06
2008年から2009年まで毎日新聞で連載された新聞小説で、2010年には柴田錬三郎賞を受賞、そして第7回本屋大賞で第3位にランクインしました。
- 著者
- 吉田 修一
- 出版日
- 2012-11-09
老朽化した日本家屋で静かに暮らす蓮実聖司は、東京都町田市にある私立高校の英語教師。ハスミンという愛称で親しまれる彼は、有能な教師として一目置かれる人気者でした。しかし彼には、「都合の悪い人間は抹殺する」という恐ろしい裏の顔が。学園は次第に彼の闇に侵され始め……。
- 著者
- 貴志 祐介
- 出版日
- 2012-08-03
第8回本屋大賞7位にランクイン。物語の舞台となる町田高校の教員は皆、学校裏サイトや集団カンニング、モンスターペアレントなど、数々の問題に頭を抱えていました。そんな教員を鼓舞し打開策を提案するのは、人気教師「ハスミン」こと蓮実聖司でした。
しかしその打開策は、緻密で冷酷な「殺戮計画」の数々によって実現していたのです。邪魔だと判断した者には容赦なく、社会的抹殺や命を奪うという手段を選びます。
激しやすく脆い年頃の高校生をいとも簡単に操り、自身を慕う生徒でさえ「利用する」蓮実。そして学園内にはびこる諸悪の陰に見え隠れするのは、それを取り巻く人間の心の闇と薄汚れた現実。蓮実はそれを見逃さず、「悪の制裁」を躊躇うことなく下していくのです。
『悪の教典』は上下巻2冊で構成されており、上巻では蓮実自身と周りの人間模様、そして蓮実の過去がちらほらと登場しています。「この蓮実という男、まともな奴じゃないな」漠然とそんな思いを抱かせるような、不気味さが物語全体に漂っています。さらに下巻へと読み進めると、漠然と抱いていた思いが確信に変わります。衝撃のストーリー展開から目が離せません。
蓮実の異常な精神は読めば読むほどに露見していきますが、この物語の見所は、教育現場の暗黒面への鋭い問題定義が含まれているという点です。単に「人の命が簡単に奪われていくだけの物語ではない」という所に、貴志祐介の静かでありながら迫力のある文体が生きてくるのです。「悪の教典」は厳密に言うとホラーではありませんが、えも言われぬ恐怖と絶望の描写は、ホラーに勝るとも劣りません。
上巻で登場する諸問題は、一見すると何の関連性も無いように思えますが、物語が進むにつれて恐怖の伏線を描き始めます。教育現場の闇と、人の心に棲みつく悪と懐疑心。そこに君臨する蓮実聖司というサイコキラーを、最後に待ち受けるものとは一体……。
石油元売会社「出光興産」の創業者・出光佐三(いでみつ・さぞう)をモデルとし、1953年(昭和28年)にイランから石油を輸入した「日章丸事件」を題材とした小説です。
第二次世界大戦では、東京をはじめとした主要都市は徹底的に破壊されて、海外資産のすべてを失った上、莫大な賠償金が課せられようとしていました。
- 著者
- 百田 尚樹
- 出版日
- 2014-07-15
第10回本屋大賞1位に輝いた作品。日本の明日はどうなるのだろうかと全員が途方に暮れている時、店員を集めて檄を飛ばしたのが、後に「海賊」とよばれた国岡商会の国岡鐡造でした。彼等を前に鐡造は吠えます。
「日本には3000年の歴史がある。戦争に負けたからと言って、大国民の誇りを失ってはならない。すべてを失おうとも、日本人がいるかぎり、この国は必ずや再び立ち上がる日が来る」
そして鐡造は「愚痴」を口にすることも禁じました。言葉は自己暗示にもつながるからです。
彼と彼の部下達が、世界中が関わる事を避けたイランに、秘密裏にタンカーを乗り入れるという奇跡を起こした裏には、社員を徹底的に信じた鐡造の、人間としてのスケールの大きさがありました。人の心がひとつになった時、奇跡は起こるという事を証明した一冊です。
ヒト不老化技術により、半永久的な生命を授かる事ができるようになった日本。しかし、それと同時に生存制限法、「百年法」という法律も制定され、100年生きた者は、強制的に安楽死する事が条件となりました。
百年間生きた者が最初の安楽死を施行されようとしている西暦2048年、この法律に対し世論が動きだします。安楽死を受け入れる者、強制される死から逃れるため身を隠す者、不老不死を拒み本来の人間としての営みを守る者、それぞれの価値観が交錯する中、人類の選択する未来とは。
- 著者
- 山田 宗樹
- 出版日
- 2015-03-25
第10回本屋大賞9位にランクインした作品。人間にとって100年というと途方もなく長い時間であり、その生活の中でリアルな死が受け入れ難くなっていくような気がします。そんな状況で強制的に施行される安楽死は、普通の死よりも過酷かもしれません。上下巻に分かれている程長い作品で、その内容は人間の根源的な欲求を表現しており、また政治的な事も絡んでくるので、話の筋を読み解くのに骨を折るかもしれませんが、その分読み応えがあります。
長い休みがある時に挑戦してみるのもおすすめな、読み応えたっぷりの作品です。
2014年、第11回本屋大賞で3位を受賞した青春小説です。舞台となる「冴島」は架空の島ですが、島の活き活きとした描写は本当にどこかにありそうな気持ちにさせられます。主人公は島の幼馴染の衣花、朱里、新、源樹の4人ですが、彼ら以外の島の人々も多数登場し、いろいろな視点から物語は紡がれていきます。
- 著者
- 辻村 深月
- 出版日
- 2016-07-15
警察学校初任科第98期短期課程に入校した生徒たちを待ち受けていたのは白髪の教官・風間公親でした……。
「教場」とは、警察学校における「クラス」のことだそうです。
半年間の過酷な訓練、授業、厳し過ぎる規律の中、不要な人材をはじきだすためにあるのが警察学校だという設定のもと、繰り広げられる長岡弘樹の連作短編集になっています。
警察学校に在籍する癖のある生徒たちが次々に事件を起こし、それを異色の教官がおさめていくという展開になっています。
- 著者
- 長岡 弘樹
- 出版日
第11回本屋大賞6位にランクインした作品。実際の警察学校についてはわかりませんが、常にぴんと張り詰めた緊張感のようなものがあり、白髪で焦点の定まらない目をしていると描写されるちょっと不気味な教官がクールに立ち回っていく姿には独特の魅力があります。
推理小説であり、警察学校を舞台にした学園小説とも受け取れる長岡弘樹の作品。おすすめです。
いかがでしたか? 本屋大賞は本の専門家である書店員が、読んでもらいたい! おもしろい! と思う小説を選ぶ賞です。作家や批評家よりも読者に近い書店員が選ぶからこそ、面白い本との出会いが生まれているのかもしれません。何か本を読んでみようと思うけど何を読もうか迷った時は、本屋大賞にノミネートされたものから選んでみるのもいいですね。