メディア化された『黄金を抱いて飛べ』や『レディ・ジョーカー』などで人気の高村薫。社会派サスペンス小説を書かせたら一級品ですが、魅力あふれる「人間」が多く登場するのも魅力の1つです。そんな彼女の多数の著書からおすすめをご紹介します。

日々の生活の中で「うまくいかない」ことがあっても、生きにくい世の中を地道に生きているという人は多くいるのではないでしょうか。本作は、細々とではあるけれど、真っ当に生きていた人間たちが、心の内側に抱える「闇」に取り込まれていく姿を、それぞれの視点からリアリティたっぷりに描き出しています。
- 著者
- 高村 薫
- 出版日
- 2010-03-29
いつの間にか社会からちょっぴりはみ出してしまった男たちの、社会に対する報復ともいえる「金塊強盗」というモチーフが秀逸です。金塊強盗、という字面だけで痛快な怪盗アクションものを想像させますが、本作の魅力は痛快ではないところにあります。むしろ、金塊強盗のシーンよりも丁寧すぎるほどに描く人間の内面や関係性、それを取り囲む風景や環境など全編を通じて漂う「人間くささ」が最大の魅力だと言っても過言ではないでしょう。
- 著者
- 高村 薫
- 出版日
- 1994-01-28
高村薫の特長として、ディティールにこだわった描写が素晴らしい点と人物の造形が巧みであるという点が挙げられると思いますが、今作もまさに魅力的な人物が登場します。
- 著者
- 高村 薫
- 出版日
- 1995-03-29
東京で不可解な死を遂げた元IRAのテロリスト、ジャック・モーガンが追い続けた「リヴィエラ」の正体をめぐって物語が展開します。その秘密のために、CIAやMI5、MI6といった諜報部員たちが暗躍し、情報戦を繰り広げながら真実へと向かっていく先の読めない展開が素晴らしいです。
- 著者
- 高村 薫
- 出版日
- 1997-06-30
難しいテーマに、手を伸ばすことを躊躇ってしまいそうですが、まずは読んでみてください。
- 著者
- 高村 薫
- 出版日
主人公の吉田一彰22歳は、あまり覇気のないイメージを受ける、アルバイトに精を出す国立大学の学生です。アルバイト先の会員制高級ナイトクラブ「ナイトゲート」で覚せい剤使用者に対する暴行事件を起こす所から物語は幕を開けます。
自ら手を出したにも関わらず、犯行に加担したという実感がないままの一彰。捜査員による取り調べの時に、子供の頃に住んでいた姫里の守山工場の工場長である守山耕三と再会。
この再会から、覚せい剤使用者、銃社会の抗争に巻き込まれ、闇社会で生きていくようになってしまいます。そこで一彰は李歐という美しい殺し屋の男に出会い、運命が大きく変わっていき……。
- 著者
- 高村 薫
- 出版日
- 1999-02-08
拳銃の密輸、殺人を簡単にこなす李歐。そんな李歐と一彰はフィリピン行きの船で別れます。二人の再会までの10年間の間に、一彰は逮捕、刑務所から出所。その後は守山工場で働き、幼馴染と結婚、子供も生まれますが、妻は爆発事件で亡くなります。色々なことがあったにも関わらず、李歐に言われた「大陸へ行こう」という言葉を忘れないままでいた一彰。
一彰、李歐、一彰の息子の耕太の3人の姿の描写が美しいラストシーンまで目が離せません。
「惚れたって言えよ」と一彰にせまる李歐。「惚れた?」という一彰。「心臓が妊娠したようだ」・「そいつは嬉しいな。ぞくそくしてきた」という二人の不思議な関係。互いの心臓に代わるがわる接吻をする二人。その感情は愛情なのか、それとも恋愛感情以上の何かを感じていたのか。
女性との関係は細かく描写があるのですが、男性との関係についてはあっさり書かれているため、登場人物たちの心のうちは想像するしかありません。想像、妄想しながら読み進めて行くと、サスペンス要素はもちろん楽しめます。
登場人物たちの恋愛小説または官能小説的な要素も含まれているので、色々な角度から読める作品になっているのではないでしょうか。
社会的な問題をテーマに、泥臭く人間臭い「人間」を描く作家、高村薫の作品には、アウトローでアングラな世界に生きる男たちがたくさん出てきます。誰もが魅力的ですので、難しい題材の物語もするりと読了できてしまい、あとの余韻をいつまでも楽しめるスルメのような作品たちばかりです。ご紹介した作品の他にもたくさんの小説があるので、お気に入りの一冊を探してみてください。