純文学の新人に与えられる芥川賞は、メディアでも大きく取り上げられます。今回は、2010年代に受賞した作品の中から、個性豊かな5つの作品をご紹介します。きっとお気に入りの作品が見つかるはずです。

この物語の下地になっているのは「アンネの日記」です。アンネ・フランクの受けていた差別と、無実の罪により追い込まれるみか子の感じる疎外感が、うまくリンクしています。
- 著者
- 赤染 晶子
- 出版日
- 2012-12-24
『きことわ』は、何か大きな事件が起きるような話ではありません。日常や思い出が、上品で流麗な文体の中で語られていきます。語りは自在に視点を変え、貴子と永遠子の経験が入れ替わり、過去と未来を行き来し、夢と現実を往来します。
- 著者
- 朝吹 真理子
- 出版日
- 2013-07-27
西村賢太の『苦役列車』は2010年下半期の芥川賞を受賞しました。2012年には山下敦弘監督、森山未來主演で映画化もされています。西村は、テレビで出てくるひょうきんなおじさんという印象があるかもしれませんが、実は自分の経験をもとにして書いた私小説の名手として有名なのです。
- 著者
- 西村 賢太
- 出版日
- 2012-04-19
『苦役列車』も、西村の実体験がもとになっているとされています。崩壊した家庭で育った北町貫太は、日雇労働をしてその場しのぎで生きていきます。しかも稼いだお金は酒と風俗に消えていくという、清々しいほどの「クズ」っぷり。そんな中で生まれた友情や恋心(というより下心)も、貫太の暴言などで瓦解していきます。そんな中、読書や小説の執筆に目覚める貫太。川端康成賞の受賞に期待を寄せますが、その夢もかないません。
最初は「貫太はクズだなぁ」と距離感を持って読んでいるのですが、いつの間にか貫太を笑える状況ではないことに気づかされます。ひょんなことから崩れ去る友情関係、一瞬で堕落する生活。いつ自分が貫太の立場になるか分からないと考えると、非常に緊迫感が身に迫ってきます。そうした中で、個人を「クズ」の世界へと貶める不条理なものとどう接していいのか、考えさせられる作品となっています。
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芥川賞を受賞した作品の中で、こんなに筋を捉えにくい作品もなかなかないでしょう。許す限り飛行機に乗って「蝶」を集め続けるエイブラムスと謎の多い多言語作家・友幸友幸(誤植ではありません)が、奇妙に連関しながら話は進んでいきます。何が現実で何が虚構なのか、読めば読むほどに分からなくなっていきます。まるでクラインの壺やメビウスの輪を小説にしたかのような印象を受けるでしょう。
- 著者
- 円城 塔
- 出版日
- 2015-01-15
『コンビニ人間』に登場する、古倉や白羽は、周りにいたらおかしい人だ、と思ってしまう人物でしょう。古倉は社会の「異物」となりかねない自分を認識しています。しかし、古倉の持つ自己肯定感と合理的な理論は、どこか不思議な説得力を帯びます。一例を紹介しましょう。
- 著者
- 村田 沙耶香
- 出版日
- 2016-07-27
さすが芥川賞受賞作ということもあって、どれも面白い本ばかりです。しかしその「面白さ」は各作品で全く違います。ぜひ実際に手にとって読んでみてください。