幽霊屋敷から浸み出す狂気『私の家では何も起こらない』
丘の上に建つ、一軒の古い屋敷。この屋敷では過去に幾度にも渡って凄惨な事件が起き、今は「幽霊屋敷」と呼ばれています。
殺し合った姉妹、自殺した少年、埋められた死体……それらはまだこの屋敷にいて、息をひそめて次の住人が来るのを待っているのです。
やがて、本物の幽霊屋敷を探す男が館を訪れます。
男はかつての住人たちの痕跡を辿り始め……。
- 著者
- 恩田 陸
- 出版日
- 2016-11-25
幽霊屋敷に入居する人々と彼らを襲う怪異の物語が、10の短編で語られる本書。
語り口は淡々としていながらどこか不思議な叙情に溢れているので、耽美な雰囲気も感じられます。懐かしさと寂しさの入り混じった文章は、ホラー小説でありながら柔らかな余韻を読み手に残します。
全ての短編が繋がり、やがてラストへと収束する、恩田陸の読ませ方にハマってしまうでしょう。ページ数も200ページ程度と軽めなので、サクサクと読み進めることができます。
ホラーが苦手な方は、人のいる電車の中や会社・学校で読むのも良いかも知れません。
そうすれば、今日も安心して我が家に帰ることができます。
そう、「私の家では何も起こらない」のだから。
ある日、学校が凍りついた―『冷たい校舎の時は止まる』
『ぼくのメジャースプーン』『凍りのクジラ』など多数のヒット作を世に送り出し、映画『ツナグ』の原作者としても知られる辻村深月のデビュー作です。
高校3年の冬、大学受験を控えた8人の生徒たちが集まった校舎。なぜか他に誰の姿も見当たらず、携帯も繋がらず、時計は5時53分で止まったまま。
やがて自分たちが校舎に閉じ込められたことを知った8人は、恐怖の中で2ヶ月前に自殺した同級生のことを思い出します。しかし、その生徒の名前だけがどうしても思い出せず……。
- 著者
- 辻村 深月
- 出版日
- 2007-08-11
閉じ込められた焦燥感、迫りくる理不尽な謎、開かない扉。自分たちを校舎に閉じ込めたのは誰なのか。自殺した生徒の名前は?どうすれば元に戻れるのか?
上下巻というボリュームの中に様々な伏線が張り巡らされ、ラストには衝撃の真実が待っています。辻村深月が描く魅力的な登場人物たちも見どころのひとつです。
SF学園ものの側面を残しながら、ミステリーとして要所要所で仕掛けられたトリック……それを心地よく感じたら、きっと一気に読み進めてしまうでしょう。
人望多き医師の裏の顔『殺人勤務医』
誰からも信頼されるあの人が、もし猟奇的な裏の顔を隠していたら……。
主人公・古河は、柔らかな物腰と端麗な容姿で周囲から人気を集める産婦人科医。しかし、彼は多くの人間を監禁・殺害する猟奇殺人鬼の顔を隠し持っていました。
幼い頃に受けた虐待が原因で歪んだ心を育ててしまった古河は、自分が許せないと感じた人間を残忍な手段で次々と殺害していきます。
- 著者
- 大石 圭
- 出版日
私刑じみた行為に執着する古河の姿は、まさに「狂気」という言葉そのもの。現代社会の闇が凝縮されたようなストーリーは、より古河をリアルな存在へと押し上げます。
作者は『復讐執行人』『処刑列車』など、グロテスクな題材と描写でコアなファンの多い大石圭。大ヒットホラー映画『呪怨』のノベライズを手がけたことでも有名です。
ひとたびこの作品を読めば、周囲の人間にいらぬ疑心暗鬼を抱いてしまうかも知れません。
誰からも信頼されるその人は、本当に「いい人」ですか?