藤原伊織は『テロリストのパラソル』で史上初の江戸川乱歩賞と直木賞のダブル受賞を果たした推理作家です。惜しまれながらも、享年59歳でこの世を去りましたが、今も根強い人気があります。今回はそんな藤原伊織作品を6作品紹介します。

500ページ超とページ数が多いですが、登場人物の会話が中心に執筆されているので、すんなりと読むことができます。魅力をあげるならば、登場人物1人、1人の台詞に藤原伊織の熱がこもっているところ。たとえば、主人公の妻が学生時代に主人公に向けた台詞で
- 著者
- 藤原 伊織
- 出版日
- 2000-06-15
もう償えない、そこまで重い過去を背負って生きている人はそんなに多くはないかもしれませんが、表題作「ダナエ」の主人公宇佐美はそんな償いきれない過去を背負った人物です。若気の至りで傷つけてしまった相手の面影を今も抱えて生きています。
- 著者
- 藤原 伊織
- 出版日
- 2009-05-08
主人公の辰村は仕事ができますが、出世欲はありません。私生活では酒、煙草、競馬とゴロツキのような面もあり、なんとも言えぬ男くささが漂うところに魅力を感じます。そして、辰村を取り巻く登場人物は、皆胸の内に何かを抱えている人物ばかりです。
- 著者
- 藤原 伊織
- 出版日
好きになってはいけない人を好きになる時ほど、苦しいものはありません。一瞬の安らぎはあっても、お互いに思い悩む運命だからです。表題作「雪が降る」の恋愛事情はそんな悩ましさを感じとれ、だからこそ思いを寄せる相手への純粋な気持ちが伝わってきます。自分の本当の気持ちに気づいた陽子が、次に雪が降った時に再び会うことを宣言する場面などは、そんな純粋さが上手く表現されているシーンです。そこに陽子の死が絡まることで、なお切ない気持ちにさせます。
- 著者
- 藤原 伊織
- 出版日
- 2001-06-15
主人公の堀江には、実は元ヤクザという過去があります。その彼がどうして堅気の世界に戻れたのかは、会長にまつわる疑問にも繋がっていて、読み進めていくうちにモヤが晴れていくそんな爽快感と面白さがあります。しかも、後半はアクションもあり、全体がエンターテイメントとして成立している作品です。ハードボイルド作品に浸りたい方におすすめです。
- 著者
- 藤原 伊織
- 出版日
学生運動に加担した過去のある島村が、その時の傷を今も抱え、しかも爆破事件に巻き込まれる事で、自分の過去と対峙していくようなスタイルで物語は進んでいきます。島村はアルコール中毒であり、バーテンダーで生計は立てているものの、その生活ぶりは荒んでいますが、胸の内には確固とした信念があり、謎の解明にあたって発生する障害を粘り強く乗り越えていきます。
- 著者
- 藤原 伊織
- 出版日
- 2014-11-07
藤原伊織の作品は、どこかくたびれていたり、諦観したりしている中年が主人公となる場合が多いですが、実は有能で、たくましさを感じる人物ばかりです。そんな主人公達が、謎解きに機転を利かせ、アクティブに真相に迫っていく姿は躍動的で読み手の心をつかみます。