3位:弱く自堕落。何もないふたり
大学生のヒデは、学校にも行かず、27歳の恋人、額子とのセックスに溺れていました。衝撃的な別れが来るまでは。
その後ヒデは彼を取り巻く女性が何人いても心が満たされず、次第にお酒を断てなくなっていくのです。彼の辿り着くラストとは?
- 著者
- 絲山 秋子
- 出版日
- 2010-09-29
「淡々と生きていけたら俺はそれでいいんだが。ただ友達が減っていくってことはたまらなくせつない」。(『ばかもの』から引用)
成宮寛貴、内田有紀主演で 2010年に映画公開された作品です。
ヒデはアルコール中毒に苦しむのですが、その描写がかなりリアル。そのリアルさはどこか共感を呼ぶもので、ばかだなと思うのですが、なぜかヒデを嫌いにはなれないのです。
ただ幸せに生きて行きたいだけなのに、どうしようもなく弱いから、正道から外れていく彼。でも、ダメな奴にも、味方もいれば、理解者もいるのです。彼の周りの人々の熱さ、冷たさ、儚さ、許しがストーリーで希望の役割を果たしています。
友達って?恋人って?家族って?ピンと張っていた糸が切れて、どう生きていくのかを迷う時、本当に一緒にいたい人は誰なのか考えさせられます。
2位:絲山秋子の完成度が高いデビュー作!
『イッツ・オンリー・トーク』は表題作と「第七障害」を収録した中編集です。今回はデビュー作である「イッツ・オンリー・トーク」をご紹介します。
直感で蒲田に住むことに決めた橘優子。福岡に住む年上のいとこ、祥一の精神が不安定なことを感じ取った優子は、自分の住む東京の部屋へ彼を呼び寄せます。それを機に彼女の前には複数の男性が現れます。大学の同級生ふたり、うつ病のヤクザ、痴漢……彼女が本当に好きなのは誰なのか?
- 著者
- 絲山 秋子
- 出版日
文学界新人賞受賞作であり、「やわらかい生活」と言うタイトルで、寺島しのぶ、豊川悦司主演で映画化されている小説です。
「私は不意に息苦しさを覚えた。(中略)好意や思いやりと同じくらい理解というのが大事なのだ」(『イッツ・オンリー・トーク』より引用)
居候のいとこ、祥一と優子の会話が、ゆるゆるしていて、シンプル。生活とは、日常とはこんなものなのだなとリアリティを持ちながら読むことができます。
淡白な性格の裕子の恋愛観は、とてもあっさりしていて、好き嫌いが分かれるかもしれません。ただ、その風来坊のような孤独で自由な感じや、人の闇にむりやり入っていこうとしない優しさに惹きつけられます。
何かに縛られているような窮屈さを感じている人は、この作品で自分の心を解放してみてはいかがでしょうか。
1位:この関係をどう思うかはあなた次第
『袋小路の男』は、表題作を含んだ短編集です。今回は2004年に川端康成文学賞を受賞した表題作をご紹介します。
私(大谷日向子)は、高校時代の先輩で片思いの相手、小田切孝との友達以上恋人未満の関係を切ることができずにいます。呼び出されれば応じ、機嫌の悪いときには帰される。体の関係は無し。なのに男の気配がすると「お前には合わない」と干渉してきます。
そしてふたりの関係は気がつけば、高校卒業から12年もの歳月が経ったものになっているのでした。
- 著者
- 絲山 秋子
- 出版日
- 2007-11-15
作品には全体的に片想いの苦しさ、自分から手放すと終わってしまう悲しさが漂っています。自分を1番傷つけ、ふり回すことができ、同時に理解している男。小田切孝は、心の中を読みづらい人物で、そんな彼に片思いの日向子はひたすら振り回されています。それでも好きなものはどうしようもなく、自分で終わらせることができないのです。
皆さんは、こんな恋の経験ありますか?「どうしてさっさと別れないの?」と思う人もいれば、「分かるなあ……」とため息をつくロマンチストもいることでしょう。この切ない世界はその感想から読んだ者の恋愛観を映し出す作品となっています。あなたはこの作品でどんな感想を抱くでしょうか?