3位:真山仁がエネルギー問題の再考と選択を迫る『マグマ』
外資系投資ファンドに勤務する妙子が2週間の休暇を終え出社すると、所属する事業再生部のデスク全部がなくなっていました。妙子以外は既に全員3日前に解雇です。ひとりだけ解雇を免れた状況が解せないものの、少なくとも自分の立場も非常に危ういということは感じ取りました。
その4日後には、九州にある地熱発電会社の事業再生を任され、現地でCEOに就任することになります。妙子はこの企業を見事再生させ、ファンドに戻ることができるのでしょうか。そして、妙子以外の部全員が解雇された真相とは……。
- 著者
- 真山 仁
- 出版日
- 2009-08-25
近い将来枯渇すると言われる原油に代わって、地熱発電に火山国日本の活路を見出す女性の物語です。たったひとりで、懸命に仕事にあたる様子は胸を打ちます。
破綻した地熱発電会社を蘇生させるには、従業員、経営陣、温泉組合、電力会社、議員たちとやり合って、感情など捨てなければいけません。しかし妙子は、つい人に同情したり、道理を通したくなったりするので、ストーリーに感情移入しやすいと思います。
地熱発電の仕組みや困難を一から学んでいく妙子とともに、エネルギー問題について基礎から分かりやすく知ることができます。破綻した企業を再生させることにどういう困難があるのか、若い妙子の視点から学ぶこともできるでしょう。
電力問題について詳しくなくとも、ストーリーは読者を結末まで力強く連れて行ってくれます。ハードルを下げて、まずは楽しく読み始めてみてください。
2位:中国を舞台に世界最大の原発建設に挑む『ベイジン』
原発建設会社の技術顧問、田嶋は、赴任先の中国で、世界最大の原子力発電所の運開の責任者を命じられました。病院に担ぎ込まれた先任者からは、行くな、あの国に殺されるぞ、俺みたいになるな、と忠告を残されます。
江南省の片田舎で育った鄭(テイ)は、兄が天安門事件に連座したことから将来が閉ざされますが、どんな仕事でも遂行して、いまや中国共産党のエリートに昇りつめました。国家の維新をかけたこのプロジェクトを、何としても成功させねばなりません。
北京オリンピックの開会式までに建設し運開するというミッションを、見事果たせるのでしょうか……。
- 著者
- 真山 仁
- 出版日
2008年の出版ですが、その後に東北大震災を経験した私たちには、当時に増してリアリティと恐怖が感じられます。まるで予言のような物語で、著者の先見の明が話題となった作品です。
ただでさえ難しい原発建設を、中国でやるというのですから、田嶋にはただでは済まない困難が待ち受けています。建設までに、技術トラブルや、利権問題、日本人への反感など、いくつもの障壁を越えねばなりません。田嶋は必死ですが、日本と中国では理想とする上司像の違いなどがあり、良かれと思うことを身を挺してやっても、かえって反発すら招くこともあります。
また、鄭という登場人物も魅力的です。侮蔑され、物を投げられ流血しても、ストを起こす従業員たちに囲まれても、ひたすら耐えて笑顔を保ち、決して状況に屈しません。普段は激しい性格ではありませんが、いざという時は勝負強く、牽制、罠、だまし合いのうごめくアルティメットな戦いに、逃げずに挑む姿には応援したくなる人も多いでしょう。
同じ目的を持つふたりが、この状況を通して、お互いの立場を理解し、やがて協力するようになっていく過程は、いまの日中の抱える問題に希望を投じるかのようです。怒涛の展開の中で、気が付けば絆ができていたことを実感する様子は感慨深いものがあります。
1位:外資ファンドから見る日本。真山仁の代表作『ハゲタカ』
アメリカで有力投資ファンドに在籍していた鷲津政彦は、不景気の日本に帰国します。日本法人を立ち上げその代表となり、次々と容赦のない企業買収を仕掛けていくのでした。
一方、都銀勤務である芝野は、ニューヨークに赴任していた時から、日本も企業再生の土壌の整備が急務だと考えていました。やがて帰国して不良債権処理を担当することになり、鷲津と出会います。そして、旧態依然とした日本で理想を実現するという難しい闘いを強いられるのでした……。
- 著者
- 真山 仁
- 出版日
- 2013-09-13
バブル崩壊後元気をなくした日本に、外資系企業再生ファンドの鷲津政彦が、次々買収を仕掛けます。しかし、一度破綻した企業を再生するのは簡単ではなく、その道のりは様々な利権が絡み合い複雑化を極めます。
外部から入った人間が覇気を無くした企業で再生を果たすには、理屈や資金力にものを言わせるだけでは足りません。従業員たちの落胆と恐れ、命を懸けてでも会社を再生させたい経営者、自治体や政府、銀行の立場など、様々な思惑を収めながら結果を出さねばらない、高度なビジネスの様が描かれています。
ピアニストを夢見る青年だった鷲津が、その夢を諦めてファンドビジネスの世界に入ったきっかけは、母からの1本の電話でした。企業買収に携わる人たちは、本当に冷酷なハゲタカばかりなのでしょうか?他の猛者たちも仕事ぶりこそクールですが、人間性が細かく描かれていて、そのキャラクターに思わず愛着が沸いてしまうでしょう。
『ハゲタカ』上・下巻では度々、新渡戸稲造の『武士道』の一説が引用され、ストーリーを串刺しています。外資系ハゲタカファンドの恐ろしさ、といった単純な話ではなく、それを通して、日本古来のスピリットを思い出させてくれるストーリーです。
実写化された作品ですが、原作はより細かく深い描写が多く、別の面白さがありますので、ドラマを観たことのあるかたも、改めて読んでみると発見があると思います。また、第一部『ハゲタカ』上下巻の舞台は1998年~2004年で、実際の出来事がいくつもモデルにされているので、ストーリーを通して経済の流れを知ることもできますし、記憶や思い出のあるかたは改めて思い返して楽しめるでしょう。
もっと読みたいと思ったら、シリーズの『ハゲタカⅡ』、『レッドゾーン』、『グリード』、『スパイラル』は全てお薦めです。せっかくなら、シリーズ全部を楽しまないともったいないです。鷲津もさることながら、脇を固めていた人物たちをも、予想だにしない波乱の展開が待ち受けています。