「組織」が形成されたとき、時に人は歴史をも動かす大きな力を発揮します。今回はそんな組織力を生かして歴史を創り上げた人々を描いた塩野七生の歴史小説6冊をご紹介します。

ヨーロッパ歴史小説のジャンルを牽引してきた塩野七生による歴史絵巻の第二作目です。
本作は16世紀初頭の地中海が舞台となります。前作の『コンスタンティノープルの陥落』に続く本作では、ロードス島の聖ヨハネ騎士団が物語の軸となり展開します。イスラム教世界とキリスト教世界との闘い。その最前線ともいえるロードス島。時は1522年、ロードス島を守る聖ヨハネ騎士団と、攻めるオスマン・トルコの大帝スレイマンが相対峙していく様子を綴ったのが本作です。
コンスタンティノープルの陥落からは70年という時が経過しており、前作を読んでから本作を読むと、この間の時間の変化も味わい深く感じられます。オスマン・トルコの首都であるコンスタンティノープルからシリアやエジプトに行くには、途中にロードス島付近を通過しなければなりませんでした。そして、ロードス島を守るのが聖ヨハネ騎士団。オスマン・トルコでは、この聖ヨハネ騎士団を「キリストの蛇たちのねぐら」と呼んで恐れていたといいます。
- 著者
- 塩野 七生
- 出版日
- 1991-05-29
マルタ騎士団とも呼ばれる、団長であるフィリップ・ド・リラダン率いる聖ヨハネ騎士団が、オスマン・トルコを迎え撃つ、その6か月間にも渡った闘いを描いていきます。塩野七生の著作の最大の魅力は、これが単なる歴史的事実のみの記録ということではなく、著者による創作をも組み入れた歴史小説であるという点が挙げられるのではないでしょうか。この点によって、歴史ファンだけではなく、文学ファンをも虜にして、多くの著作がファンによって長い間愛され続けています。
特に、『ロードス島攻防記』では、若き軍隊候補生=カデットであるアントニオ・デル・カレットの視点で描かれているのです。仲間である騎士オルシーニの放埓な生活ぶり、そしてアントニオとの関係に焦点が当てられていきます。この部分についていえば、さらに歴史ファン、小説ファンのみならず、少女漫画ファンにも非常に魅力があるともいえるのではないでしょうか。
ロードス島を守り抜き、敗北して行く聖ヨハネ騎士団の様子を描く塩野七生の筆致には、感傷的なムードが満ちています。宗教の名のもとに、命を懸けて戦った男たちの騎士道精神、そのロマンを味わうなら、この作品は間違いなく心に響いてくるものでしょう。
興味深いのが当時十字軍に入る為に示された条件。「十字軍に参加する者には、完全免罪が与えられ、殺人などの罪を犯した際も全て帳消しになる」「十字軍に参加するものが残した財産などは、ローマ法王が保証人になり司祭が実際の責任を負う」「十字軍参加のために資産を売ったり借金をする場合は、それが正当な価格でやりとりされることをローマ法王自らが保証する」などの取り決めが公会議で決定しました。そんな条件のもと集められた第一次十字軍の7人のメンバー。彼らのほとんどは貧民でした。果たしてそんな彼らはどうようにイェルサレム奪還へ挑むのでしょうか……?
- 著者
- 塩野 七生
- 出版日
ヴェネツィア人が国の独立を保てた理由のひとつとして、ローマ帝国皇帝とローマン・カトリック教会の争いに巻き込まれず、さらに両者の調停役を買って出たことが挙げられています。さらに1177年にはヴェネツィアで皇帝バルバロッサと法王アレッサンドロ3世に和平協定まで結ばせているのです。
- 著者
- 塩野 七生
- 出版日
- 2009-05-28
作品の中では様々な人物の立場に立った「それぞれの真実」が記されています。コンスタンティノープルを巡る覇権闘争の中でキリスト教側に立った者、イスラム教側に立った者。仲間割れする修道僧やイスラム教のスルタン。東ローマ帝国の皇帝など、100人いれば100通りの答えや真実があるのです。そんな複雑に交錯するそれぞれの思惑が客観的事実と作者の膨大な知識のもと綺麗にまとめられて記されています。
- 著者
- 塩野 七生
- 出版日
- 1991-04-29
本書を書いた当時の様子を作者はこんな風に記しています。
- 著者
- 塩野 七生
- 出版日
- 1982-09-28
塩野七生が15年をかけて古代ローマ全史を書き上げた歴史文学作品。物語はなぜローマ人は偉業を成し遂げたのか、という壮大な謎を解いていくことを軸に進んでいきます。
- 著者
- 塩野 七生
- 出版日
- 2002-06-01
いかがでしたか?塩野七生の歴史小説、組織論が学べる6冊を集めました。上質な作品の数々をぜひお楽しみください。