裁判×エンタメ×恋で成り立つ青柳碧人らしい1冊
もし、自分が裁判員に選ばれたら?そして、その裁判が生中継されてテレビに自分が映るとしたら?閉ざされた空間だった「裁判」の場が、テレビによって中継されるようになった日本を舞台に、裁判員に選ばれてしまった主人公、生野悠太の視点からストーリーが展開します。
- 著者
- 青柳 碧人
- 出版日
- 2014-09-25
法廷から人気アイドルが誕生したり、裁判が生中継されて、しかも裁判中に歌をうたったり。裁判がお茶の間の娯楽になってしまう、という荒唐無稽なストーリーながら非常に読みやすく書かれています。
随所に法律の知識をちりばめてあるため、生野と同じようにゼロベースからでもすんなりと司法制度や法律に対する造詣が深まっていく展開はお見事です。
一見、おふざけにも見えますが、裁判員制度への風刺が盛り込まれていたり、選ばれた裁判員が該当の事件の謎解きをしてしまうというミステリ要素だったりと、裁判という独特の雰囲気を持った世界を、分かりやすく、さらにエンタテイメント性を持って描き出しているところに、青柳碧人のらしさがうかがえます。
読了後には「ちょっぴり法律に詳しくなったような?」そんな気分になりますよ。
こんなヘンな建物、見たことあります?
ヘンな建物研究会、通称「ヘンたて」と呼ばれる大学のサークルを舞台に繰り広げられる青春ミステリ小説です。正確には、殺人や事件のない、「建物のミステリ」に迫るお話しで、ヘンたてに入会した新入生の中川亜可美が、ストーリーテラーとなって物語を案内してくれます。
- 著者
- 青柳 碧人
- 出版日
- 2012-06-22
まず、「ヘンな建物研究会」というサークル名が秀逸です。サークルの活動内容といえばヘンな建物や謎のスペースを見に行っては、その建物にまつわる謎を解き明かすという斬新なもの。
そうしたヘンな建物をめぐって交わる人々の心の動きや、自分以外の他人の心の機微を学ぶことの重要さを感じさせてくれる、人間味あるストーリー展開は青柳碧人の作品に共通する特長です。
一見ハチャメチャで独創的な世界ながらも、「そうか、そういうことね」とするんと集結するのです。今作は、明るくさわやかな雰囲気なので、新感覚のミステリとも言えるのではないでしょうか。
ヘンたての元祖、綾辻行人をして「『ヘンたて』のこの、心優しくも知的・個性的な学生諸君をいつか、わが"中村青司の館"にご招待したいものである。ただし、そのときはこんなに『ほのぼの』では済みませんぞ。」(『ヘンたて 幹館大学ヘンな建物研究会』文庫版帯より引用)と紹介するように、ほのぼのとしていてちょっぴりセンチメンタルな青春ミステリ。一読の価値ありですよ。
事件の鍵は、数学オタクの女子中学生?青柳碧人の代表作
少年犯罪の元凶であるとして学校教育から数学が排斥された日本を舞台に、数学テロリストと対策本部の頭脳戦を描く、青柳碧人の代表作。対策本部の救世主として、数学が大好きな、天才数学少女の浜村渚がやってきたところから物語はスタートします。
- 著者
- 青柳 碧人
- 出版日
- 2011-06-15
数学を駆使して殺人を防ぐ、という何とも画期的なモチーフです。定理や公式についての説明やうんちくが挟み込まれており、青柳自身が「本当の意味での初心者向けであり、かつ数学への愛に満ち溢れており、出来れば読んでるうちに数学の知識が身につく(あるいは、そんな気になる)作品が読みたくて」(『浜村渚の計算ノート』あとがきより引用)と述べているように、数学に苦手意識のある人にもチャレンジしやすいのではないでしょうか。
残虐な事件が起きる中、中学生の渚が数学的知識を使って事件を解決する様子には、「数学大好き!」という思いがあふれていて好感が持てます。数学のこと以外は、むしろ理解できていないという、まさに数学オタクな渚のかわいらしさも、物語のポイントです。
「推理ノート」ではなく、「計算ノート」というタイトルもキャッチーでいいですね。四色問題、悪魔のゼロ、フィボナッチ数列、円周率など、一度は聞いたことがある数学用語がたくさん出てきますので、数学好きはにやにやしながら、数学が苦手という人も理解を深めながら、いつの間にか読み終えていることでしょう。
事件解決までの推理を楽しめるのはもちろん、読み進めるうちに数学の本質的なおもしろさが自然に分かってしまう1冊。今まで知らなかった世界をのぞいてみては?