日本文学史に名を遺す作家芥川龍之介
芥川龍之介は明治時代を代表する日本の作家です。現在の東京都中央区に生まれた龍之介ですが、父親は病死し母親は精神に異常をきたした為、母親の実家に預けられ芥川の性を名乗ることになります。
幼いころから成績優秀だった龍之介は当時名門であった第一高等学校に入学し、その後東京帝国大学(現在の東京大学)へ進学します。
大学在学中には、早くも友人たちと「新思潮」という文芸誌を刊行し、この雑誌に発表した「老人」が彼の処女作となります。
大学を卒業後は英文学科を主席で卒業した実力と、その優秀な成績を聞きつけた周りからの推薦で海軍機関学校の教官の職につきました。その傍らで創作に励み、「羅生門」の刊行を皮切りに短編作品を次々と生み出します。
龍之介の名前が使われている「芥川賞」は現在の文藝春秋社創設者でもある友人、菊池寛の手よって龍之介の死から8年後につくられました。
芥川龍之介の作品は彼の人生において大きく3つの時期に分けられます。
初期の活動では人間のエゴイズムを書き出した作品が多く、「羅生門」や「鼻」にその特徴が伺えます。
中期には芸術の為の芸術とも言われる芸術至上主義の作品がテーマとして多く残されています。
しかし晩年になると生死に関する作品が多く見受けられ、このころから自殺を考えていたとされています。その後それは現実となり1927年7月、35歳の若さでこの世を去りました。
人間のエゴイズムとは
- 著者
- 芥川 龍之介
- 出版日
- 2007-06-23
『羅生門』
時は平安時代、物語の主人公は主人に暇を言い渡された一人の下人です。仕事がなくなってしまい途方にくれた下人でしたが、盗人になる勇気もでず、羅生門の前でこの先どのようにして暮らして行こうかと悩んでいるのでした。
そこで下人が出会った老婆は女の死体から髪を抜き、カツラを作り、売りに出すと言うのです。
下人はそこである考えが浮かんだのです。老婆の行為が生きていくためには仕方がないことだと言うなら、自分が盗人になることもまた、生きて行くためには仕方がないことなのかもしれない。
生きるための悪は、悪ではないのか。たとえそれが自分のエゴイズムであっても、そうしなければ明日を生き延びるのも難しい。そんな状況に立たされた下人が出した答えとは?
短編なのでさらりと読めながらも、人間の根底を探る作品を是非、読んでみてください。
コンプレックスに向き合う主人公とその周りの人々
- 著者
- 芥川 龍之介
- 出版日
『鼻』
見た目、性格、癖。人間は自分の人と違う部分を個性だと胸を張ることもできますが、羞恥、または不満に思い、悩みの種にしてしまうこともあります。
本作はある僧の悩み、横文字でいうところの「コンプレックス」を題材とした作品です。
彼のコンプレックス、それは、タイトルの通り「鼻」です。人より鼻が長い彼は、その見た目を気にしています。さらにそんな彼に追い打ちをかけるように、周囲もあの鼻だから出家したのだろう、あれでは妻もできないと噂します。
彼は自分のコンプレックスを克服しようと鼻を短くする方法をいくつも試します。それを不憫に思いながらも、どこか面白がっている弟子たち。
本人にしか分からない劣等感。自分の身におこらなければ、本当の意味で理解しえない悩み。そんな人間の心理や心情をシンプルに伝えるこの作品。最後に主人公が導きだしたコンプレックスとのつきあい方とは?
最後にはきっと晴れ晴れとした気持ちになれるそんな作品です。