海外小説に苦手意識を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、名作は手に取らずにはいられないもの。恋愛小説は共感できる部分が多く、すんなり物語に入り込め、海外小説初心者向けです。中でもおすすめの6作品をご紹介します。

初恋の人の恋い慕う相手が自分の父親という衝撃的展開ですが、嫉妬心や猜疑心にからめとられ、あらゆる感情が発露していく様は、身に覚えがあるせいか、胸が締め付けられ、息苦しささえも覚えます。しかし、ジナイーダの女王様っぷりが堂に入っていて、なんだか可愛らしく見えてしまうのが困ったところ。恋をして少女から女性に変化していく姿にも、目を見張ります。
- 著者
- ツルゲーネフ
- 出版日
- 1952-12-29
舞台となっているイギリスでは、1800年代ごろは「女性の幸せ=結婚」という図式が大前提の世界でした。女性に働き口はほぼないため、結婚は文字通り死活問題。ベネット家は特に跡取り息子がいないため、父が死んでしまえば家屋敷すべて従兄弟の手に渡る手はずとなっているのです。
- 著者
- ジェイン・オースティン
- 出版日
- 2006-02-04
相手のすべてを屈服させ、服従させたいという欲を持っているクリスチャンと、性的趣向はノーマルなアナの過激な恋愛物語が展開される本作。SMプレイもさることながら、契約関係を結び、「支配者」と「従属者」になってしまうという展開に驚かされます。
- 著者
- E L ジェイムズ
- 出版日
- 2015-01-09
特に「降っても晴れても」は、友人のために彼と妻との関係を修復すべく引き立て役の「ぼく」が奮闘する姿を描く物語。若い夫婦ではなく、50歳近い夫婦ということもあって、老齢離婚という言葉がちらつきます。親友のために頑張っていたはずなのに、うっかり見てしまった日記に自分のことが書かれてあって怒り心頭。しわくちゃにしてしまった日記を伸ばすために悪戦苦闘する姿が笑いを誘います。
- 著者
- カズオ イシグロ
- 出版日
- 2011-02-04
普通の恋愛小説よりは哲学的で、人の価値観の中での重さと軽さの判断基準に疑問を投げかけてきます。物理的なものではなく、例えば生まれや身分によって、命の重さは変わるのか。愛は何かに替えられるほど軽いものなのか。作中では政変により人生や生命が軽く扱われてしまうような状況下で、ニーチェの思想である「永劫回帰」を根底に置き、男女関係の中に様々な思想を交え、読者に語り掛けてくるのです。
- 著者
- ミラン クンデラ
- 出版日
シェイクスピアの作品で恋愛ものといえば『ロミオとジュリエット』が有名ですが、復讐劇として知られる本作にも悲恋のエピソードが出てきます。
デンマーク王子のハムレットは父王を亡くした悲しみと、母が父の死後間もなく叔父クローディアスと再婚したことで深く傷ついています。城壁に父の亡霊が出現すると聞いて確かめに行った彼は、父の死が、王位と王妃を狙うクローディアスの陰謀であったことを知り、復讐を誓うのです。
クローディアスに怪しまれぬよう、狂人のふりをするハムレット。彼は母の部屋で盗み聞きをしていた宰相を殺してしまいます。更に彼が求愛していた宰相の娘オフィーリアは、恋人の変わり様と父の死を悲しむあまり本当に発狂し、誤って川に落ちて亡くなってしまうのです。最終的にハムレットは復讐を果たすのですが、母である王妃や宰相の息子、自分自身も死に至るという悲しい結末になっています。
- 著者
- ウィリアム シェイクスピア
- 出版日
- 1967-09-27
ハムレットはオフィーリアを愛していました。しかし、彼の中にはもう1人大切な女性がいました。それは母である王妃ガートルードです。当時の慣習では義弟との再婚は近親相姦にあたり恥ずべきものであったと考えられています。清く尊敬すべき存在であってほしい母が再婚することさえ苦しいのに、それが罪深い結婚であったということは、ハムレットを絶望させます。彼はそんな母から生まれた自分を穢れた存在だと感じ自尊心を失ったことでしょう。復讐を決意した後のハムレットのオフィーリアへの言葉は、狂人を装っていたにしても激しい拒絶に満ちており、彼が人間不信、特に女性不信に陥ったことが伺えます。
しかし、オフィーリアの埋葬場面に出くわした彼は深い悲しみを表し、彼女への愛を口にします。それが彼女の兄レアティーズとの言い争いを呼び、彼らの最期へと続く道を作ることとなってしまうのでした。
『ハムレット』は戯曲です。はじめは戸惑うかもしれませんが、セリフだけで構成されている分、読み始めるとサクサクと読めてしまいます。また、普通の本に比べて場面の想像も膨らみやすいことでしょう。是非この機会に手にしてみてください。
恋愛においては手の届かない思いだから余計に燃える、ということがあるようです。『サロメ』もそんなふうに読める物語です。
ユダヤの王エロドは兄を殺し、その妻エロディアスと王位を得ます。罪深い王とそこに嫁した王妃を激しく糾弾する預言者ヨカナーンは幽閉されていますが、王女サロメは彼に会ってみたいと言い張ります。ヨカナーンを見たサロメは恋に落ちますが、彼はサロメをも穢れたものと見なし、彼女を拒否します。失意のサロメは踊りを披露すれば何でも褒美をやるという王の言葉に美しく舞って応え、ヨカナーンの首を所望します。代替案を認めずただ首をほしがるサロメに根負けした王はついに銀の大皿に乗せた預言者の首を与えます。その唇にキスするサロメ。
- 著者
- ワイルド
- 出版日
- 2000-05-16
サロメは王女であり、美しい乙女です。エロドや若きシリア人が彼女を見る様子からそれが伺えます。しかし、ヨカナーンは彼女の位に動じず、その美しさに目を向けることもしません。サロメがどんな言葉で愛を歌っても、その声は届きません。かえってますます邪険に拒否されてしまいます。拒否されればされるほど燃え上がるサロメの思いが、ヨカナーンを、そして最終的にはサロメ自身も死に追いやります。激しすぎる恋の炎は、自らも焼き尽くしてしまうのです。
この作品は戯曲で地の文がなく、また非常に短いので、セリフの裏に隠された登場人物たちの思いは読者の想像力に託されています。果たしてサロメは恋に殉じた純粋過ぎる乙女だったのか、報われぬ恋のため狂った倒錯愛者だったのか。ピアズレーの妖しい挿絵も楽しみつつ、想像を膨らませて味わっていただきたい1冊です。
ずっしりとしたテーマでありながら、読みやすく書かれています。そのおかげなのか読後感はとてもスッキリしたものです。秘密が明らかになるにつれ、ハンナの行動一つ一つに涙が出てしまい、クライマックスでは本を濡らしてしまいました。
- 著者
- ベルンハルト シュリンク
- 出版日
- 2003-05-28
国や時代が違えば、価値観も変わるものですが、人に恋い焦がれる心は普遍的なものです。様々な国と時代の恋愛小説を読み、誰かを恋しく思う気持ちにぜひ触れてみてください。