サマセット・モームの生涯
ウィリアム・サマセット・モームはフランス生まれの作家です。モームは10歳で孤児になり、単身イギリスへ渡ります。その後、医師となり、第1次世界大戦では軍医や諜報部員として活躍しました。その後、サマセット・モームは小説『月と6ペンス』を書き、一躍人気作家となるのです。また、彼は同性愛者でもありました。
サマセット・モームは孤独な青年期を過ごしました。彼が8歳のとき、母が肺結核で、10歳のときに父が癌で死亡してしまい、孤児となります。その後、叔父であるヘンリー・マクドナルドに引き取られることになるのです。13歳のころ、カンタベリーキングズ・スクールに入学しますが、英語がうまくしゃべれなかったこと、そして吃音があったことで迫害を受けてしまいます。このことから、彼は周囲にうまく馴染めず、孤立していったのです。
サマセット・モームは大変な旅行好きであり、長期の旅行をよくしたといわれています。作家デビューの後、スペイン・アンダルシア地方を旅行し、1905年には印象旅行記『聖母の国』を出版しました。その後もしばしばスペインを訪れ、歴史物語『ドン・フェルナンド』を発表するのです。
その後、サマセット・モームは劇作家としての顔も出し始めます。『信義の人』『ドット夫人』『ジャック・ストロー』『スミス』などを上演し、劇作家としても活躍していくことになるのです。そして1912年に、今や傑作となった『人間の絆』の執筆を開始します。
サマセット・モームの後期の活動は『シェピー』をきっかけに劇作家を引退しています。その後、1935年に自伝『要約すると』を出版しました。第2次世界大戦勃発時はロンドンへ亡命。翌年にその体験手記『極めて個人的な話』を出版します。そして、大戦中には大作である『剃刀の刃』を出版することになるのです。
そして、晩年、サマセット・モームは認知症を発症。親族と被害妄想をきっかけにトラブルなどを起こすことになります。そして、1965年には入院していたニースの病院から、彼自身の希望でリヴィエラの邸宅へ戻り、亡くなります。享年91歳でした。
絵に情熱を燃やした男『月と六ペンス』
主人公は、ある日、ぱっとしない男、ストリックランドに出会います。このストリックランドは、画家のゴーギャンをモデルに描かれているのです。不自由のない生活をしていたストリックランドは、ある日忽然と姿を消してしまいます。その後、パリでストリックランドと再会した主人公は、彼が全てを捨ててまで画家を選んだことを聞いて驚愕することになるのです。
サマセット・モームの本作で注目すべきなのは、ストリックランドのその壮絶な生き様です。才能が無いと言われても、そんなことは些事なのだと言わんばかりに、ストリックランドは自身の道をつき進むのです。その姿勢に、失われて久しい男気のようなものを感じてしまうのは、決して間違いではないでしょう。
ストリックランドは絵を描くことに情熱を燃やし、全てを捨ててその道を歩むことになるのですが、その描写にまるでゴーギャンそのものを見ているような印象を受けます。その鼓動まで感じられるのは、サマセット・モームがいかに人物描写に長けていたかの証拠になっています。その、息詰まる展開に、ページをめくる手が止まらなくなってしまうのです。
- 著者
- サマセット モーム
- 出版日
- 2014-03-28
そして、絵を追求し続けてきたストリックランドがタヒチ島で見せる最期の姿にも、読者は胸を打たれ、脳裏からその姿が離れなくなってしまうのです。また、この物語にはもう1人の登場人物がいます。お人好しのストルーヴです。彼は、ストリックランドに妻を寝取られてしまいますが、最後までその妻の事を愛している。その愛情の深さにもまた、胸が熱くなること必至なのです。
読書の面白さの一つに「様々な人生を追体験すること」があると言われています。サマセット・モームの本書では、ストリックランドという男が全てを捨ててまで、自分自身の道を突き進んだ、その過程を追体験することが出来るのです。そんな読書の面白さを味わえる、非常に印象的な一冊。なにかにチャレンジしたいと考えている人にとっては、きっとその背中を後押ししてくれる一冊ですよ。
サマセット・モームの作品をお得に読む
人生の根本への問い『人間の絆』
本書はサマセット・モームの自伝的小説になっています。両親を亡くし、叔父に育てられたフィリップは、足に障害を持っており、常に劣等感を持ちながら育っていくのです。そんな生活の中、信仰心すら失い、聖職者になることをあきらめた彼は、絵を学ぶためにパリへと渡ります。しかし、周囲の才能に押しつぶされ、再び挫折した彼は、イギリスに戻り医学の道を志すことになるのです。
サマセット・モーム自身は足に障害を持ちませんでしたが、実際の彼には吃音がありました。彼自身のコンプレックスを、足の障害に置き換えて本作の主人公に投影しているのでしょう。そしてその後もあまり恵まれない人生を歩むことになるのですが、読み進めていく内に、「生きている意味はあるのか?」という問いかけが自然に出てくるのも本書の面白さの1つでしょう。
人は誰しも幸福を願う存在ですが、その度に自分の理想と現実とのギャップに苦しむことが多いです。モームの本作の主人公である、フィリップもまた理想と現実との間のギャップに苦しめられます。
- 著者
- モーム
- 出版日
- 2007-04-24
絵の道を志したのに、まったく評価されず、周囲の才能におしつぶされたこともそうですし、幼くして両親が亡くなったこともそうでしょう。幸せになるために行動してきたはずなのに、どうしてもうまくいかない。その原因が自分の能力に起因することも、ただ運命であることもありますが、それでも現実はどうしようもないものを突きつけてくる。その中心にいるフィリップの悲しみが、実際のサマセット・モームの人生と重なって、読者に問いを発せさせるのです。
きっとこの作品は、1人の人生を変えてしまうほどの力をもっているのでしょう。なぜなら、人生の根本について、問いを投げかける内容になっているのですから。1度読めば、きっと何度も読み返してしまいますよ。人生に迷ったときにはこの作品を是非お読みください。