3位: 怪奇体験の詰め合わせ
修験の山として知られる出羽三山は、他界へ繋がっているといわれています。友人と一緒にその山へ登りに行った作者は、そこで不可思議な体験をします。登山行程の途中にある神社の周辺には、お墓がいくつかありました。興味を持った友人はお墓を見に行きますが、作者はためらいます。なぜためらったのか原因はわかりませんでしたが、何となく入りたくなったのです。
友人は、背広を羽織ったお墓を見つめていました。誰かが置いていったものだろうと思いましたが、お墓に背広という組み合わせはどこか恐怖を覚えます。すると、友人が急に走り出し、作者のほうへ戻ってこようとしました。それを見た作者は、自分でもよくわからないまま友人に向かって、「走るな!」と叫びました。
- 著者
- 加門 七海
- 出版日
- 2011-12-15
作者の体験を記した、20編のエピソードで構成された身辺雑記帳『怪のはなし』。フィクションのホラー作品ではないため、怖さを狙っているわけではなく、作者の体験に基づいた怪奇体験であるぶん自然な怖さが伝わってきます。
どうしてそんなことが起こるのか、作者自身も明確な原因や理由はわかっていないようで、「自分ではよくわからない。わからないから、彼らとの出会いと感じたことを、一モノ書きとして、この場所に書きとどめておこうと思う」(『怪のはなし』より引用)と書いています。
一つひとつは短いエピソードですが、一気に通して読むとゾクゾクと背筋が震えてくるような怖さに襲われます。怪談話が好きな人にはぜひチェックしてほしい1冊です。
2位: 加門七海が届ける、怖すぎるホラーエッセイ
霊感の強い作者が、これまで怖すぎて封印してきた部分も全て赤裸々に紹介した怪談エピソードが40編も収録された1冊です。エッセイ集などでは怖い話も軽い語り口で書くことも多い作者ですが、この本はとても怖い話で溢れています。
収録された中に、「三角屋敷を巡る話」という話があります。珍しい三角の形をしたマンションは、とてもおかしな設計をしていました。どう考えても奇妙なその造りを不審に思った作者が霊能者に相談すると、そのマンションは何とわざと、「呪い」がかかるように作られているのだと、信じられない答えが返ってきたのです……。
- 著者
- 加門 七海
- 出版日
その他にも、上海で起きた悲惨な列車事故の数日前に出会った死神の話や、井戸に現れる首だけの女の話、髪の毛が落ちてくる更衣室の話など、鳥肌が立つ怖い話がこれでもかと掲載されています。
しかも、どれも普段の生活からそう離れていないところで起きている話なので、もしかしたら明日、自分の身にも降り掛かってくるかもと思うと……夜には読まないほうがいいかもしれません。
1位: モノに宿る不思議
京都を訪れた作者は、たまたま入ったお店で堆朱(ついしゅ)の香筒を見つけます。ひと目で気に入った作者はそれを手に入れたいと思いますが、その時は運悪く、持ち合わせがありませんでした。後ろ髪引かれる思いでその場を後にした作者でしたが、数か月後、再び京都を訪れる機会のあった作者は、堆朱の香筒を忘れられず、再びお店を訪れました。
しかし、堆朱の香筒はもうありませんでした。ショックを受けた作者が慌てて店員に尋ねると、店員は、そういうものを扱った記憶はない、と答えます。売れたわけでもなく、扱っていないと言われた作者は首をひねりますが、ないものはありません。しかし、それでもなぜか諦めきれない作者は、その後も、京都を訪れる度に店へ寄り、堆朱の香筒について尋ねるようになり……。
- 著者
- 加門 七海
- 出版日
- 2014-01-25
作者は何かと人と違うものに好かれる体質らしく、身の周りにはごく自然に不思議なことが起こります。ただ、それは気が付いていないだけで、普通の人にも起こっていることなのかもしれません。
「『なんで、こんなもの、買っちゃったんだろう』とか、(中略)『いつから、これが家にあるのか、誰も知らないんだ』とか。誰もがきっと、そんなもののひとつやふたつ、心当たりがあるに違いない」(『もののけ物語』「堆朱の香筒」より引用)
本作は、そんな不思議なことに気が付ける作者が体験した「モノ」にまつわる不思議なエピソードがたくさん詰まっています。怖いというよりも不思議な話を覗きこむ感覚で、怪談好きな人もそうでない人も楽しむことができます。