3位: 実際の事件を元にした物語
岡山県の北の果てにある村は、僅か百人程度の近しい人しか暮らしていない閉ざされた村です。その村の中心にある暗い森。村人達はそこを「お森様」と呼びますが、どうしてそう呼ぶのかは誰も知りませんでした。
両親を亡くしたさや子と辰男は叔父の家で世話になることになりますが、さや子は叔父の仁平から密かにイタズラをされるようになってしまいます。しかしそれでも家を追い出されてしまっては困るので、逆らうことができません。弟の辰男もそのことに気が付いていますが、どうすることもできず、憎しみだけを溜め込んでいきます。他にも母が金のために男達に体を委ねていることを知りながら、どうすることもできない少年や、田舎を憎みながら田舎から逃げ出せない女など、様々な憎しみが渦巻く村はやがて「鬼」を作りだしていき……。
- 著者
- 岩井 志麻子
- 出版日
- 2001-07-03
閉ざされた空間の中で紡がれる物語は、全体的に暗く鬱々としています。それでも思わず読み進めてしまうのは、登場するキャラクター達にリアリティがあるからかもしれません。昔ながらの閉ざされた村独特の雰囲気や因習、そして集落の中心にある森が、物語の不気味さをさらに際立たせています。
「この岡山の北の果ての村で、何よりも暗い場所だった。
そんな暗い森を囲むように、この集落はある。全戸、二十三。百人ほどの小さな集まりだ。元を辿ればすべて血が繋がっている」(『夜啼きの森』より引用)
村人を次々に惨殺するという「鬼」はどのようにして生まれたのか。元となる実際の事件があるからこそ、いろいろと考えさせられる作品です。
2位: 岩井志麻子が描く、一族の女達の耽美な人生
シヲは物乞いの母から生まれた娘で、自身も物乞いとして生きていましたが、ひょんなことから由緒正しい家の養女となります。物乞いの頃のシヲは汚れた身なりをしていたこともあってわかりませんでしたが、いざ養女となり身なりを整えると、シヲは誰もが認める美しい娘でした。
しかし、シヲの生んだ娘は馬面の父親に似て、母とは全く違う醜女でした。その娘もまた物乞いとの間に娘を産みますが、この娘、つまりシヲの孫は祖母譲りの美しい娘として生まれてきました。本作『べっぴんぢごく』は、シヲを始まりとした一族の、6代にわたる女達を描いた物語となっています。
- 著者
- 岩井 志麻子
- 出版日
- 2008-08-28
女達の淡々とした生活を丹念に描いた物語は、終始妖しい雰囲気に包まれており、その妖しさについ引き込まれて読み進めることができます。意外な展開を求めるよりも、女達の官能的とも切ないとも取れる人生を読みたいという人におすすめです。
独特な雰囲気に好みは分かれるかもしれませんが、因果に繋がれた呪われた一族の物語は壮大で、読み応えのある作品です。
1位: 岩井志麻子の代表作
目や鼻が左のこめかみに吊り上がっている醜女の女郎は、客に自分の身の上話を語ります。16歳で遊郭にやってきた女郎は、日照り村という通り名の村で生まれました。通り名の通り作物の育たない貧しい村で、40歳まで生きられたら良いほうです。そんな中でも女郎はさらに貧しく、牛以下の生活をしていたといいます。
女郎の母は、間引き専門の産婆でした。妊婦から子を取り出したり、生まれた子を絞殺したり、そんな仕事を女郎は4歳のときから手伝わされていたのです。幼い頃から体験し続けた水子との生活。血に塗れた話を淡々と語る女郎の寝物語です。
- 著者
- 岩井 志麻子
- 出版日
- 2002-07-10
「ぼっけえ、きょうてえ」とは岡山地方の方言で、「とても怖い」という意味。タイトル通り確かに怖い話なのですが、幽霊や妖怪が出てくるような怖さではなく、いわゆる人間の怖さが黒光りしているような物語です。
遊郭で働く女郎が自らの身の上話を淡々と語るさまは、残確で恐ろしいものを感じさせることでしょう。たとえば、間引き専門の産婆だった母を手伝ったと語る場面では、簡単な言葉に恐ろしい想像をかきたてられます。
「小まい頃は野菊や鬼灯摘みに行ったり、麦藁を縒ったりじゃけど、大きなったら……妊み女の手足を押さえる役目じゃったわ」(『ぼっけえ、きょうてえ』より引用)
恐ろしく残酷なので苦手な人は注意ですが、ホラーを読みたい人は、一度は手に取っておきたい作品です。