莫大な遺産をのこしたのは誰?『大いなる遺産』
孤児のピップは、気が強く荒くれ者の姉と、優しい亭主の家で育てられます。ある時、墓場で脱獄囚エイベルと遭遇したピップ。エイベルから逃亡の手助けを強要され、自宅から食べものやヤスリを運んで渡します。そんな事件も囚人が捕らえられて一旦は終わりとなります。
また、ピップは変わり者の老婦人ミス・ハヴィシャムに見込まれ、その養女であるエステラの話相手として、屋敷に迎え入れられます。エステラは美人ですが高慢で、下層階級である彼を何かにつけて見下し、彼は振り回されるのですが、それにも関わらずどんどんエステラに惹かれてゆきます。
ある日、ロンドンの弁護士がピップのもとを訪れます。そして、ピップに残された多額の遺産の話をするのでした。このお金でピップはロンドンに行き、かねてから憧れていた紳士になるための修業をするのです。自分に遺産をのこした人物がわからぬまま……。
- 著者
- チャールズ ディケンズ
- 出版日
- 2011-07-05
遺産を残したのが誰かという趣向で物語は進みますが、ほかにピップの恋も重要な要素です。また、登場人物は多様で、中でもミス・ハヴィシャムは「結婚当日に婚約を破棄され、悲しみのあまりその日のままで時計をとめて、花嫁衣装のまま光の差し込まぬ部屋で暮らす独身婦人」という、とりわけ変わり者の役どころ。その様子が目に浮かびます。彼女は世の中の男に復讐するため、養女・エステラに、男を手玉にとる教育をほどこすのです。ピップはその被害者の一人なのですね。
ロンドンで紳士となったピップが、故郷の貧しさを嫌ったりする様子。莫大な遺産を相続したと知ると、手のひらを返したようにすり寄ってくる人々。これは、人間の嫌な面も余すことなく書いています。そして最後には、脱獄囚の話、恋愛の話、遺産の話が見事に収束されていきます。
ディケンズの最高傑作と称されるこの物語。登場人物も多いですが、それだけに深みがあって面白いです。遺産を残した人物が判明したとき、エステラの出生の秘密が明かされた時など、随所で「えっ」と驚くことになりますよ。
チャールズ・ディケンズの作品をお得に読む
悪に染まらぬ少年『オリバー・ツイスト』
オリバーは救貧院で暮らしています。ここでの生活はきびしいもので、虐待を受ける毎日です。ある日を境にオリバーは葬儀屋に働きに出され、そこでもつらい生活を強いられます。我慢ができず、葬儀屋を逃げ出しロンドンに行き着いたオリバーですが、思いがけずユダヤ人窃盗団に入ることになってしまいます。その時、彼はまだ9歳でした。
オリバーは、仕方なく盗みに加わっていきます。そんなある日、彼はブラウンローという紳士に拾われます。窃盗団の仲間がブラウンローのハンカチを盗んだ時、オリバーだけがつかまったのですが、彼の無実がわかって家に連れ帰ってくれたのです。そこで、温かい家庭を知ったオリバー。生まれてはじめて幸せを感じます。しかし、窃盗団が彼をもとに引き戻そうとして……。
- 著者
- チャールズ ディケンズ
- 出版日
ディケンズによるこの物語に描かれるのは、孤児たちのあまりに過酷な生活環境です。生きて行くための手段としてスリや盗みをする子どもたち、悲しくなりますね。次第に環境に順応してしまうのです。
それでも、オリバーにそなわった善良な資質は、誰にも奪えなかったのです。悪人がたくさん登場し、オリバーを散々な目に合わせますが、頑固なまでに純粋な彼は、回りに影響を受けないのです。窃盗団の親分でさえ呆れ返るくらいです。かといって、オリバーは悪人と戦おうとするのでもないのですが……。根っから善良な人間なのですね。また、孤児オリバーの出生の秘密が明かされるところも必見です。ディケンズの作品史上、最も幸せになってもらいたい主人公です。
オリバーの人生は、まるでジェットコースターのようです。庇護する者もなく、生きていくのに必死な幼年時代。悪人から逃げおおせたと思ったらまた引き戻され自由を奪われたり、絶体絶命のピンチかと思いきや、突然味方が登場して助けられたり……。展開が早いので読者を飽きさせないディケンズのお話ですよ。
仕事、そして理想の女性を求めて『デイヴィッド・コパフィールド』
デイヴィッド・コパフィールドが生まれた時、父はもう亡くなっていましたが、母と女中ペゴティーに可愛がられ幸せな生活を送っていました。それが一転したのは、母が良くない男と再婚してからでした。新しい父と姉が家に入り込むと、デイヴィッドは居場所を失い、彼らから虐待を受けるようになります。そうして寄宿学校に入れられるのですが、その間に母が亡くなってしまいます。
その後、ロンドンにいる父方の大伯母を頼ってゆくと、大伯母は彼を歓迎してくれます。友人の弁護士ウィックフィールドの家に住まわせ、デイヴィッドは下宿しながら学校に通うことになります。そこで知り合ったのが同年代のアグニス。美しく聡明な理想的女性アグニスとも親しくなり、学校も無事卒業し彼の生活は順調でした。次に法律事務所に勤めることになるデイヴィッドですが、今度は事務所長の娘であるドーラに恋するようになるのです。彼女との恋愛が順調に行きだしたころ、今度は大伯母が破産し……。
- 著者
- チャールズ ディケンズ
- 出版日
- 2002-07-16
暗く厳しいはずの主人公の生い立ちも、明るいユーモアや皮肉を持って書かれています。
この作品はチャールズ・ディケンズ自身、一番のお気に入りとされています。それはディケンズの生い立ち、境遇、職業など、実際の経験を書いた自伝的要素があるからです。ディケンズの人生自体が物語のようであるとも言えますね。デイヴィッドも物書きをしていますし。
また、この作品は主人公の波乱万丈さにおいて、ディケンズの他の作品に引けをとりません。個性豊かな登場人物も抜群です。法律事務所の乗っ取りを企む悪人ユライアや、デイヴィッドの結婚した家事能力のない赤ん坊のような奥さん・ドーラなど、ユーモラスに書き分けられています。悪人善人の区別もはっきりしてわかりやすいですし、主人公がすぐに恋に落ちるのもディケンズ流ですね。仕事に恋愛にと事欠かないドラマ的な仕上がりになっているので楽しめます。