料理とは味、匂い、美しい盛り付けと合わせて五感で感じる物。小説は料理を感じるその五感を想像させ、頭の中にその料理を作り出します。小説家という名のシェフはどんなフルコースを出してくれるのか、そんな「美味しいおすすめ小説」となっております。

- 著者
- 群 ようこ
- 出版日
- 2013-07-13
- 著者
- 椹野 道流
- 出版日
- 2014-10-25
- 著者
- 小川 糸
- 出版日
- 2014-04-28
- 著者
- 柚木 麻子
- 出版日
- 2015-02-12
- 著者
- 吉田 篤弘
- 出版日
- 著者
- 竹内 真
- 出版日
主人公であるケンスケの祖父は、洋食屋を経営していました。そして祖父は、孫であるケンスケたちがカレーライスを食べている時に亡くなったのです。その時ケンスケがいとこと誓った夢は「僕らでカレーライス屋をやろう」というものでした。
時が流れてケンスケも成長し、その夢を忘れかけていたころ、彼の父親が亡くなります。父親の死に後押しされる形で、ケンスケは祖父のカレーの味を求める旅に出るのです。
祖父が亡くなったときに、夢を話し合ったいとこたちは全部で5人。5人は祖父のカレーを覚えてはいるものの、それぞれ自分の人生を歩んでいました。そのためまずケンスケは、いとこを探しに行くのです。
本作には様々な種類のカレーが出てきます。それは、ケンスケが旅をする中で訪れた、その地特有のものが出てくるからです。沖縄、アメリカ、そしてインドまで、ケンスケはカレーの味を求めていきます。
この作品の魅力は、なんと言ってもいとこ同士の絆。小さいころ交わした約束は忘れてしまいがちですが、5人は違いました。いとこたちと協力しながら祖父の味を再現しようと旅をする姿が、とても輝いています。読者も一緒に旅をしているように錯覚できるでしょう。
そして彼らがそこまでして夢を叶えたいと思う、祖父のカレーの味とは、いったいどういうものだったのでしょうか。
作品に出てくるカレーは全部が美味しそうで、読んでいてお腹がすくこと間違いなしです。
- 著者
- 仙川 環
- 出版日
- 2012-04-20
主人公の深山あきらは、姉のみゆきから父の店でホールスタッフとして働くように言われます。
そこに花井という男がシェフとして働くことになりました。そして彼の作ったペスカトーレが大好評となり、店は大繁盛。しかし花井は、突然ペスカトーレをメニューから外してしまいます。
店は客足が減り窮地に……しかも以前からいる料理人の香津子に、花井が必要以上に厳しく当たることで、厨房の中はギクシャクしていました。それでも香津子は料理人として、花井に認めてもらいたい一心で努力しつづけます。
そんなある日、香津子が原因で店にトラブルが起こりました。香津子は店を辞めさせられそうになりますが、もう一度料理の腕前を見てほしいと頼み、翌日にペスカトーレを作ることになります。しかし翌日、香津子は自室で昏睡状態で発見されました。香津子に何が起こったのか……そしてこの件がきっかけで、あきらの料理人としての修業がはじまります。
あきらは、小さい頃から父に料理を習い、元々の味覚の鋭さと料理に関する勘の良さや器用さを持っていました。高校を卒業したら店で修業をするつもりでいましたが、恋愛に敗れて店からは距離を取っています。
あきらは派遣で働いては、お金が貯まると放浪の旅に出るような生活を送っていました。しかし姉のみゆきはあきらの才能と、亡くなった父の思いを知っていたからこそ苦しい経営ながらもレストランを続けていたのです。
あきらは一見クールで、人との関りを避けるように生きていました。しかし実は人を見る目も確かで、周囲に気を配ることができる優しい女性です。ただ自分の本心から避けて生きてきたところがありますが、店で働くうちにほのんの少しずつ心に変化が出てきます。
- 著者
- 高田 郁
- 出版日
- 2009-05-15
水害で両親をなくした澪は、大阪一といわれる天満一兆庵の女将、芳に助けられ、そこで働くようになります。主である嘉兵衛に才能を見出され料理の修業を積む澪ですが、天満一兆庵が火事で消失してしまうのです。嘉平衛夫婦は江戸で店を出している息子の佐兵衛を頼ることになり、澪も同行しますが、佐平衛が失踪していることがわかり、嘉平衛は心労で亡くなってしまいます。店の再興と佐平衛探しを決めた澪はつる屋という蕎麦店で働き始めるのでした。
主人公の澪が、関西と関東の水や材料、味付けの好みなどの違いに戸惑いながらも料理人として大成していく姿を描いています。「みをつくし」とは「澪標」、つまり海にある標識と「身を尽くし」をかけた言葉です。澪が文字通り身を尽くして作る料理はどれも独創的で美味しそうで、人生という大海に投げ出された人たちの道しるべになるような、小さな勇気を与えます。
下がり眉に小さな丸い鼻。決して美人とはいえない澪ですが、料理にかける情熱と、料理を通して人を元気にしたいという思いが人を惹きつけるのでしょう。嘉平衛と芳夫婦をはじめ、つる屋の種市、浪人の小松原、町医者の源済などの心を掴んでいきます。特にシリーズ前半の、いつも澪を「下がり眉」と呼んでからかう小松原とのやりとりは微笑ましく、小さな恋の行方が気になるところです。
安い材料でも値段に負けないおいしいものを。できれば出来立てだけでなく、家に持ち帰っても楽しめるものを。相反する条件の中で新しい味を模索する澪は、制約の中で工夫するのが楽しいとさえ思います。校則や制服がある中で自分らしさを追求する今の学生さんたちと通じるものがあるかもしれません。
人に美味しいものを食べてほしいと願い、日夜工夫を凝らす澪に、次はどんな料理が登場するのか楽しみになります。レシピも書かれているので、読後にキッチンに立って、澪の世界を実際に味わってみるのもいいかもしれません。