直木賞をはじめ、あらゆる賞の受賞を固辞し続けた作家、山本周五郎。彼は英雄や権力者には目もくれず、日陰にいる人々を見つめ続けました。大河ドラマになったことでも有名な、『樅ノ木は残った』を含む、おすすめ6作品を紹介します。

歴史小説と聞くと難しいイメージですが、男女間で交わされる会話などが多く散りばめられており、非常に読みやすい内容です。そして、権力者や家臣、その妻たちなど、さまざまな立場の想いが交錯していく様子が巧みに描かれています。味方をも欺き、孤独の中で闘い抜く原田甲斐の姿に、最後まで目を離すことができません。
- 著者
- 山本 周五郎
- 出版日
作品は8つの短編から構成されており、殺人癖のある女を描く「狂女の話」や、成就したとたんに恋から冷めてしまう男の「三度目の正直」、一家心中の悲劇を描いた「鶯ばか」など、さまざまな患者や事件を扱った内容となっています。
- 著者
- 山本 周五郎
- 出版日
- 1964-10-13
タイトルにある「青べか」とは青い船のことです。物語は、主人公がこの青べかを老人から売りつけられるところから始まります。そして、小学生たちから多くの情報を与えられながら、徐々に明らかになる町の全貌。浦粕は、のどかな生活と猟奇的な事件が共存する、何とも不思議な町でした。本書はいくつもの短編から成り、章ごとに奇妙な登場人物や風習が描かれています。
- 著者
- 山本 周五郎
- 出版日
- 1963-08-12
ふさぎ込む栄二に対し、なぜか多くの人間は思いやりを持って接してきます。ある日、岡安という男から、自分の置かれている現状をよく考えるようにと言われる場面があります。
- 著者
- 山本 周五郎
- 出版日
- 1965-12-28
「松の花」は、妻を亡くして初めて、30年越しに真実を知る男が主人公です。彼女の死後、遺品整理をしていると、出てくるのはボロボロの服ばかり。裕福に暮らしていたはずなのにどうして?呑気に見えた妻の、隠れた一面が明かされていきます。
- 著者
- 山本 周五郎
- 出版日
- 1958-10-28
舞台は江戸時代後期。主人公の三浦主水正の父親はニ十石ばかりの組頭で、下級武士でしたが、主水正は子供時代から勉学に武術に励み、異例の出世を遂げていきます。本作は彼の8歳からの38歳までの半生が描いた作品です。
真面目で仕事に一途な三浦主水正は、主君の飛騨守昌治が計画した工事の責任者になりますが、思うように工事は進みません。小雨でも工事を休みにしてしまう総支配人。堤の工事に反対する藩の重臣たちは、妨害するだけではなく、主水正の命まで狙います。
主水正は、幼馴染で、彼との間に子供を持つななえと命からがら逃げ回り、貧しい生活を強いられます。しかも、息子を2歳の時に不慮の事故で亡くしてしまうのです。これが原因となり、二人は別れてしまいました。
- 著者
- 山本 周五郎
- 出版日
- 1971-07-19
後に妻となる旧姓山崎つるは娘時代からわがまま放題で育ったお嬢様として描かれ、父親からは「鷲っ子」と呼ばれるほど気が強い娘でしたが、長い長いすれ違いの夫婦生活のうちに心を開いていきます。
つるは気が強いだけでなく、物語の後半にはかわいらしい一面も垣間見えます。あれだけお互いを遠ざけていた二人が寄り添っていき、良い夫婦関係を築いていく姿にも注目して読むのも良いでしょう。
主水正のライバルで、藩主の息子である滝沢兵部も自分の立場に苦しみます。酒におぼれてしまいますが、最後は主水正により助けられ、立ち直っていきます。この二人のラストシーンは必見です。
三浦主水正の前向きなだけではなく、弱音を吐いたり、苦しくて叫んだりする、人間臭さにも注目して読んでみるのも良いでしょう。特に上下巻合わせると1000ページを超えますが、歴史小説といえども、堅苦しさも難しさもあまり感じられません。三浦主水正の人間らしさに触れながら、歴史ものの入口におすすめです。
以上、山本周五郎のおすすめ作品でした。賞を嫌い、権力を憎んだ小説家、山本周五郎。苦悩の中で闘う彼の作品たちは、どんな時代にあっても、読者の心を勇気づけ、奮い立たせてくれることでしょう。