翻訳で大切なのは読みやすいことだけでなく、作者の意図や世界観を忠実に表現することにあります。岸本佐知子はその両方の面で読者を満たしてくれ、原書に対する愛の深い翻訳家です。

岸本佐知子が翻訳する本作は、子供の目線でみた世界が暗くも切なく表現されています。打ち捨てられた遊園地で遊ぶシーンでは、夢のように見える世界がいつか消えてしまうのではないかという不安が美しい文章によって書かれています。岸本佐知子の翻訳はわかりやすく、小説に書かれている情緒が自分の中にすっと入ってくる感覚はとても心地よいです。
- 著者
- スティーヴン・ミルハウザー
- 出版日
- 2016-06-04
「ブタを割る」で少年はブタの貯金箱を与えられ、コツコツと貯金をします。やがて目標金額に達成した少年にブタの貯金箱を割らなければならない時がくるのでした。物に対する愛着がどこか物悲しく書かれた作品です。
- 著者
- 出版日
- 2015-10-24
岸本佐知子が翻訳する本書はカラー写真などの素材が豊富なので、情報が入ってきやすく、また対話形式になっているので、ミランダと出会う人々のやりとりが鮮明にイメージできます。その中でフリーペーパーに売りに出されている革ジャンやドライヤーなどから繋がった人物たちは全員が個性的です。そんな人たちとの交流と物に対する愛着が面白く描かれています。
- 著者
- ミランダ ジュライ
- 出版日
- 2015-08-27
他にもラブストーリーがあったり、時間軸の技巧がテーマになっている作品が載っているなど、違った方向で「面白い」と感じる作品が盛りだくさんです。豊富な種類を選別した岸本佐知子の編集者としての腕も知ることのできる作品になっています。
- 著者
- 出版日
- 2016-02-25
他にも若い男をまる呑みにしてしまった女性の体内にその男が住み着いてしまう「まる呑み」や、皮膚が宇宙服に変化し最後は宇宙へと飛んでしまう奇病を患った妻を看病する男を描いた「僕らが天王星に着くころ」など、SFのようなトンデモ設定も多数掲載されていて面白いです。
- 著者
- 出版日
- 2014-10-15
岸本佐知子は海外文学の中でも特に不思議で奇妙な物語を日本語で紹介してくれます。そこにある難解で複雑な文章もわかりやすい日本語で伝えてくれるので、海外文学への入り口として彼女が訳した作品を選ぶのも良いスタートです。