普段あまりホラー小説を読まないという方にも読んでみたいと思えるものがきっとみつかる。日本の名作ホラー作品をランキング形式で紹介します。

この小説の一番の魅力はなんと言っても蟹のかわいらしくて憎めないキャラクターです。テレビを見て言葉を覚えたということで、コミカルな口調で話します。落ち込む主人公に水を持ってきてあげたり、布団をかけてあげたりする優しい一面も。
- 著者
- 倉狩 聡
- 出版日
- 2015-09-25
恒川光太郎による『夜市』は日本ホラー小説大賞受賞作で、直木賞にもノミネートされています。美しい文体でノスタルジックな雰囲気をもったホラー小説です。
女子大生のいずみは偶然出会った同級生の裕司に誘われて暗闇で妖怪たちが開く「夜市」に入り込みます。その夜市では欲しいものは何でも手に入り、人さらいの店で子供が売られていたりと常識では考えられない値段で様々なものが売られています。
- 著者
- 恒川 光太郎
- 出版日
- 2008-05-24
この世のものではない夜市で裕司は過去に望みの代償に大きな過ちを犯してしまっていたのです。その代償を取り戻すために裕司はいずみを連れて大金という代価をもって再び夜市を訪れたのです。
この作品の中では、幼い裕司が無垢なために犯してしまった罪とその罪悪感に悩まされ続ける姿が描かれています。なんでも手に入る怪しい夜市は大きな代価を支払う必要があります。その代償とは……。
常識では考えられないような代価を払ってでも「自分が望んでいるものが欲しい」と思ってしまう人間の欲の恐ろしさや、代価の行く末など想像すれはするほどぞくっとした怖さを感じることができます。
そんなホラーさを携えながらもどこかノスタルジックで不思議な雰囲気の夜市。その理由は恒川光太郎の文章力にあります。難解な言葉を使っている訳ではないのに繊細で美しく、無駄がありません。ホラーではありますが、文章を楽しむ作品としても楽しめる仕上がりになっています。
秋祭りの後大晦日まで、日没を合図に毎晩開かれる細蟹の市。本書はそこに迷い込んだ記憶喪失の少年カンナと、それを助ける市の守り人、赤腹衆のサザを中心に話が進みます。映画を観ているような不思議な世界観に、知らず知らず引き込まれてしまうでしょう。
- 著者
- 柴村 仁
- 出版日
- 2013-10-16
本作『夜宵』では恐ろしくも魅力的な、奥の深いファンタジーの世界が描かれています。その不思議さ漂うリアルな文体と、表紙の挿絵によって、読者は本当に夢と現実を行き来しているかのような錯覚に陥るはず。
物語は、細蟹の市に迷い込んだ少年カンナの危機を赤腹衆のサザが救う場面から始まります。ほしいものは何でもそろうという、橋を渡った先にある細蟹の市。全ての者は仮面をつけており、つけていないのはマドウジ(人間)のみ。サザは市の事情を知らず迷い込んできたマドウジたちを助ける役目を担っているのです。
短篇8篇からなる物語は、少年カンナが成長し青年になるまでの時間軸で語られていきます。話が前後したり入れ替わったりしますが、最後にはパズルのピースがはまるようにすっきりと全体像が見えてくるでしょう。
話の流れはサザとカンナの出会いと別れになっていますが、本書の主役はあくまでも「細蟹の市」そのもの。2人だけでなく、登場する全てのキャラクターが細部までよく描かれており、それがまた不気味な余韻を読者に残します。
柴村仁ファンも、はじめて著者の本を手に取る人も、例外なく引き込まれてしまう、ファンタジー・ホラーの傑作です。
乙一のデビュー作であり、なんと彼がまだ高校生の時に執筆した『夏と花火と私の死体』はホラー小説でありながら、なんともほっこりした雰囲気をまとっているのが特徴です。
主人公の「わたし」こと五月ちゃんは、友人である弥生ちゃんに「健くんを好き」という理由で殺されてしまいます。健は弥生ちゃんの兄であり弥生ちゃんの好きな人でした。主人公が殺されるというビックリな展開で始まり、なんと、死体となった「わたし」の目線で話は進んでいきます。「わたし」を隠すために試行錯誤する兄妹や、近隣で起こる誘拐事件など、ラストには恐ろしい事実を「わたし」が目の当たりにします。
- 著者
- 乙一
- 出版日
『夏と花火と私の死体』でもっとも特徴的であるのは、主人公である「わたし」が冒頭に殺され、話が基本的に死体目線で進んでいくところでしょう。視点が斬新で、本を読むのが好きな方にとっては新鮮でワクワクします。
目線が「わたし」という小さい少女なのでホラー要素は少ないです。その語り口調が少女らしく無垢で可愛らしくて、まるで死人ではないような錯覚を覚えるほどです。幽霊が出てきたり、妖怪ができて驚かす、というような怖い要素はありません。その代わり、「隠した死体が大人たちに見つかるのではないか」というハラハラ感があります。
サスペンス要素の強いホラーとなっているので、意味がわかってぞくっと恐ろしくなるのが醍醐味。本を読みなれてきた中学生くらいになると、大人目線でこの小説を楽しめるでしょう。
先に申し上げますと、この本は非常にグロテスクな描写が多々あるホラー小説です。そのため、苦手な方にはおすすめいたしません。また食前食後、夜中に一人といった状況での読書は、避けていただいたほうがよいでしょう。気持ちが悪くなって、途中で断念する方も多いようです。
- 著者
- 綾辻 行人
- 出版日
- 2011-08-25
90年代のある夏に集まったの仲間たちが、次々と惨殺されていきます。双葉山の伝説の殺人鬼が覚醒したのです。地獄のように繰り広げられる血みどろの惨劇っぷりは、想像をはるかに上回っています。グロテスクホラーが好きな方には、それだけでも楽しめる作品と言えるでしょう。
しかし、そんな中でもしっかりミステリーは存在しています。はしがきにもありますが、全体を通して大きな罠が仕掛けられているのです。最初から気を抜かずに読んでください。あなたはその違和感に気づくでしょうか?
きっと多くの方(それも、最後までグロテスクな描写に耐えきれた方)が、最後の蛇足部分を読んで衝撃を受け、最初から読み直してしまうのではないでしょうか。
くれぐれも読書のタイミングにはご注意ください。
インテリアコーディネーターとして活躍する29歳の今村千鶴は、キャリアや美貌に恵まれながらも、プライドの高さから恋人の吉川智樹と別れたばかりでした。智樹への気持ちを吹っ切るために、思い出の詰まったチェスト譲ったことがきっかけで、同い年の美容師重松亮子と知り合います。
育ち、キャリア、収入、容姿、性格がまったく異なる亮子と付き合うことで、自らのプライドを満たす千鶴。一方亮子も、千鶴と付き合うことで、自らの手では手に入れられないものを手に入れようとするのです。
そんな女同士の「友情」の末路に起きる惨劇とは……。
- 著者
- 新津 きよみ
- 出版日
自分より「劣っている」涼子を友人とすることで自らの虚栄心を満たしていたため、亮子がダイエットに成功したり恋人が出来たりすると、千鶴は焦燥感や怒りを覚えます。一方亮子は、卑屈なまでに千鶴にすり寄り、「おこぼれ」を手に入れることに汲々とするのです。
亮子にとっては、気に入った人形も、バカラのグラスも、友人の元彼も同じく「誰かが捨てたもの」で、自分はそれを「拾っただけ」といいます。自分が何かを得るためになら、容易に嘘も吐けるのです。無自覚なので、罪悪感など抱きません。
「友達」という言葉の水面下でせめぎあうドロドロとした感情が、目をそむけたくなるほどリアルに描かれています。女性を描くのに長けた、作者の真骨頂と言えるでしょう。
小野不由美によるホラー小説で、『悪霊がいっぱい?』などで知られる「悪霊」シリーズをリライトしています。
『ゴーストハント1 旧校舎怪談』では、主人公の女子高生・麻衣が渋谷サイキックリサーチに勤めることになり、必ず事故が起こってしまうため、取り壊すことができない旧校舎を舞台に、怪奇現象を調査していくという内容です。
- 著者
- 小野 不由美
- 出版日
- 2010-11-19
怪奇現象による事件や、怪奇現象の実態を調査し解決していくというミステリー要素が強めな作風です。怪奇現象を科学的に調査をしていくことにより、ホラー要素でゾクゾクしながら、一緒に謎解きを考えていける楽しさを持ち合わせた一石二鳥の作品として楽しめます。
そして、このシリーズの一番の特徴はなんといっても読みやすいことでしょう。もともとティーン向けとして書かれていることもあり、ホラー・ミステリー要素だけでなく、色濃いキャラクターたちが織り成すコメディー要素や恋愛要素などが盛り込まれていることもあり、サクサクと読み進めていけます。
シリーズは全部で7巻。漫画化もされており、長く楽しめるシリーズものとなっていますので、ぜひ中学生の長期休暇のお供にいかがでしょうか。もちろん、大人も、青春に戻ったような気持ちになれる作品です。
『魔界転生』『甲賀忍法帖』等で絶大な人気を誇る山田風太郎の恐怖小説集。他シリーズを読み慣れた人であれば、少し珍しく感じてしまうかも知れません。
- 著者
- 山田 風太郎
- 出版日
加門七海が描く、ホラー幻想譚。心地良く美しい文章が特徴的で、恐怖というより「不思議」に重点を置いたストーリーが展開されます。怪異蒐集家の顔を持ち実体験に基づいた作品も多い作者ですが、こうした創作ホラーでもしっかりと魅せてくれるのが嬉しいところ。
- 著者
- 加門 七海
- 出版日
- 2007-04-12
全て東北地方が舞台の短編7編で構成された本作。2001年に映画化もされています。東北地方といえば古い言い伝えや民族伝承の多い地域なので、ホラーの舞台にするのにこれほどぴったりな場所はないのかも知れません。
- 著者
- 高橋 克彦
- 出版日
探し出した彼女は既婚者でした。それでも、千尋を愛し守りたいという主人公の想いは消えず、次第にストーカーのような行動をとるようになります。ストーカーとなった主人公が目の当たりにした憧れの彼女の人生や歪んでいるけれど真っすぐな主人公の想いなど独特の方向から読むことができます。
- 著者
- 大石 圭
- 出版日
- 2001-03-09
このマンションに住み始めてからペットの死や不可解な現象など不幸や怪奇現象が主人公一家や主人公にかかわる人達、マンションの住人などを襲っていきます。恐ろしい怪奇現象が次々と起こり、偶然とは言えない不幸な出来事が重なったりと主人公一家を恐怖に陥れたり、苦しめていきます。
- 著者
- 小池 真理子
- 出版日
古都・京都の花街を舞台にした3編の怪奇譚が揃う本作。それぞれの物語において、舞妓・芸妓・扇子職人の3つの視点から語り調子で展開していくのが特徴。華やかな京の都を舞台としながら、容赦なくグロテスクなストーリーと薄気味悪さが怖いながらも読者を魅了します。
- 著者
- 森山 東
- 出版日
土着的な怪異譚で定評のある三津田信三作品。作者と同名のキャラクターが登場するなど、現実とフィクションの入り混じったストーリー展開も魅力のひとつです。また、美しくも不気味な表紙イラストも毎回読者を楽しませてくれます。
- 著者
- 三津田 信三
- 出版日
- 2015-09-15
阿刀田高はエッセイストとしても人気の高い作家ですが、表題作の「ナポレオン狂」は初期に発表されたものです。日本推理作家協会賞受賞作である「来訪者」を含めた13編が収録されています。
- 著者
- 阿刀田 高
- 出版日
- 1982-07-15
個人が株式上場し、その価値で優劣を決定される世界が展開する「暴落」。突如拘束された主人公と、彼を救う「はず」の人々とのやりとりの行方が絶望を生む「受難」。二つの視点で進行するストーリーがラストで交錯した時、衝撃の真相が現れる「鼻」と、3編を通して不条理な恐怖に背筋が寒くなる厭なテイストで統一。どの話も恐怖の系統は異なりますが、退廃的な世界観は貫かれており、読後は何ともブラックな気持ちに……。
- 著者
- 曽根 圭介
- 出版日
ぼっけえ、きょうてえと聞くと「何語?」と思う方も多いでしょう。これは、作者である岩井志麻子が出身の岡山地方の方言で「とっても、こわい」という意味です。そんな表題作「ぼっけえ、きょうてえ」のあらすじは、岡山の遊郭で醜い顔をした女郎が客に恐ろしい身の上話や切なくも悲しい話などを聞かせるというものです。
- 著者
- 岩井 志麻子
- 出版日
- 2002-07-10
「こうして、長年夢想しつづけてきたあらゆる演出を施しながら、ぼくは姉に仕え、姉を賛美し、姉に奉仕し続けた。生活のために家を空けている間、鮨を握っている間も頭のなかには姉のことしかなかった。」(『姉飼』 より引用)
- 著者
- 遠藤 徹
- 出版日
表題作の「霧が晴れた時」は、一家4人がハイキングで山に登った時の話。休憩所に立ち寄ると、鍋の火が着いたままなのに店の中に人がいない。少し前に山道を追い越していった登山客の荷物も残されている。母と妹は店の中で待ち、父と兄は外で待つことに。霧の立ち込める中、母と妹の姿も見えなくなって……。
- 著者
- 小松 左京
- 出版日
作者の平山夢明は、執筆活動を開始する以前に『週刊プレイボーイ』で「デルモンテ平山」という名義でホラー映画のビデオ評論を手掛けていたこともあり、作品の怖さは折り紙付き。残虐な描写が頭の中に映像化されて再生されます。初めは作者の独特の文体と雰囲気になじめなくて戸惑う読者もいるかもしれませんが、中盤からの魅力ある展開に、ページをめくる手が止まらなくなります。
- 著者
- 平山 夢明
- 出版日
緻密なストーリー構成で飽きさせず、伏線も散りばめられているのでじっくりと読みたい作品です。ただし、食事中に読むのはおすすめできません。最後には背筋を凍らす一行が?!ラスト以降この男女の関係はどうなってしまうのだろうかと考えてしまう余韻を残す作品です。田中麗奈主演で映画化もされています。同時収録されている「酔歩する男」は、眠る度に過去や未来へタイムスリップしてしまうという不思議な男に出会う話で、こちらも人気があります。
- 著者
- 小林 泰三
- 出版日
作者の恒川光太郎は『夜市』で第12回(2005年)日本ホラー小説大賞を受賞し、デビュー。簡素で読みやすい文章が特徴です。この『秋の牢獄』は、女子大生の一人称で話が展開していくため、ちょっとお洒落なブログを読んでいるかのようにすらすらと読むことができます。主人公の心情の移り変わりも自然に描かれており、いつしか読者も異次元の世界に入り込んだような気分に。そんな感覚が癖になります。この本を11月7日に読んだら、あなたもその日から抜けられなくなってしまうかも?!
- 著者
- 恒川 光太郎
- 出版日
- 2010-09-25
物語前半は、謎の自殺の原因を探るというミステリー要素が強く、ミステリー好きな人も楽しむことができます。ところが中盤からは恐怖の連続です。怖いというより気持ち悪いという感じの描写が多いのですが、先が気になってページをめくる手は止まらなくなります。一気読みしたくなる面白さです。伏線もしっかり張ってあり、話の構成もお見事。一見タイトルに合ってない内容のようにも思われますが、ラストでこのタイトルにした理由が分かります。
- 著者
- 貴志 祐介
- 出版日
- 2000-12-08
主人公の「私」の名前は作中では明らかにされていませんが、明らかに作者自身がモデルだと分かります。作中には実在のホラー作家も登場し、ノンフィクションを思わせるドキュメンタリー形式。そのためどこまでが事実で、どこからが虚構であるかの見分けがつかず、恐怖を増大させます。派手な怖さはないのですが、「畳を擦る音が聞こえる」「聞こえるはずのない赤ん坊の泣き声が聞こえる」など実際に自分の身近でも起こりそうなエピソードに、後からじわじわと恐怖がきます。余韻を残すラストもそんな恐怖を引き立てています。
- 著者
- 小野 不由美
- 出版日
- 2015-07-29
猟奇殺人を扱っているため、目を覆いたくなるような残酷な描写も多いです。最後の一文で「えっ、どういうこと?!」となり、もう一度最初から読み直すことになるのですが、ラストの意味が理解できると爽快感を感じられると思います。フェアに敷かれている伏線にも感心させられます。一度目と二度目に読んだ時で別の楽しみ方ができるのもいいですね。読んだ後誰かと内容を語り合いたくなる、そんな作品です。あなたも気持ちよく騙されてみませんか?
- 著者
- 我孫子 武丸
- 出版日
- 1996-11-14
日本ホラー小説大賞長編賞を受賞した『粘膜人間』。その後『粘膜蜥蜴』、『粘膜兄弟』などが発表され、シリーズ化されています。応募時のタイトルは『粘膜人間の見る夢』だったことからも窺えるように、まるで夢の中の出来事のようにハチャメチャな展開です。インパクトのある登場人物も続々と登場します。暴力的でグロテスクな描写が多く、嫌悪感すら感じますが、独特の世界観に引き付けられてしまいます。こちらの作品も食事中には読まないよう注意してください。ホラーとファンタジーが共存した不思議なお話になっています。
- 著者
- 飴村 行
- 出版日
黒い家は、若槻という保険会社に勤める男が主人公です。物語は、若槻がある保険加入者の家でその家の子供の首つり死体の第一発見者になってしまうというショッキングな出来事から始まります。
- 著者
- 貴志 祐介
- 出版日
その子供の義理の父である男から保険金の支払いを執拗に迫られますが、殺人の疑いがあると見た若槻は支払いを保留します。そこから、若槻は恋人の猫の首が届くなど異常な嫌がらせを受けます。そして、物語が進むにつれて若槻がかかわった人間やこの事件にかかわった人間が殺され、真相にたどり着いた若槻にも命の危険が迫ります。
この作品では、怪奇現象などは起きません。冒頭の保険金殺人の疑いから明らかになる一人のサイコパスと主人公の戦いが描かれている内容です。お金のために人を傷つけることに躊躇しない人間の怖さは幽霊や妖怪よりも現実味があって恐ろしいことがよくわかります。
保険金殺人やサイコパスによる殺人は実際にニュースなどでよく目にする題材ですね。疾走感のある物語、そしてラストの締めくくり方は「実際に自分にも起こりうるかもしれない」とひやりとするものになっています。
いかがでしたでしょうか?一口にホラーといっても、いろいろな種類の怖さがありますね。ぜひあなたの今の気分に合ったホラー小説を読んでみてください。