村山早紀は「シェーラひめのぼうけん」シリーズや「アカネヒメ物語」シリーズなどの作品で知られる児童文学作家です。長編小説も発表しており、優しく胸が温かくなるようなストーリーが持ち味です。

- 著者
- 村山 早紀
- 出版日
- 2016-09-21
友達と気まずいままお別れになってしまった男の子のお話「コンビニたそがれ堂」、仕事に疲れてしまった女性アナウンサーの不思議な体験を描く「桜の声」、人間になりたいと願う子猫を描いた「あんず」など、5編が収録されています。
- 著者
- 村山 早紀
- 出版日
- 2010-01-18
- 著者
- 村山 早紀
- 出版日
- 2014-07-04
- 著者
- 村山 早紀
- 出版日
- 2016-03-04
- 著者
- 村山早紀
- 出版日
- 2012-12-07
街の人々に愛されているが時代の波に抗えず閉店が噂される星野百貨店で、願いことを叶えると噂の白い猫と百貨店を愛する従業員たちが織り成す魔法のような短編集です。特に印象に残った2編を紹介します。
「夏の木馬」では星野百貨店6階の時計と装飾品、高級な贈答品を扱うフロアのフロアマネージャー兼百貨店の役員、佐藤健吾が主人公です。
佐藤は知識が豊富で接客も完璧、社内外での信頼も厚く、理想のデパートマンとして雑誌でも紹介される存在。星野百貨店に温かい愛着を持っているのと同時に行く末を案じていました。
彼は星野百貨店のある風早の街で生まれ、母と2人で小学2年生まで過ごします。裕福ではありませんでしたが、彼の母は星野百貨店が大好きでよく2人で訪れ、佐藤はいつも屋上の遊園地で母に見守られながら回転木馬に乗ったのでした。しかしある冬の日曜日、母は彼を回転木馬に乗せたまま姿を消します。
その後、佐藤は東北の祖父母に引き取られ、就職を機に星野百貨店に戻ってきたのです。そんな佐藤に屋上で魔法の白い猫が現れて、ある奇跡が起こります。
奇跡のあとに佐藤がある決意をするのですが、その決意がとてもかっこいいです。思い出の尊さと大切さを感じる作品です。
- 著者
- 村山 早紀
- 出版日
- 2017-10-05
「精霊の鏡」の早乙女一花は別館2階の「風早郷土資料館」に勤めています。美しいものが好きなのですが、自分の容姿には自信を持てず、星野百貨店1階の華やかなコスメとファッション・雑貨のフロアに憧れつついつも遠くから眺めているだけでした。
ある日、無造作に置かれたタウン誌の「魔法の子猫に会えたとしたら、あなたは何を願いますか?」という記事が目にとまり、願いのなかった一花は「心からの願いがある人の願いが叶いますように」と思います。
それから数日後、ある青年が資料館を訪れてきます。一花は初対面のはずなのにその青年を知っているような気がするのです。
この話の中で一花が憧れのコスメフロアのカウンターでメイクをしてもらい、見違えるほど美しくなるシーンがあります。そこでフロアマネージャーの豊見城が一花にかけた言葉が素敵なのです。
「ひとは誰だって、鏡の中に、綺麗な自分を見つけられる」「お化粧って隠れている美しさを見つけて磨いてあげる、それだけのことなんです」
容姿に限らず、自分の良さというのはなかなか自分で認めることができないものですが、しっかり自分を見つめて美しさや価値を見出し、自ら磨いていくことの大切さを気付かせてくれる話です。
星野百貨店の創業者、星野誠一と役員たちは百貨店の顧客だけでなく従業員のことも大切にしているので、各短編の主人公である従業員たちも星野百貨店への愛着や愛おしい思い出を持っています。そのため星野百貨店で働く人々のお客さまへの姿勢がそれぞれとても温かく、信念があって素敵です。
ただ商品を販売する接客ではなく、彼らが携わる品物やサービスがその人の大切な記憶になり、そしてやがて次の世代に受け継がれていくような、そんな優しさや思いやりに溢れた接し方なのです。
物語の中では魔法の白い猫が現れて、ちょっとしたファンタジー要素を感じる様々な奇跡が起こります。しかし面白いことに、物語の中で起こるような不思議な奇跡は、もしかしたら私たちの身の回りでも起こっているかもしれないと思えるのです。
また、全編を通して星野百貨店の危機的な状況と経営に関して謎が散りばめられているのですが、最後は伏線が見事に回収されて爽やかな気持ちになります。少し不思議でそれぞれの話が宝石のようにきらきらと輝く心温まる短編集です。
どれもサクッと気軽に読める作品ですので、あまり気負わず、軽い気持ちで読んでみてください。村山早紀はこの他にもたくさんの作品を発表していますので、ぜひ、そちらも読んでみてくださいね。