マルキ・ド・サドの小説を翻訳したことでも有名な澁澤龍彦。艶めかしく魅惑的で、少々の不気味さを伴った作品たちは、彼の生きていた時代に明らかな異彩を放っていたことでしょう。澁澤の魅力を堪能できるおすすめの6冊を紹介します。

また、彼が矢川澄子のあとに再婚した妻・龍子も同じく作家で、彼女は彼との日々などを作品に残しています。
マルキ・ド・サドの研究者としても知られる澁澤は、1959年にサドの著書『悪徳の栄え・続』を翻訳、出版しました。これにより猥褻文書販売および同所持の容疑で裁判にかけられます。澁澤はこの件について真剣に争うつもりはなく、ときには裁判所に遅刻してくることさえあったようです。
しかし、澁澤は決して不真面目な人間ではありませんでした。ただ一心に、文学や芸術を愛していたのです。そのことは、彼が膨大な数の書物を読み、非常に研究熱心であったことからも明らかです。並外れた感性により作り上げられた妖美な作品。ひとたびページを捲れば、その世界に魅了されることでしょう。
まず初めに、題名にうっかり騙されてしまいます。歴史小説かと思い本の中へ入り込んでみると、そこは幻想的なファンタジーの世界。そして、この小説は何とも奇妙でありながら、夢中になるほど面白いのです。
- 著者
- 澁澤 龍彦
- 出版日
『快楽主義の哲学』は、あらゆる快楽を題材に書き上げられたエッセイ集です。快楽主義とは何であるのか、快楽主義者であるためにはどうすればいいのか。普段の書評やエッセイとは少し違った雰囲気で、難解な言葉などは用いず冗談交じりに語られています。また5章「快楽主義の巨人たち」で紹介されている奇人ともいえる偉人たちのエピソードも、非常に魅力的です。
- 著者
- 澁澤 龍彦
- 出版日
澁澤龍彦のお気に入りのものだけを閉じ込めた、根強い人気のあるエッセイ集『胡桃の中の世界』。日常の労働や喧騒とかけ離れた、まるで嗜好品のような作品です。所々で用いられる幻想的な挿絵も魅力となっています。
- 著者
- 澁澤 龍彦
- 出版日
- 2007-01-06
澁澤龍彦最後のエッセイ集となった作品『都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト』。闘病記などを連想させるタイトルですが、内容は全く異なり、冒頭から澁澤らしい文章が飛び出しています。
- 著者
- 澁澤 龍彦
- 出版日
- 2016-12-06
6つの物語が収められた短編集。美しく幻想的な描写でありながら、どこか恐ろしさを感じさせるような雰囲気がどの作品にも流れています。また、著者がときどき顔を出して語りを入れる遊び心が面白く、物語への読者の関心を盛り上げてくれているようです。
- 著者
- 澁澤 龍彦
- 出版日
- 著者
- 澁澤 龍彦
- 出版日
『フローラ逍遥』は手書きの挿絵も含め、とても美しい本です。手元においておき、ふと花について思い立った時、その花のページを開いて再読したくなる、そんな本でもあります。
1章につき1種類ずつ、合計25種類の花について各見開き2ページ程度のエッセイが記されています。そして丁寧な手書きの挿絵が差し込まれているのです。エッセイのトーンはとてもあかぬけており、さっぱりとした文体でまとめられています。各章とも花の名の語源、原産地、海外(主にヨーロッパ)へ旅行したときの思い出、日本国内での思い出について散りばめられた構成です。どの章にも詳述している部分があるのですが、クールでとても納得感があります。
さらに面白いのが、「そこでなぜその結論を記載したのか?」という展開が混じりこんでおり、読んでいて、つい「おいおい」と突っ込みを入れたくなるのです。
「なぜ流行歌には林檎が好まれるのか。そんなこと、私に分かるはずがない。」
それを言ったらおしまいでは?と思いつつニンマリと笑みを浮かべてしまいます。美しくさっぱりとした文体に、突っ込みどころ満載というギャップが親しみを与えているのです。
フランス文学者でもあった澁澤は、花の欧米名に対する造詣も深く、その語源をしっかりと振り返っています。そして同じく和名についても考察を述べています。旧字体で表された花名の説明は古風ではあるのですが、いまでも新鮮なみずみずしい雰囲気を湛えています。梅の章では、物があざやかに白く光りかがやくさまとして「的皪(てきれき)」という言葉を紹介しています。今では滅多にお目にかからないこの言葉も、本書では花のイメージとともにすっと理解できるのです。
ぜひ一度お手元にとって本書『フローラ逍遥』を眺めてみてください。美しい本の内容にひたりながら、花の理解を深めることができます。
以上、澁澤龍彦のおすすめ6冊でした。自由奔放で、奇抜で、たまらなく魅力的な作品。それらを作り上げたのは、彼の飛び抜けた好奇心の強さだったのではないでしょうか。彼の作品は世間にまかり通った常識や偏見を打ち破り、読者の心を刺激し続けていくでしょう。