少々難解なイメージのある幸田露伴の小説。しかし一度読み進めてみると、練りこまれた物語の面白さや登場人物の魅力にのめり込んでしまいます。熱心なファンが多いことも納得でしょう。代表作『五重塔』をはじめとする、おすすめ作品を紹介します。

幸田露伴の名を確固たるものとした代表作。五重塔を建てることに恐ろしいほどの執着を見せた男が、周囲とぶつかり合いながらも塔を完成させていく物語です。また、後半部に嵐が吹き荒れる場面があるのですが、その描写が非常に素晴らしいことでも知られています。
- 著者
- 幸田 露伴
- 出版日
- 1994-12-16
『風流仏』は、彫刻家の悲恋を描いた、露伴の出世作です。
- 著者
- 幸田 露伴
- 出版日
『観画談』。苦学生である、通称「大器晩成先生」が主人公の物語。明らかに異色な存在でありながらも、その勤勉で立派な性格から、同級生たちに一目置かれている存在です。ところがある日、医者にも判断がつかない不明の病に襲われてしまいます。しばらく東京を離れることとなった大器晩成先生が各地を転々とし、たどり着いたお寺。しかし川の決壊の恐れから、高台にある草庵へ避難させられることになります。大器晩成先生はそこで、なぜか飾られている絵に引き付けられていくのでした。
- 著者
- 幸田 露伴
- 出版日
- 1990-11-16
漢文書き下し調で書かれたこの『運命』は、発表当時の時代の人たちにさえ、難解であったといわれています。中国の古典をもとにして作られたフィクションで、露伴はこれ以降も中国を題材とした作品を書き残しました。圧巻の情報量と内容の濃密さ、さらには文章も美しく、まさに名作といえるでしょう。
- 著者
- 幸田 露伴
- 出版日
『一口剣』。あと少しで立派な刀鍛冶になれると言われていたにも関わらず、現在の妻お蘭と駆け落ちし、今ではパッとしない生活を送っている主人公の正蔵。お蘭とのかつての熱い恋も冷め、毎日喧嘩が絶えません。ある日、お蘭の機嫌を取るために、自分は世界一の刀鍛冶であると豪語した正蔵。それを聞きつけたお殿様に呼び出され、優れた刀を作るように命じられてしまいます。渡されたお金を返して、真実を話そうかと悩む正蔵。彼を優しく慰めるお蘭ですが、なんと彼女はそのお金を盗んで逃げてしまうのでした。その後もなかなか心を決められない正蔵で下が、いざ刀を作り始めると、人が変わったように刀作りに没頭。果たして彼は、納得のいく刀を完成できたのでしょうか……。
- 著者
- 幸田 露伴
- 出版日
- 著者
- 幸田 露伴
- 出版日
- 1951-04-10
物語は明治時代の東京の竹芝で、羽勝、山瀬、日方、島木という4人の男が宴会をしているところから始まります。
宇都宮出身の4人には同郷から志を掲げて上京してきた仲間が他に3人おり、いつもはその7人で集まるのですが、その日2人はやむを得ない事情で欠席していました。あと1人は水野という学校の教師ですが、水野の欠席の理由が女のためだということを聞いた日方は怒りだし、水野を諫めに行こうと言い出します。そこで島木は自分の知っている水野と女との事情を皆に語りだすのでした。
水野は同じ学校の五十子という女教師に恋心を抱きますが、五十子は重病に罹ってしまいます。
五十子に宿を貸している老婆は、このまま部屋で死なれでもしたら迷惑だと言って冷酷非情にも重病の五十子を追い出そうとするのです。五十子の義母も薄情で、水野が連絡しても何の音沙汰もありません。水野は五十子を救える者は自分しかいないと思い、五十子の医者代と下宿代のため島木に借金を乞い……。
最初は水野と五十子との恋の行方を描いた物語か、同郷の友人同士の友情物語かと思うのですが、物語は予想外の方向へと進んで行きます。
本作は1903年に発表されたもので、文体はやや古典に近いものです。そのため一見した限りでは読み難いと思われるかもしれません。しかし読み始めれば序盤から物語の面白さに引き込まれてしまいます。現代文に訳しても本作の面白さが損なわれることはありませんが、この文体ならではのリズムや言い回しが物語を一層盛り上げていることに気付く事でしょう。明治時代の風景と人情が鮮やかに描かれた秀作です。
以上、幸田露伴のおすすめ傑作5選でした。小説を読んで彼の作品を好きになった方は、随筆に挑戦してみるのもおすすめです。